分散とは、媒質の屈折率が周波数に依存する現象をさす。真空以外のあらゆる媒体物質は分散性である。
マクスウェル理論では実在物質を連続体として扱い、外部電界・磁界に対する応答を誘電率εと透磁率μで表す。比誘電率KEと比透磁率KMは定数である。したがって屈折率nもまた、現実と合わないが周波数に独立である。物質の原子レベルの性質を考えに入れる必要があり、その周波数依存の側面を検討しなければならない。等方性誘電媒質の振る舞いを表すには、膨大な数の原子の寄与を平均化する必要がある。
誘電体に外部電界を印加すると、内部の電荷分布に変化が生じる。その結果として発生する電気双極子モーメントが内部電界の一部を担う。もっと簡単にいえば、外部電界によって媒体内に正電荷負電荷の分離が生じる。各正負電荷対は電気双極子を形作り、付加的電界を発生する。単位体積当たりの電気双極子モーメントを電気分極Pとよぶ。多くの物質でPとEは比例関係にあり、次式が成立する。

Formula 3.62

(式1)

電荷の再分布や結果としての電気分極が生じるメカニズムを述べる。価電子の配置が構成原子間で平等でないために、極性分子とよばれる分子は永久電気双極子モーメントをもつ。直線状でない水分子は、典型的な例である。熱揺動のために、極性分子はランダムな方向を向いている。外部電界を印加すると、極性分子に整列傾向が表れ配向分極が生じる。非極性分子の場合、外部電界によって原子核に対して電子雲が偏移することで双極子モーメントが発生する(電子分極)。その他に、NaClのようなイオン性分子では、電界により両イオンが偏移することで分極がもたらされる(イオン分極・原子分極)。
配向分極の背後にある分子の回転運動は、ある周波数以上で印加電界に追従しなくなる。例えば、水の比誘電率は1010 Hzあたりまで80で一定であるが、それ以上で急激に減少する。
対照的に、電子分極のもとになる電子運動は光周波数(約5 x 1014 Hz)にも十分追従する。即ち、nの周波数依存性は、分極の発生機構に支配されるのである。原子レベルで何が生じているかを検討することで、n(ω)を導くことが可能となる。
原子の電子雲は、静電力によって平衡配置で原子核に束縛されている。原子内動作の詳細を検討することなく、摂動機械振動系からの類推によって、電子に働く復元力 F=-kEx を想定することができる。ここで、kE:弾性定数に相当する係数、x:電子変位である。瞬間的な摂動を受けた電子は、以後、共振角周波数ω=(kE/me)1/2 で振動する。meは電子の質量である。
光照射された媒質中の各原子は、電界E(t)を駆動源とする古典的強制振動子と考えることができる。正電荷静止原子核に負電荷殻がバネで束縛されている。角周波数ωの調和振動電界E(t)によって、電荷qeをもつ電子に働く力FE は、

 

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