半導体のレーザ溶接

デビッド・グロホ、ポル・ソペナ

赤外( IR)領域の光を照射する小さなナノ秒ファイバレーザ源を利用した、新しいソリューションを紹介する。この画期的な方法は、レーザ溶接技術の応用範囲をさらに拡大する可能性がある。

高集束の超短パルスを使用することにより、ポリマー、誘電体、さらにはセラミックといった、ほぼすべての種類の透過材料に対する微細溶接を、確実に達成することができる。この方法では、接合する2つの材料を、互いに接触させて配置する。上の材料はレーザ照射を透過する必要がある。それによってビームは、上の材料を貫通して接触面で集束することができる。ビームを吸収すると、両方の材料が溶融して結合し、その後再凝固することで、上下の部品が接合される。
 これは、主要な積層造形(AM)プロセスとなっており、光学機械部品のアセンブリから、温度に敏感な部品(電子部品など)用の高度な封止技術に至るまで、多くの技術的及び科学的分野で適用されている。しかし意外なことに、この方法が適用できない、重要な例外が存在する。半導体材料は、赤外(IR)領域の光を透過するにもかかわらず、この標準的なレーザ加工方法を使用して確実に接合することができない。
 古くから存在するこの問題の原因が、狭バンドギャップ材料における伝播の強い非線形性にあり、表面よりも下にビームを集束させると、デフォーカスが生じて焦点前にプラズマが形成されることは、広く知られている。半導体内部の超高速IR光の場合は、これらの現象が、焦点における効率的なエネルギー堆積の妨げとなる。これによって、あらゆる種類の材料改変が妨げられ、その結果、接合する2つの材料の間の接触面における、溶融とそれに続く再凝固が妨げられる。
 この問題に対処するために、最近の研究では、パルス列、ハイパーフォーカス手法、または、より長いパルスを使うことによる非線形性の低減に基づく、複雑な補償方法が提案されている。最後の方法では、ピコ秒パルスを使用することにより、超高速レーザによるシリコンと金属の溶接が可能であることが示されている。そこでは、下の材料が金属で、それによってエネルギー吸収が改善されていた。しかし、レーザ溶接の枠組みの中で、半導体同士の溶接は、この種の最適化の適用対象外のままとなっている。
 その原因は、フランス国立科学研究センター(French National Center for Scientific Research)とエクス=マルセイユ大(Aix-Marseille University)の間の共同研究施設であるLP3における筆者らの研究で最近明らかになった、2つめの重要な物理的制約にあった。筆者らは、高屈折率の半導体の間の接触が不完全であると、2つの材料の間の接触面に空隙ができることを発見した(図1)。これが接触面のエネルギー密度を引き下げる、共振光学キャビティとして作用する。偶然にもこれは、1世紀以上前(1899年)に筆者らと同じ都市で発明された有名なファブリ・ペロー(Fabry-Perot)干渉計に似た、干渉計構成において対処が必要となる状況と一致する(1)。

図1

図1 上下の材料の間の接触面にレーザの焦点を合わせて、ラスタ走査して大きな領域を溶接する実験の概略図。溶接スポットの側面図の赤外(IR)画像(左)には、接触面を横断する形で生成される改変の様子が示されており、溶接領域のIR画像(右)には、蛇行形状の溶接パターンが示されている

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/05/040-041_ft_laser_welding.pdf