一定速度で運動する電荷を考える。電荷に固定され放射状に広がる電界と運動経路を円環状に囲む磁界が生じる。空間中のある点での電界は時間とともに変化するが、運動する電荷に固定された電気力線を考えることで、任意場所・任意時刻の電界を決めることができる。電界は電荷から離れることがなく、放射も存在しない。

静止電荷に付随する電気力線は、電荷を中心に一様分布する放射状直線で表すことができる。一定速度uで運動しているとき、電気力線は同様に放射状直線であるが、一様分布ではなくなる。一様分布からのずれは速度の増大とともに大きくなるが、v << cの場合は無視できる。

3.28

図 電界Eを表す電気力線の折れ曲がり

 

次に、電子が一様加速している場合を考える。静止あるいは一様運動の場合と異なり、電気力線は曲線となる。これは重要な差異である。図を参照して、より詳しく考察する。図は、ある瞬間t=t2の電荷の位置と電界の様子を示す。電荷はt=0まで点Oに静止状態にあった。その後、t=0~tの期間は一様加速し、t=t1に点O1で速度uに達したのち等速運動しt=t2に点O2へ至る。電子の加速度運動を示す”情報”を電気力線がもつと考える。情報の伝搬速度は光速cと仮定する。t2=10-8 secとすると、点Oから3 m以遠の点には電荷が動いたことを示す情報は届いていない。その領域の電気力線は、一様分布する点Oを中心とする放射状直線群となる。それは、あたかも電荷が今も点Oに存在するようである。t=i2に電荷は点O2にあり等速運動をしているために、O2近傍の電気力線は、不均一な放射直線群となる。中心が点O・半径ct2の球面外領域の電気力線と、中心が点O1・半径(t2t1)の球面内領域の電気力線は連続となる。なぜなら、ガウスの法則により、電荷の存在しない空間では電気力線が連続となる必要がある。電子が加速している期間に対応する領域では電気力線の歪と折れ曲がりが生じることが明らかである。折れ曲がり領域の電界に関して重要なことは、横方向成分ETが生じ、パルスとして外方向に伝搬することである。このパルス伝搬に従って、空間中のある点で電界の横方向成分は時間変化する。そして、それに対応する磁界が付随する。

電界の径方向成分は1/r2に比例して減少するのに対して、横方向成分は1/rに比例する。電荷から十分遠方では、放射界として知られるET成分のみが残る。低速(<< c)で加速度運動する正電荷が発生する放射電界と放射磁界は各々、r×(r×a)と(a×r)に比例する。ここで aは加速度である。負電荷の場合は、電界・磁界の向きが逆になる。放射エネルギー分布は、加速度方向はゼロであり、加速度に垂直な方向が最大となる。

 

参考文献

E. Hecht 著、尾崎義治・朝倉利光 訳「ヘクト 光学 I 」第9版 丸善(2013)