高速フォトニクスを超えて:超高速イメージングの主要な用途

ヴァレリー・コフィ・ロズィッヒ

商業用の高速イメージング(画像化)技術は、進化する高性能カメラの代表的な用途に見られるように、フレームレート、解像度、画像処理能力において継続的に向上している。

今日、ハイスピードカメラ(高速度カメラ)と言えば、離陸時のジェットエンジンのタービンブレードのような高速で移動する物体の高解像度フリーズフレームを撮影できる、超高速デジタルイメージングが可能なものを指す。
 ハイスピードカメラは、毎秒数百万コマのフレームレートを実現し、高速化のニーズ満たしている。ただし、フレームレートが高いほど、他の機能が制限される。例えば、暗い場所で15マイル飛ぶゴルフボールを撮影したり、ボール上の1ミクロン未満の欠陥を検出したりするのに十分な高解像度が求められる。1つのイメージングシステムでこれらすべてを(まだ)実現できていないが、高解像度・高速化のニーズと、低消費電力・高感度・広視野・即時データ処理能力のニーズとの間の長年のトレードオフをいかに克服するかは、永遠の課題である。なぜなら、たとえカメラが超高速フレームレートで超高解像度のイメージングを実現できたとしても、それを省電力で、大きな立方体のデータをリアルタイムで画像判定して瞬時に処理することも求められるからである。
 高速イメージングの主要な用途とその進化を次に示す。
 「モーショントラッキングと解析」超音速の弾丸、爆発、ジェットエンジンのタービンブレードなど、高速移動する被写体の高解像度フリーズフレームを記録するには、2万fps以上の高速撮影を短い積分時間で可能にするハイスピードカメラが必要である。また、広い視野が必要とされることも多い。ハイスピードカメラは、フレームレート(1秒あたりのフレーム数[fps]またはヘルツ[Hz]で測定)が高く、肉眼では見えないものを可視化する1つの手段である。
 また、可視光線以外の波長を検出するセンサを使用する方法もある。米テレダイン・フリアー社(Teledyne FLIR)の研究・科学用高速中波長赤外線(MWIR)カメラ「X6900 sc」は、画像を熱的波長でとらえ、29000fpsで撮影し、マイクロ秒レベルの積分時間で詳細に可視化できる。この次世代カメラは、1.5 ~ 5.0μmでフル解像度の640×512ピクセル画像を高速撮影できるため、解像度を失うことなく高速被写体の熱力学的解析が可能である(図1)。
 「科学」歴史的に、最高速度カメラは解像度が低すぎるため、ほとんどの科学的用途を満足させることができなかった。カメラメーカーの米ビジョンリサーチ社(Vision Research)は、スピードと解像度の基準を設定する新たな裏面照射型(BSI)センサを売り込んでいる。このセンサには、ウエハの裏側からバルクシリコンを取り除き、フォトダイオードを光源の近くに配置するという困難な製造工程が必要となる。この撮像素子を使用した最初のデモカメラでは、76000fpsで解像度1280×800ピクセル画像の撮影を実証した。最高のフレームレートはその10倍で、175万fpsを1280×32ピクセル、640×64ビニングで実現した。2月に発売された「Phantom TMX」シリーズは、燃焼、デジタル画像相関(DIC)、イメージングサイトメトリ、マイクロ流体工学、粒子画像流速測定など、センサの解像度が制限要因となる多くのアプリケーションで利用できる(図2)。
 「セキュリティと防衛」 長波長赤外線(LWIR)センサを搭載したハイスピードカメラは、発射体の飛行、爆発、燃焼、エンジン性能などの防衛と監視イメージングにおける動体追跡で重要な役割を担っている。また、小型化により、カメラやイメージセンサには困難な要求が課せられている。加テレダイン・ダルサ社(Teledyne DALSA)の「MicroCalibir LWIR」カメラは、ポケットサイズ(21×21×12mmコア)、軽量、低消費電力のカメラプラットフォームで、ドローン、ヘルメット、携帯端末への搭載に有用で、重量は20g未満である。低エネルギー動作により、カメラは冷却されず、体積、重量、コストを削減できる。「MicroCalibir」は、320×240ピクセル、640×480ピクセルの解像度で、それぞれ30Hz、60Hzのフレームレートを実現する。LWIR検出器は非常に感度が高く、低エネルギーで長波長を検出するため、夜間や暗い場所でのイメージングに最適である。
 「マシンビジョン」インダストリー4.0やモノのインターネット(IoT:Internet of Things)と呼ばれる、スマート工場への急激なシフトが進行中である。ハイスピードカメラの最大の用途はマシンビジョンである。この用途では、ハードウエアと人工知能(AI)ソフトウエアを用いて、検査や工程管理、オートメーションのガイドを行う。装置メーカーは、より鮮明で高品質な画像を実現する高速・超解像マシンビジョンカメラの開発し、ファクトリーオートメーションや検査の要求に応えている(図3)。このカテゴリーの具体的な用途としては、電子機器製造(3Dはんだペースト検査など)、半導体ウエハ製造(表面・バンプ検査)、ソーラーパネル検査などが挙げられる。

図1

図1 北米のハチドリは、通常飛行の場合、毎秒平均約53回で羽ばたきする。テレダイン・フリアー社の研究・科学用高速度中波長赤外線カメラ「X6900 sc」を使用して、ハチドリの羽ばたきを熱的波長でとらえ、1000fpsで撮影している。(提供:テレダイン・フリアー社 https://youtu.be/F5QbQqqMBuY)

図2

図2 ミツバチやスズメバチは、ハチドリよりもはるかに多く、1秒間に最大250回も羽ばたきする。ウルトラハイスピードカメラ「Phantomv2512」は、スズメバチの羽ばたきの一部を25000fpsで9フレームを連続撮影している。(提供:ビジョンリサーチ社 https://bit.ly/3aXOsM1)

図 3

図 3 高フレームレートカメラ「Falcon4-CLHS」は、最大4480ピクセル、2496ラインの大視野と609fpsのフレームレートを実現し、超高速・超解像の産業オートメーション検査において重宝される。(提供:テレダイン・ダルサ社)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2022/09/015-017_ft_high-speed_cameras.pdf