検査・計測におけるOCTの新たなターゲット

アダム・P・ワックス、マッケンジー・ピーターソン

光コヒーレンストモグラフィ(OCT)はバイオメディカル領域を超え、生産ラインにおけるメリットを提供する。

光コヒーレンストモグラフィ(OCT)は、ミクロン単位の分解能とミリメートル単位の侵入深さを持つ3Dバイオメディカル画像技術である。その最大の用途は眼科で、網膜の層状構造を明らかにするために使用されている。また、皮膚や上皮、血管系など、他の生体組織のイメージングにも用いられている。しかし、技術が進歩して機器がさらに普及するにつれ、OCTの新たなターゲットが出現している。
 OCTの開発者は当初から、この光学技術はガラス・ポリマーの複合材料の製造工程に役立つという仮説を立てていた(1)。この技術によって、品質検査のために製品が無駄になることを避けられる時代が来ると思われた。非破壊検査は初期段階であり、OCTは生産ライン用ツールの仲間入りになると期待されていた。
 しかし、眼科に比べて生産ライン分野での技術の商業化は遅々として進まず、存在しなかった。従来のOCT装置は巨大で高額だ。OCT検査は、検査対象物の光学的性質に制限されてしまう。黒っぽい塗料や不透明な接着剤は、任意の光がサンプルに戻ることを阻害する。金属は論外である。こうした制約により、多くの製造業者は、OCTを非破壊検査の第一選択としていない。しかし、より高い分解能を求める声が、革新的な可視化技術の実用化の動機となっている。

生体内レンズの検査からオフライン検査へ

OCTインライン検査の最近のアプリケーションは、眼科領域にはなじみのあるコンタクトレンズである。コンタクトレンズの膜は透明のため、OCT検査の理想的な候補だ。いくつかの研究では、コンタクトレンズの装着感や快適性をin vivo(生体内)で評価している。コンタクトレンズは酸素透過性のプラスチックでできており、人間の眼と同様に関連する特徴はミクロン単位にある。たとえば、コンタクトレンズの厚さは約400μmだ。
 コンタクトレンズの測定は、その形状から困難である。表面全体を可視化するためには、約2mmの撮影領域を持つ、深さ方向のOCTシステムが求められる。形状の検査は、コンタクトレンズの品質を評価するために現在行われているプロセスだ。しかし、2016年の研究では、英オプティメック・システムズ社(Optimec Systems)によるOptimec is830(図1)を含むOCT検査ツールによって、主要な測定精度を向上できることが示された(2)。このシステムは開発中のレンズ製造の検証を支援するために設計されたもので、製品検査を可能とするためにはさらなるスループットが必要だ。

図1

図1 OCTでコンタクトレンズを可視化するためのソフトウエアOptimec is830

コーティング膜の分析

OCTは、ミクロン単位の厚みを持つ錠剤のコーティングをリアルタイムで可視化できる。予備的研究では、コーティングを高精度で測定できることが示されているが、限界がある。不透明な錠剤コーティングは、厚みの測定を妨げる可能性がある。また、錠剤の湾曲によって、撮影のために錠剤を回転させたり、複数の方向を使用したりすることができず、完全なイメージングができない場合がある。この分野での最近の取り組みは、OCTを製造チェーンにどう統合するかに焦点が当てられている。
 2020年の報告では、回転するドラム内の錠剤を迅速に可視化するために適応させたOCTイメージングシステムが紹介されている(3)。ドラムにはミシン目のような穴が開いており、その穴から錠剤のOCT測定を可能にした。ドラムを高速回転させることで、錠剤はイメージングエリアを通過し、コーティングの特性評価をインラインで行うことができる。自動画像解析により、コーティングの厚み、均一性、粗度などのパラメータを取得できる。
 このシステムの商業版として開発されたのが、オーストリアのフィラン社(Phyllon)によるOseeTだ(図2)。錠剤のコーティングは、透明なものもあれば不透明なものもある。図3は、片面ずつで光学特性が異なる錠剤を示したものだ。
 OCTのもう1つの応用として、セラミックワイヤーコーティングがある。このコーティングは、電気モーターの巻線を形成する磁性ワイヤーに使われる。高温で動作し、欠陥がないことがしばしば求められる。OCTは、こうしたコーティングの特性を明らかにできる(図4)。
 1回のオフライン測定が実現できればバッチ品質を確認できるのだが、OCTはインラインモニタリング技術しても開発される可能性がある。ただ、プロセスのフィードバックとして使用できるほど迅速に画像を取得、分析する必要がある。OCTによる膜のモニタリングの他の例には、酸化インジウムスズ(ITO)コーティング検査や(4)、レーザベースの金属蒸着モニタリングがある(5)。

図2

図2 錠剤コーティングを高スループットに可視化できるフィラン社のOseeT

図3

図3 カプセル化剤のイメージング。錠剤コーティングの青いところは不透明で可視化できない。その一方でピンクのところは、OCTの赤外線放射に対しては透明なため、厚さや錠剤の内容物が可視化できる

図4

図4 ルメディカ社のLabscope 2.0/XR Horizontalを用いたコーティングワイヤーのイメージング。キャリパ測定による鉛直OCTイメージングを示しており、オプションの可視化カメラでワイヤーを特定する

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/05/030-032_ft_new_targets.pdf