逆風に反して漂う楽観ムード

ピーター・フレッティ

Laser Focus World誌の年次恒例行事である、フォトニクス市場の振り返り、トレンドの分析、今後1年間の予測を、今年も行いたいと思う。

2022年の決算報告とアナリストレポートをざっと見渡すと、フォトニクス市場がまだ好調な売上高を上げていることが明らかである。米国カリフォルニア州サンフランシスコで1月30日に開催された本誌の「Executive Forum」イベント(www.lfwexecutiveforum.com参照)で公開された「Laser Focus World State of the Market」レポートの速報結果にも、そうした業績値が反映されている。また、フォトニクス技術のメーカーと購入者/エンドユーザーの双方で、2023年に対する強気の楽観論が全般的に広まっている状態にある。
 今後5年間の見通しについても、現在の世界経済の不確実性がやや影を落とすものの、かなり良好な水準が維持されている。情報源によって予測値にはややばらつきがあるが、フォトニクス市場の売上高(と市場規模)は、2027年まで着実なペースで増加し続け、年平均成長率(Compound Annual Growth Rate:GAGR)は約7.5%になると、広く予測されている。

点と点をつなぐと浮かび上がる全体像

この継続的な成長の最大の理由はおそらく、フォトニクスが幅広い分野で利用されていることにある。実際、フォトニクス市場ほどの水平的広がりを持つ業界は、ほとんど存在しない。フォトニクスは、農業、自動車、通信、コンピューティング、エネルギー、食品及び飲料、医療、製造、軍用/防衛など、多岐にわたる垂直業界で利用されており、特に各市場分野において、さらなるスマート化と効率化を実現する機会が重要視される中で、重要な実現技術として位置付けられている(図1と図2)。
 国際光工学会(SPIE)の2022 Industry ReportのFall Updateには、フォトニクスによって実現される各垂直業界の役割を理解することの重要性が、次のように概説されている。「それらの主要市場分野は、それぞれがそれ自体で重要であり、より小さな多数の分野で構成されている。各市場は、他の市場とは独立して動くが、そのすべてがフォトニクスに依存している」。
 当然ながら、進化するこの市場の行く末を正確に評価するにはまず、さらなるイノベーションのためにフォトニクスに基づく技術への依存性を高めている、さまざまな業界を詳しく調査してから、その潜在的役割を理解する必要がある。
 分析企業である米マッキンゼー社(McKinsey)は2022年8月に、フォトニクスが関与する多数の分野を対象に行った調査とインタビューの結果をまとめた、「Technology Trends Outlook」を発表した。マッキンゼー社のこのレポートでは、技術トレンドが「Silicon Age」と「Engineering Tomorrow」という2つのカテゴリーに分類されている。
 Silicon Ageのカテゴリーには、高度な接続性、AI応用、クラウドとエッジコンピューティング、没入型現実技術、機械学習の産業化、次世代ソフトウエア、量子技術、トラストアーキテクチャ、デジタルアイデンティティ、Web3が含まれている。程度にはそれぞれ差があるものの、フォトニクスは、このカテゴリーの各技術トレンドにおいて、魅力的な役割を担っている場合が多い。
 なぜこれが重要なのか。マッキンゼー社によると、Silicon Ageに含まれる技術トレンドには2021年に合計で、6510億ドルもの資金が投じられたという。また、さらに重要な点として、これらの技術動向は、少数の導入事例が見られるという状態を通り越して主流へと移行しており、それは、引き続き力強い成長軌道を描いていることを意味する。
 マッキンゼー社のもう1つのカテゴリーであるEngineering Tomorrowには、バイオエンジニアリング、クリーンエネルギー、モビリティ、宇宙技術、持続可能消費など、より未来志向のトレンドが含まれている。こちらも、世界中で行われている科学及び研究イニシアチブの幅広さに少し目を向けただけで、フォトニクスがその各トレンドにおいても、力を与える役割を担っていることがわかる。これらの技術トレンドの多くが実際、主流の段階に近づくにつれて、フォトニクスの重要な成長分野として浮上する可能性を秘めている。
 Silicon Ageと同様に、このカテゴリーにも6860億ドルという巨額の投資が2021年に行われており、フォトニクスのバラ色の未来にさらに彩りを添えている。より従来型の代替技術と比べた場合の光に基づく技術の多くの強みと利点が、科学者や研究者によって次々と実証されていることに特に、その明るい未来がうかがえる。

図1

図1 最新レビューにおいて、2021年のフォトニクス市場規模は2兆1000億ドルと算出された。9年間で40%増加し、年平均成長率(CAGR)は3.9%である。世界合計就業者数は500万人を超えている(画像出典:SPIE)

図2

図2 フォトニクス市場の分野別売上高の推移(画像出典:SPIE)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/03/008-012_ft_annual_market_review.pdf