レーザ表面処理事業の拡張性を維持する

アントニオ・カステロ

PICのバイオメディカルおよびレーザ担当技術マネージャーを務めるアントニオ・カステロ(Antonio Castelo)が、高品質のコンポーネント表面を得るためのクリーニング、パターニング、マーキング、切断、材料改変用のレーザシステムを開発する、独4JET社の最高経営責任者(CEO)であるイェルク・ジェッター氏(Joerg Jetter)に話を聞いた。

イェルク・ジェッター氏

4JET社CEOの イェルク・ジェッター氏

―4JET社の CEOになった経緯を聞かせてほしい。
法律と経済学を学び、自動車会社のマーケティング部門でインターンとして働き始めた。しかし、数年後に退職して、父が経営していた小さなエンジニアリング会社を手伝うようになった。この会社は、1990年初頭から先駆的にレーザ表面クリーニングを手掛けていた。私はフリーランスとして父の下で数年間働いた後に、父のチームを引き継いで、自分の事業の中核に据えた。この会社は当時、エンジニアの小さなチームで構成されていて、技術は素晴らしかったのだが、私は、この会社を4JETとして知られる製品事業に転換することによって、ビジネスモデルを変更することを決断した。

―4JET社はその後どのように進化したか。
タイヤ金型をクリーニングするためのレーザベースのタイヤ処理機械の提供で事業を開始した。1年後には、薄膜太陽電池(PV)産業に参入し、薄膜太陽電池を製造するためのレーザパターニングやその他のレーザ加工システムを供給した。2008年の金融危機で、自動車産業はほぼ破綻したが、当社はPV事業による収益で生き残ることができた。
 しかし2011年には、欧州の太陽光発電製造産業が破綻し、当社は1年のうちに顧客の80%を失った。そのため、基本的に会社を再編する必要があった。タイヤ事業については、機械で読み取り可能なQRコードによって、ライフサイクル全体を通したタイヤのトレーサビリティを実現するシステムを開発することにより、これを行った。PV事業については、アジア市場に参入することにより、できる限り迅速にグローバル化を進めた。大半の欧州装置ベンダーが当時、アジア市場から撤退したが、当社はこの10年間、事業を継続し、アジアと西欧の両方の顧客に対して同じように業務を行ってきた。現在は、アジアにおいてPV製造のかなりの規模の量産機会を見出している。
 今日、PVとタイヤ処理が引き続き、ディスプレイや半導体などの分野向けのガラス薄層の切断とアブレーションともに、当社の主要市場である。当社のビジネスモデルは、技術を中心としたシステム統合である。当社は、顧客が産業規模でのパーツ加工に使用する、生産ソリューションを開発している。収益の80%は、世界中の製造工場で24時間年中無休体制で使用される機械類の販売で得ている。個別のソリューションやカスタイマイズされたソリューションに注力するよりも、特殊なニーズに対応して繰り返し販売できる製品を開発することによって、事業における一定の拡張性と反復性を達成することを目指している。
 本社はドイツにあり、販売とサービスを手掛ける小さな子会社を、米国のジョージア州アトランタと中国の上海に構えている。また、ガラス加工に特化したレーザ加工ジョブショップも運営している。この17年間で、グループ全体の従業員数は約180人、年間売上高は3000万ユーロを超えるまでに成長している。

―レーザは社内で開発するのか、それともサードパーティーから購入するのか。
レーザ源の技術的進歩に後れを取ることなく、世界レベルの装置を構築できるように、レーザはサードパーティーから購入して、統合に集中することを、早い時期に決断した。レーザはエンジンであり、われわれの役割は車を構築することだと、常に考えている。

―フォトニクスやエンジニアリングの経歴を持っていなかったことが、ハンディになったことはないか。
全くない。実際、それはメリットだった。私は最初から、自分を支えてくれる非常に有能な技術チームが必要であることを知っていた。その結果、優秀な人材を雇用して、決して彼らの邪魔をしなかった。多くの技術企業が技術者によって創設されていて、そのような人は、技術面で生じるあらゆる事象に対して意見を持ち、チームに進化する余地を与えない可能性があると、私は思う。私の場合は、技術的な経歴を持たないために、縄張り争いが起きることは決してなく、それが当社の発展を加速化させた。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/05/042-044_keeping_laser_surface.pdf