クモの糸を紡いでバイオセンサにする

台湾の国立陽明交通大(National Yang Ming Chiao Tung University:NYCU)が主導する国際研究チームは、クモの糸を光ファイバとして利用して生物学的溶液の屈折率の小さな変化をリアルタイムで検出、計測するセンサとセンシング技術を開発した。溶液に含まれるのは、グルコースや他の種類の糖溶液である(図参照)。なぜクモの糸なのか。クモの糸は、光ファイバと同じように光を伝播できる生体適合材料であり、弾性特性を持ち、非常に丈夫でもある。
 この研究は、「ポイント・オブ・ケア(POC)診断機器の進歩にとって重要である。これによりモニタリング後、またある病気の診断で即時に結果が得られる」と研究チームリーダーでNYCUのバイオケミカルエンジニアリング教授であるチャン・ヤン・リウ氏(Cheng-Yang Liu)は、話している。同氏によると、その新しいセンサは、特に糖尿病患者の血糖値モニタリングに役立つ。「われわれが作製した糖センサは、用的でコンパクト、生体適合性があり、費用対効果に優れており、高感度だからである」。
 研究では、研究者は台湾産の巨大クモの一種であるオオジョロウグモ(Nephila pilipes)から、約10μm径のクモの糸を利用した。研究チームは、クモの糸を金属の薄いナノ層で被覆してその感度を強化した。次に、それを生体適合性のある光硬化樹脂で包み、100μm径の光ファイバ構造を作った。その内部でクモの糸は、コアとして、樹脂はクラッドとして機能する。ファイバ構造の片端は液状樹脂に浸し、他端を光源と分光計に接続した。新しいセンサによる光強度スペクトルは、屈折率計測と比較された。これにより研究者は、糖の種類とその濃度を検出できる。
 「将来的に、このクモの糸ベースの光ファイバ糖センサが、POC診断やテストで医療機器の1つとして使われることを期待している」とリウ氏は話している。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/05/007_wn_biosensing.pdf