ファインマンは、「光は粒子(光子)であり、ふるまいが統計的に決定される光子の流れである」という明確な立場をとった。
ファインマンの解析手順は2、3 の一般的計算規則に基づく。(1) ある事象の生起に対応する確率振幅は、当該事象のいろんな生じ方各々に対応する(要素的)確率振幅の和である。(2) 要素的確率振幅は複素量として表現できる。(3) 当該事象の生起確率は、加算で求めた最終確率振幅の絶対値の2 乗に比例する。

前記規則の適用方法を反射を例に示す(図(a))。点光源S で鏡を照明している。点Pに検出器を置く。点Pで光子を検出する確率を決定する。散乱波モデルを伴う古典的取り扱いをファインマンの解析のアナロジーとして使用しその概略を示す。光源Sから、散乱源となる鏡面上の各原子を経由して観測点P に至る経路の数は膨大である。鏡面を等間隔で分割し各領域に一つの経路を考えることで、代表的ないくつかの経路を図示する(図(a))。

これらは、古典的には散乱波の経路となる。点P における各散乱波の振幅と位相が最終的な振幅を決める。S から鏡そしてP に至る光路長が各散乱波のP での位相を決める。また光の逆2 乗則から、光路長が長いほどP 点での散乱波振幅は小さくなる。各経路の光路長を図(b)に示す。

経路(S-I-P)で最小となり、θi=θである。経路(S-A-P)と(S-B-P)では光路長が大きく変化する。このため位相子の和の先端は大きく回転する(図(c))。I に近づくにしたがって、光路長は短くなり、また、その変化は小さくなる。したがって、位相子の振幅は大きくなり、隣接する位相子間の位相差は小さくなる(回転量も小さくなる)。I を越えてQ に向かうと逆回転となる。最終的な振幅は、最初のベクトルの尾部から最後のベクトルの先端部に向かうベクトルで示される(図(c))。

古典的には点P における電界振幅に相当する。放射照度I は電界振幅の2 乗に比例し、光子を検出する確率の指標となる。

量子力学的取り扱いを試みる。光子は、S-鏡-P の無数の経路を取りえる。取りうる経路各々に量子力学的確率振幅を想定する。確率振幅は位相子として表現され、その偏角・絶対値は光路長で決まる。全体としての量子力学的確率振幅は、可能な全ての経路に対応した位相子の合計であり、図(c)に示す最終結果の位相子に類似している。図(c)を量子力学的な考え方を表現しているとして考察する。最終的な確率振幅の大部分は、絶対値が大きく位相変化の少ない経路S-I-P 付近の位相子からの寄与で決まっている。

Figure 4.68

 図 (a) 量子電磁力学による散乱問題のファインマンの解析。
(b) 図(a)に示した経路の沿ってSからPに進む光の光路長。
(c) 各経路には確率振幅が伴う。それらを加えると全体としての振幅になる。

参考文献

E. Hecht 著、尾崎義治・朝倉利光 訳「ヘクト 光学 I 」第9版 丸善(2013)