超高速赤外レーザバーストで半導体チップ内の書き込みを実現

サリー・コール・ジョンソン

研究者らは、半導体材料の内部埋め込み型構造の製造に取り組んでいる。これは半導体製造を、3Dレーザ書き込み法により、おおむね 2次元の世界から高密度の3次元集積デバイスへと移行させる可能性を実証している。

フランス国立科学研究センター LP3研究所の研究チームは、シリコンやガリウムヒ素製の半導体チップの3次元空間上の任意の場所に3Dレーザで書き込める手法を開発した。これにより、マイクロエレクトロニクス産業において、ようやくこれらの材料のウエハ表面層全体を有効に活用できるようになり、飛躍的な進歩となる。
 超高速レーザの強い光が半導体内部に集光されると、ビーム経路に沿った非線形電離の大きな影響で不透明なプラズマが生じ、材料の書き込みに必要なエネルギーの局在化が阻害される。しかし、研究チームの手法では、超高速バーストパルスを用いることで、こうした非線形の大きな影響を回避できる(図 1)。
 「当所が使用するバーストは、テラヘルツの繰り返し率を持っており、2つの隣接するパルス間の時間がサブピコ秒レベルだということである」と、LP3研究所の博士研究員であるアンドン・ワン氏(Andong Wang)は言う。
 このタイムスケールは非常に短く、まばたき時間の十億分の一よりも短いものだ。レーザエネルギーは、この超高速バースト効果によって、材料改質が生じるまで、パルスごとに効率的に蓄積できる。そして、さまざまな半導体内部に3次元構造を書き込むことができるようになった。
 「当所では、半導体チップに適用可能な3Dレーザ書き込み技術の開発という長年の課題に向けて、研究を進めている。これは、半導体製造において、現在の製造用リソグラフィプレーナ技術を使用する2次元の世界から、高密度の3次元集積デバイスへと移行させる可能性を秘めている」と、同研究のチームリーダーであるデービッド ・グロホ氏(David Grojo)は述べる。

図1

図1 研究チームは、超高速赤外パルスのエネルギーを分割して、強度の低いパルスの超高速バーストを形成し、励起の局在性を向上させた。「十分に高速な」バーストを用いることで、材料改質を引き起こすのに十分なエネルギーを蓄積し、半導体チップ内部に新しい機能を追加できる(画像提供:アンドン・ワン氏、ポル・ソペーニャ氏、デービッド・グロホ氏)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/03/032-033_ft_ultrafast_lasers.pdf