電磁波が物質表面に入射すると、物質を構成する電荷と相互作用する。吸収・反射いずれの場合も、電磁波は電荷に力を及ぼし、結局、物質に力が働く。
前記の力は電磁論によって計算することができる。さらに、ニュートンの第2法則(力は運動量の時間変化率に等しい)から、電磁波が運動量を伴うことが示唆される。実際、エネルギー流には常に運動量が付随すると考えることは合理的である。

マクスウェルが示したように、放射圧Pは電磁波のエネルギー密度に等しくなる。電界エネルギー密度uEと磁界エネルギー密度uBは、ポインティングベクトルの導出に用いたように、
3.50-0

= u = uE + uB であるから、

3.50-0-2

放射圧Pはポインティングベクトルの大きさSで表すことができて、

3.50 …式1

となる。上式は、完全吸収面に垂直入射したときの瞬時放射圧の大きさを示す。

現実的には、電磁界やポインティングベクトルの大きさは高速に変動するため、平均放射圧<P(t)>Tを扱うのが一般的であり、

3.51

となる。同じ大きさの圧力が光源にも働く。
ビーム断面積をAとすると、吸収面に働く力は、

3.52 …式2

となる。ここで、pは運動量である。単位体積当たりの運動量をpVとすると、Δp=pV(cΔtA)であり、

3.52-2

ゆえに、電磁波の運動量体積密度pVは下式となる。

3.53

完全反射面が照射された場合、速度+cで入射した光は、反射後の速度は-cとなる。運動量変化量は完全吸収時の2倍である。したがって、

3.53-2

式1、式2から、1 sec当たりに1 m2を通過するエネルギーをEとしたとき、同一の時間・面積当たりE/cの運動量が通過することが分かる。

光子として見ると、各量子はエネルギーE=hνをもつ。したがって、光子は

3.54

なる運動量を持つことが期待される。運動量ベクトルは

3.54-2

ここで、kは伝搬ベクトルであり、ħ ≡h/(2π)である。以上の議論は特殊相対論とよく整合する。そこでは、エネルギーE、質量m、運動量pの間には次式が成立する

3.54-3

光子の場合は m=0だからE=cpとなる。

これらの量子力学的考え方は、コンプトン効果を利用して実験的に確かめられてきた。実験は、X線との相互作用で電子に移動したエネルギーと運動量を検出するものである。

光の放射圧は小さいが、レーザーの出現で実際的な意味が現れた。回折限界まで絞り込むことで大きな照度を得ることが可能となった。応用としては、同位体の分離や粒子加速・原子冷却/補足・微小物体の光操作・等がある。

参考文献

E. Hecht 著、尾崎義治・朝倉利光 訳「ヘクト 光学 I 」第9版 丸善(2013)