放電ランプ等の典型的な光ではエネルギーの大部分は、固有の周波数をもつ複数 のスペクトル線に集中する。狭いけれども、スペクトル線は常にある周波数広がりをもつ。 スペクトル線の帯域幅の逆数をコヒーレンス時間あるいは可干渉時間という。コヒーレンス時間と光速との積をコヒーレンス長または可干渉長とよぶ。コヒーレンス長とは、位相が安定したきれいな正弦波として空間的に続いている長さであり、空間中の一点で綺麗な正弦波が継続する時間がコヒーレンス時間である。 準単色光源からの光強度の周波数スペクトル形状は、実験的に示されるように、 ガウス型で表すことができる。光強度は電界振幅の2乗に対応しまた、ガウス関数 の2乗もガウス関数になることから、光波動の振幅自体がベル形状になっている。 光ビームをN 個の波束の重ね合わせと考え、各波束を光子とみる。光子は、図1a に示す波束に似たものとみなせる。そのフーリエ変換はガウス型である(図1b)。
Figure 7.37

図1 ガウス型包絡線で変調された余弦波とそのフーリエ変換。
フーリエ変換もガウス型である。 

各光子のω = ω’成分の位相は互いにランダムである。当該成分を合成した結果はω = ω’の調和波であり、その振幅は光子一つの成分波振幅のN1/2 倍となる。 同様にあらゆる周波数成分において、光ビームエネルギーが各光子に等分配されて いる。即ち、光ビームの周波数スペクトルがガウス型ならば光子のそれもガウス型 である。

一つの波束についてみれば、角周波数成分間には一定の位相関係がある(その結果ベル型の振幅形状となる)。合成波のある周波数成分は、相互にランダムな位相をもつ各光子の周波数成分の重ね合わせである。
このため、合成波の各周波数成分 の相互位相はランダムであり、その振幅形状は(各波束のベル型ではなく)略正弦波形状を示す。

合成した光波は、周波数と振幅がランダムに変化する準正弦波形状となる。周波 数はνav を中心にΔνの範囲に広がっている。Δν /νav で定義する周波数安定性はスペ クトル純度の指標となる。コヒーレンス時間を10-9 sec としても光波動の周期の100 万倍近くあり、搬送波の振動と比較すれば、合成波の振幅・周波数の変化は緩慢で ある。

白色光は、0.4 x 1015 Hz ~ 0.7 x 1015 Hz の周波数範囲(0.3 x 1015 Hz の帯域幅)の可視光を含む。したがってコヒーレンス時間は3 x 10-15 sec と極めて短い(数波長の連波に対応する)。白色光は、極めて短いパルスのランダムなつながりと考えることができる。

通常の放電ランプのコヒーレンス長は、たかだか数mm 程度である。これに対して水銀やクリプトンの低圧放電ランプは、コヒーレンス長 0.3 m、コヒーレンス時 間 1 nsec、周波数安定度 1 x 10-6 であり準単色光源とみなすことができる。また、周波数安定化He-Ne レーザーでは、8 x 10-14に達する高度な周波数安定度が実現している。

参考文献

E. Hecht 著、尾崎義治・朝倉利光 訳「ヘクト 光学 I 」第9版 丸善(2013)