新しい検出器が古くからの問題を解決

ヴァレリー・コフィ・ロズィッヒ

新しい検出器の進歩が、量子テレポーテーションからニュートリノやダークマター(暗黒物質)まで、科学の最もとらえどころのないミステリーを解決する。

検出器に関しては、単一光子検出器(SPD)が、フォトン研究の主力である。アバランシェフォトダイオード(APD)のようなSPDは、過去20年で進化し、依然として、フォトニクスにおける最高感度の検出器である。90%以上の効率で単一光子を検出する能力は、量子もつれを確認する実験で重要な役割を担った。それにより、2022年10月、3名の研究者がノーベル物理学賞を受賞した。アラン・アスペ氏(Alain Aspect)、ジョン・F.・クラウザー氏(John F. Clauser)とアントン・ツァイリンガー氏(Anton Zeilinger)(1)である。これら小型センサに関する受賞者の研究は、2つの粒子のもつれを確認し、量子テレポーテーションを実証して新興の量子技術新時代を可能にしている。
 市販の近赤外(NIR)や可視波長SPDは効率的であり、特に、量子鍵配送(QKD)やライダなどのアプリケーションで有用である。SPDの最先端の開発は、中赤外(Mid-IR)波長域への拡大に重点を置いている。これは、量子センシングで強みがある、また太陽系外惑星研究、ガス分子検出、蛍光イメージング、分光学といった回転振動分子励起に関するアプリケーションでも優位性がある(2)。Mid-IR検出器の課題は、NIR製品に比べて、検出効率が低く、タイミングジッタが高く、ダークカウントレート(暗計数率)が高いことに関係している。
 開発中の最も有望な最近のMid-IR検出器の1つは、超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)で、基本的にガイガーモードで動作するp-n接合である。すなわち、ブレイクダウンしきい値電圧のわずかに上であり、これは単一の電子正孔ペアにより強力なアバランシェを引き起こす。SNSPDは、古いタイプのMid-IR検出器と比較して、ダークカウントレートが低く、改善された検出効率が改善され、ジッタが低い。さらに、単一光子は、SNSPDのナノワイヤチャネルに沿って容易かつ効率的に進む、これは安全なQKDでは重要要素である。
 英グラスゴー大の研究者は、スペクトルのMid-IR域2.1μmで QKD研究にSNSPDを適用することで、SNSPDの高効率とタイミング性能を実証した(3)。光学助教のアデタンマイズ・ダダ氏(Adetunmise Dada)と同僚は、窒化チタンニオブ(NbTiN)薄膜SNSPDを使いデバイスに依存しないQKDを初めて実装し、0.254bits /ペアの安全なキーレートと量子ビット誤り率3.8%のほぼ最大の2光子エンタングルメントを達成した。2〜3μm域の検出器から最大100%の量子効率を観測し、グループは、Mid-IRでSNSPDの利用が日中の自由空間量子通信、また超高感度ライダシステムの有望なソリューションであると考えている。
 米デューク大の量子物理学研究者、オル・カッツ氏(Or Katz)によると、量子アプリケーション向けに開発された検出器は、重力波、ニュートリノ、ダークマターなど、物理学の他の基礎的な問題の解決にいずれ役立つ可能性がある。
 「精密計測あるいは量子センシング向けに開発された技術は、素粒子物理学の標準理論を超えて新しい物理学の発見、テストに適用可能であるとわれわれは考えている」とカッツ氏は、話している。
 標準理論は、宇宙を構成する4つの基本的力のうちの3つ電磁気力、強い核力、弱い核力を最もよく説明する現在の理論である。しかし、標準理論は、第4の力である重力を十分に説明していない、特に素粒子物理学におけるその位置も説明していない。これが大統一理論探求の目的である。もし宇宙に重力粒子があるなら、われわれはまだそれを見つけていない。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/05/026-028_ft_new_detectors.pdf