電荷が周辺空間に電界を作り、他の電荷はその電界との相互作用によって力を受ける。電荷に働く力のマッピングとして始まった電界がいまや物理的実体となった。直截で分かりやすいが、疑問もわいてくる。静電界は、それ自身で物理的実体といえるのか?そうならば、エネルギーが空間に分布することになるが、いかにしてそれが可能になるのか?実際に何かが流れるのか?どのようにして、界は電荷に力を生じるのか?影響が発生するまでに時間を要するのか?

古典的波動は、それに先だって媒体が存在し、その摂動として波動がある。電磁波動の概念は、美しい数学的側面ほどにはすっきりしていない。

量子力学は数学的理論であり、素晴らしい予測能力を備えているが、いやになるほど抽象的である。場の量子論(quantum field theory, QFT)では、電磁界を量子化することで極めて自然に光子が導き出される。

QFTには二つの考え方がある。場を中心とする考えと粒子を中心とする考えである。前者では場が基本的実在であり、粒子は場の量子に過ぎないと考える。後者では、粒子が基本的実在で、場は巨視的コヒーレント状態であると考える。

QFTでは、全ての場が量子化されている。4つの基本力(重力・電磁力・強い力・弱い力)は、仲介粒子―媒介ボゾン粒子―の交換によって生じる。電界に対応する仲介粒子は、仮想光子である。電子と電子あるいは電子と陽子は、仮想光子によって運動量・エネルギーを連続的に交換することで力を及ぼしあっている。仮想光子は相互作用に関与するだけで、直接観測することはできない(光子とは異なる)。

巨視的には、膨大な数の仮想光子が集まって連続的な電磁界となる。基本粒子は固有の角運動量―スピン―をもつ。仲介粒子のスピンは、h/(2π)の整数倍である。仮想光子のスピンは1(h/2π)である。スピン1の仲介粒子がもたらす力は重要であり、ゲージ力として知られている。遠隔力の不思議を解消するために導入された仮想光子は、同様にミステリアスではあるが、極めて高精度で現象を予言することに成功している。

 

参考文献

E. Hecht 著、尾崎義治・朝倉利光 訳「ヘクト 光学 I 」第9版 丸善(2013)