窒化シリコンプラットフォームでSBS効果の活用方法を開発

サリー・コール・ジョンソン

誘導ブリルアン散乱(SBS)コンポーネントとマイクロ波フォトニクス機能モジュールを1つの回路に統合することで、前例にないほど高性能な完全統合型のマイクロ波フォトニックフィルタが開発された。

蘭トゥエンテ大の研究グループは、大規模な回路内のチップ上に音波と光を捕捉する手法を考案した。光信号をフィルタリング、増幅、処理する能力は、量子光学のみならず、新しい電気通信技術やセンサにとっても極めて重要である。 同研究グループは、マイクロ波フォトニックフィルタを構築するために、誘導ブリルアン散乱(SBS)に着目した。この手法では、2本の微調整されたレーザを使用して、人間の聴覚しきい値の100万倍もの高い周波数の音波を発生させ、導波路内に捕捉する(図1)。導波路を介して送信された光は音波と相互作用し、スペクトルのごくわずかな特定の部分を反射して信号をフィルタリングする。 SBSは非常に強力な非線形光学効果の1つであり、長年にわたって光ファイバでの使用が研究されてきた。最終的には、高精度センサ、低しきい値、狭線幅レーザ、およびそれに基づく狭帯域フィルタの実証に成功した。
さらに最近では、センチメートル長のチップスケールのフォトニックデバイスでSBSを活用する研究へと関心が移りつつある。「すでにさまざまなプラットフォームで実験的実証が行われているが、SBSデバイスはまだ単体のものが多い。SBSデバイスを大規模かつ汎用的な回路に組み込んで、その可能性を十分に引き出すことは困難だ」と、非線形ナノフォトニクスグループを率いるデイビッド・マルパン教授(David Marpaung)は言う。 窒化シリコンは、低損失で汎用性の高い、新たなフォトニック集積プラットフォームである。「しかし、これまでの窒化シリコン導波路でSBSを測定すると、利得係数が非常に低く、ほとんどの用途には適用が困難だった」と、マルパン教授は指摘する。 同教授のグループの研究は、複雑な製造工程を導入せずに、熟慮された窒化シリコンプラットフォームでSBS効果を向上させる、という考案に着想を得たものである。「実現すれば、SBS素子を大規模な回路に組み込み、波長可変レーザ、周波数コム、プログラマブルフォトニック回路などの新興技術と組み合わせることができる」と、同教授は説明する。

図1

図1 多層窒化シリコン導波路を芸術的に表現した図で、窒化シリコン層間に誘導された音響波によって強化された後方SBSプロセスを示す

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/05/010-012_ft_researchers_harness.pdf