今こそフォトニクスの「半導体化」を
フォトニクスによって半導体業界は、光の速度で前進することができる。
フォトニクス革命が本格化している。フォトニクスは、舞台裏の技術として始まり、海底通信や光ファイバ通信のインフラの奥深くに隠れた存在だったが、21世紀に入ってからは、FTTH(Fiber To The Home)の高速データ通信、スマートフォンや携帯端末の3Dセンシング、自動運転機能用のライダ(LiDAR)において、着実に成長している。これらの技術において、フォトニクスはそのアーキテクチュアの一部であり、特に民生機器におけるその普及は、オプトエレクトロニクス業界の光学部分を推進する原動力となっている。
人工知能(AI)のニーズに対応するために、フォトニクスに基づく処理の重要性は飛躍的に高まっている。
米 ライテリジェンス 社(Lightelligence)の共同創設者であるイチェン・シェン氏(Yichen Shen)は、次のように述べている。「2015年頃に、ムーアの法則が破綻し始めた。トランジスタの微細化は続いているが、継続的な微細化によって得られる性能の向上幅は、以前ほど高くない。加えて、より小さな次世代デバイスの開発に、より長い時間を要するようになっている」。
破壊的技術が求められている。しかも今すぐに。
より高い演算能力が必要であることを表す最も顕著なトレンドが、自動運転車に対する需要の高まりである。自動車メーカーが、自動運転機能の向上を求める顧客需要の高まりに直面するようになったことで、チップメーカーは、それを実現するためにフォトニクスに目を向けるようになった。まずは、クルーズコントロールによって、アクセルから足を離しても走行できるようになり、続いて、バックアップカメラと近接度検出器によって、目を離しても走行できるようになった。より最近では、ハンドルから手を離して走行できるようになっており、自動車は、完全自動運転に向けて少しずつ歩を進めている状態にある。
この進歩には、膨大な量のフォトニクス部品が必要である。フォトニクスは、周囲環境を正確かつ迅速に監視するために必要である。フォトニクスを使用するセンサは、瞬時のデータ伝送が可能で、歩行者や他の車など、近くにある潜在的危険性を運転者に警告する機能を自動車に与える。
消費者は、より多くの自動運転技術が車に搭載されることを望んでおり、インドのフォーチュンビジネスインサイ ツ 社(Fortune Business Insights)の市場調査レポートには、世界の自動運転車市場の規模が、2021年の16億4000万ドルから、2028年には110億3000万ドルまで拡大するとの予測が示されている(1)。
同レポートでは、次の点も主要項目として挙げられている。「センサ処理技術、高精細度(HD)マッピング、適応アルゴリズムの急速な向上と、インフラから車両と車両間の通信技術の進歩に励まされて、複数の企業が生産能力を拡大し、車両の自動化を次なるレベルへと引き上げている」。
その次なるレベルに到達するために、マイクロチップメーカーは、フォトニクス集積回路(PIC)に力を入れる必要がある。PICが自動車にもたらす効果は、転送速度という点でデータセンターや、ウェアラブルデバイス、医療技術など、非常に多くの分野に対しても有効である。
PICによって、電子部品とフォトニクス部品を組み立てて集積するための、資本と労力の両方の面でコストのかかる、時代遅れの従来方法を置き換えることができる。PICを使用すれば、コストと組み立て時間を大きく削減することができる。しかし、多くのチップメーカーにとって、大半のフォトニクスデバイスの構成材料は扱った経験がなく、標準的なシリコンと比べて製造が難しい。チップ業界はシリコンにかなり投資していて、これを使い続けたいと考えている。フォトニクスに使われる材料は主に、LED、検出器、センサ、イメージングデバイスに用いられている。
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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/05/024-025_ft_now_is_the_time.pdf