医療用途として外科手術に適している2μmレーザ

コーリー・ブーン

この波長域のレーザは安定性、効率、費用対効果、使いやすさが以前よりはるかに向上しており、医学や外科手術への応用がさらに進んでいる。

レーザは医療を含め、幅広い産業で必要不可欠なものとなっている。多くの使用事例では、レーザを用いた手術ではメスよりも精度が高く、感染の可能性を軽減し、さまざまな角度からきれいにカットできる。出力波長が1〜1.5μmのレーザ光源が広く普及しており、よく使用されている。その一方、2μmレーザーも大幅に進歩しており、急速に評価が高まっている。

2μmレーザの進化

最初の2μmレーザ光源は、大型で高価な液体窒素冷却装置だった。現在、2μmダイオードレーザは30mm程度まで小さくなり、より小型の2μmファイバレーザも利用できる。パルス発振と連続波(CW)発振の両方が可能だ。
 CWレーザとパルスレーザの両方のドーパントとして最も多く使用されているレアアースはツリウム(Tm3+)とホルミウム(Ho3+)である。これらの元素のイオンは、さまざまな母体結晶やガラスファイバ内でレーザ発光を実現するために使用される。ツリウムレーザはCW動作に適している。一方、ホルミウムはパルスレーザやQスイッチレーザに適している。これは、ホルミウムをドープした結晶では高くゲインされるためである。ツリウムレーザのもう1つの利点は、市販の波長800nmのレーザダイオードでイオンを励起できることだ。ホルミウムは、イオンを励起するのに1.9μmの励起光源が必要である。

水中での2μm吸収

2μmレーザ光源は精密な外科手術に適している、なぜなら、ほとんどの生体組織を構成する水分子は、2μm波長で大きく吸収するためである。水のO-H結合の伸縮振動と変角振動は、2μmレーザパルスの振動周波数と一致する。
 特定の振動モードに起因する吸収量を正確に決定することは困難だ。というのも、これらの効果はすべて連動しており、吸収におけるスパイクは簡単に観察できてしまう。異なるレーザタイプに対する、水の吸収スペクトルと組織の浸透深さを図 1に示す。2μmでは、吸収ピークと0.6mm前後の浸透深さの組み合わせにより、この波長領域がレーザ手術に最適となる。3μmにも吸収ピークはあるが、この波長での透過深さは高くなく、外科手術には十分ではない。

図1

図1 異なる波長における、水の吸収と組織の浸透深さ

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/03/024-025_ft_medical_lasers.pdf