ブロードバンド光源のコンパクト波長選択を全自動化

ナムドゥ・キム

新開発の回転型光学ブロードバンドフィルタ技術によって、ブロードバンド光源を使用する際に、紫外領域から近赤外領域までの範囲で波長を選択して調整できるようになる。

分光法や顕微鏡法において、適切な波長を選択することは重要な手順である。フィルタ、モノクロメーター、音響光学チューナブルフィルタなどの従来の方法には、メリットとデメリットがある。使用目的、コスト、要求特性、システムとの互換性などを考慮し、最適なものを選択する。新たに開発した回転型光学ブロードバンドフィルタによって、ブロードバンド光源を使用する際、紫外領域(UV)から近赤外領域(near-IR)までの範囲で波長を選択し、帯域幅を調整できる。
 分光法と顕微鏡法は、どちらも光を用いて物体との相互作用で物理的・化学的情報を取得する方法である。これらの手法では、さまざまな光源が開発されており、検出器の感度や処理速度の向上や、光学系製造技術の開発の伴い、進化を続けている。学術研究だけでなく、医療や産業など幅広い分野で利用されている。
 スペクトルイメージングの場合、試料中のさまざまな変数の物理値をマッピングして測定できるため、食品加工、気候、医療用イメージング技術、マシンビジョンにおいて積極的に活用されている。使用される光の波長は技術の目的によって異なるため、利用可能な励起波長が多様であることと、スペクトルから取得できる情報量が多いことが密接に関連している。単色光源であるレーザは、半値幅(FWHM)が非常に小さく、強度が強い上に、コヒーレンス特性を持つため理想的だが、使用可能な光領域をすべて網羅するには高額な費用がかかる。そこで、ブロードバンド光源から必要な波長域を選択して使用できる光学系やデバイスが開発された。

フィルタホイール

化学やバイオの分野で広く使用されている蛍光顕微鏡には、ターレット内に6個程度のフィルタキューブが搭載されており、それぞれが励起フィルタ、ダイクロイックビームスプリッター、エミッションフィルタとして機能する。また、対物レンズやカメラの手前にフィルタホイールを取り付けて、特定の励起波長や発光波長を選択できるようにする場合もある。通常、フィルタホイールには3〜12枚のフィルタを装着できる。例えば、フィルタホイール2台にフィルタ6枚を取り付けた場合、合計で6×6=36通りの組み合わせが可能である。モーター付きの自動フィルタホイールを使用した場合、シャッタースピードにもよるが、30〜100msの切替時間が生じる。
 細胞イメージングに広く使用される有機蛍光色素や蛍光タンパク質の場合、紫外域と可視域から近赤外域で使用するために、さまざまなフィルタが開発された。そのため、フィルタセットの組み合わせが多様であればあるほど、応用範囲が広くなる。また、開口サイズが大きく、比較的安価で構成できる。しかし、フィルタを使用するデメリットとして、特定の励起・発光範囲でしか使用できない(自由度が低い)。損傷しきい値が高くないため、強い光源を使用した場合、表面コーティングが損傷する可能性がある。また、一般にフィルタは帯域幅が広いため、帯域幅の狭い光を必要とする分光イメージングには適していない。さらに、広い波長域のスキャンは不可能である。
 ストークスシフトのために、フィルタセットの構成には制限がある。独カールツァイス社(Carl Zeiss)が提供した蛍光色素の情報を統計的に解析したところ、ストークスシフトが20nm以下の色素は全体の26%、40nm未満の色素は73%(276種)であった。ストークスシフトの小さい蛍光色素を使用する場合、励起ウインドウと発光ウインドウの間にスペクトルの重なりが必要である。これを回避するには、励起の最大波長から離れた波長の光を伝送するか、発光させる必要があり、ある程度の損失が生じる。しかし、新製品は励起域・発光域とスペクトル幅を調整できる。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2023/03/038-040_ft_tunable_filters.pdf