レベルアップによりオールペロブスカイト・タンデム太陽電池の効率向上

太陽エネルキーは、化石燃料から持続可能性エネルギー源への移行で重要な役割を担っている。太陽光は、豊富に利用でき、太陽電池は、そのエネルギーを直接電気に変換できる。しかし、効率、安定性、拡張性、コスト障壁が依然として存在する。
 ペロブスカイトソーラセル(PSC)は、太陽電池にとって最も有望な半導体の1つである。かなりの効率(>25%)であり、他の太陽電池に比べて高価ではないからである。また、タンデムソーラモジュールが、興味深いオプションとして登場してきた。その特徴が2つの集光活性層となっているからである。すなわち、シングル太陽電池よりも太陽スペクトルを効率的に利用できる。
 ポスドク研究者のバーラム・アブドラヒ・ネヤント氏(Bahram Abdollahi Nejand)とウルリッヒ・W. ペツォルト氏(Ulrich W. Paetzold)をリーダーとする独カールスルーエ工科大(KIT)の研究者が先頃、高効率、低バンドギャップ、2端子オールペロブスカイトタンデムソーラセルを作製した。効率は、0.1cm2活性層で最大23.5%であり、オールペロブスカイトソーラミニモジュールにできる。ペツォルト氏は、次世代太陽光発電グループの先端オプティクスと材料(Advanced Optics and Materials for Next-Generation Photovoltaics)のリーダーである。
 これらタンデムソーラモジュールは、開口面積12.25cm2で効率は19.1%、またアップスケーリングプロセス(図)により高効率損失(~ 2%程度)を阻止している。
 このような効率向上を達成するために研究者は光経路を最適化し、太陽電池アーキテクチュア内の反射を減らした。また、2端子相互接続セルストリップを備えた機能タンデムソーラモジュールを実現するために高スループット・レーザスクライビング加工を利用した。

このオールペロブスカイトタンデムセルは、独カールスルーエ工科大(Karlsruhe Institute ofTechnology)研究者が完全スケーラブルな成長法により作製した。(提供:バーラム・アブドラヒ・ネヤント氏)

電池のスタック

大幅な研究・開発にも関わらず、シングルジャンクション(単接合)太陽電池の効率は、理論的に<30%が限界で ある。
 「しかし、異なるバンドギャップの2 つの太陽電池を相互にスタックする と、デバイスの集光を最大化すること で、この効率限界を上回る新たな道が 開ける。結果的に面積当たりの電力生 成は大きくなる」とネヤント氏は説明 している。「この素晴らしいが、単純 なアイデアは、新たなクラスの太陽電 池、いわゆる‘タンデム太陽電池’ の開 発につながった。これは基本的に、>35%の効率となる」。
 チューナブルバンドギャップを持つペロブスカイト太陽電池は、他の太陽電池技術のタンデムパートナーに理想的な候補である。「今日まで、2端子ペロブスカイト/シリコン、ペロブスカイト/セレン化銅インジウム・ガリウム(CIGS)、それにオールペロブスカイトタンデム太陽電池は、それぞれ29.8%、25%、及び 26%を超える効率であり、最上位の十分に開発されたペロブスカイトベースタンデム太陽電池にランクされる」とネヤント氏は話している。
 これらタンデムセルの中で、2端子オールペロブスカイトタンデム太陽電池は、大きな注目を集めている。製造コストが低く、機械的柔軟性、完全溶液ベース処理可能性、多様なペロブスカイトバンドギャップの異なるアーキテクチュアを柔軟に設計できるからである。「安定性と拡張性が満たされれば、将来的にはそれらは大きなシェアを取る」とネヤント氏は言う。「アップスケーリングの最大の課題は、溶媒拡散によっていかなる劣化もないように、広いバンドギャップのペロブスカイトサブセル上に狭バンドギャップペロブスカイトを堆積することである」。
 同氏によると、複数の研究が、電力変換効率(PCE)>23%を示すラボスケールオールペロブスカイトタンデム太陽電池の効率を報告している。また、現在認定済みの記録は26.4%である。
 「これらの値の全てがシングルジャンクション多結晶シリコンあるいはCIGSセルを上回ることを考えると、次の段階へ進み、スケーラブルな製造工程、2端子オールペロブスカイトタンデムソーラモジュールのための相互接続法を開発する時であった」とネヤント氏は話している。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2022/12/008-009_wn_photovoltaics.pdf