医療診断に向けて進歩するテラヘルツイメージング

ヴァレリー・コフィ-ロズィッヒ

商用テラヘルツイメージングは、近年大躍進しており、バイオメディカルアプリケーションへ進化している。

時間領域分光法(TDS)に基づいたテラヘルツフィールドイメージングは、画像を収集する多用途技術であり、これによりわれわれはプラスチック、繊維製品、段ボールを“透視” できる。この技術は、過去20年の間に大きく進歩した。テラヘルツ波、約30μm ~3mmの波長は、液体や金属材料によって強く吸収される。従ってテラヘルツイメージングは、空港セキュリティスキャナや食品検査のようなアプリケーションで材料などの特定用途に理想的である。
 X線とは異なり、テラヘルツ波は、0.4 ~ 40meVの範囲の低いフォトンエネルギーであり、生体組織に有害ではない。危険な電離放射線なしでX線のように画像を取るTHz-TDSシステムの能力は、生体(生体内)アプリケーションでは、その潜在性が特に注目されている。テラヘルツ波は水で吸収されるので、さまざまな物体における水分含有量の変化の識別に便利である。それだけでなく、多くの生体や分子の固有のスペクトルフィンガープリントを利用して、テラヘルツは、画像内の各ピクセルについてのスペクトル情報を提供できるハイパースペクトルイメージングキューブのようであり、この点は、医療診断、ガンの検出や糖尿病スクリーニングなどにはテラヘルツ技術の素晴らしい潜在性となる。さらに、テラヘルツ光源によるイメージングは、軟組織ではX線に匹敵する感度がある。
 商用、可搬パッシブテラヘルツシステムは、20年以上前から市場に出ている。これは、非常に高感度のディテクタ、ファイバピグテールアンテナなどの出現によるものである。GaAsショトキーダイオードディテクタ、超伝導多重量子井戸アンテナ、平面ディテクタアレイを利用するシステムもさまざまな非破壊、非侵襲的アプリケーションで広範に利用されている。セキュリティ、食品検査、製造及び芸術の保護がこれに含まれる。近年、テラヘルツ遠隔検出が、18 ヶ国の主要交通ハブで使われるようになっている。例えば、ロンドンの地下鉄やLA Metroは、同技術を使ってターミナルを進む乗客をスキャンする。隠した凶器、他の禁制品を検出するためである。そのようなデ バイスの1つ、VariView戦術的認識カメラは、英スル
ービジョン社(Thruvision)のライセンスを受けたものであり、これは熱コントラストを利用して、身につけている凶器になり得る物を検出する。これにより乗客のセキュリティスクリーニングをスピードアップする(図1)(1)。しかし、これらのシステムは、分光学的情報を収集しないので、生体アプリケーションには役に立たない。
 同様に、近年の新しいテラヘルツ光源の出現は、これらの高感度ディテクタと組合せて、初の商用、可搬THzTDSシステムを可能にしている。これは、積極的にターゲットを照射し、分光学的情報を取得する。
 一般に、TDS用のテラヘルツ波を実現するには、光源は、パルス、モードロックファイバレーザで、フェムト秒周波数が多い。ファイバレーザは、可搬性を可能にするコンパクトさを提供する。商用医療アプリケーションに有望な、ラボで実証ずみの他のタイプのテラヘルツ光源に含まれるのは、光伝導性アンテナ、CWとパルスの両方を備えた強力なジャイロトロン、量子カスケードレーザ(QCL)である。
 テラヘルツイメージングは、医療分野ではまた商用になっていないが、中国の四川大の材料科学・工学教授、キウ・シ氏(Qiwu Shi)によると、生体アプリケーション追求の研究は、近年、大きく前進した。
 「先進的テラヘルツイメージングシステムは、分解能改善、サイズ小型化で可搬性向上、イメージングが高速になっている。また、多くの先進的テラヘルツ光源の商用開発によりコストが急速に下がっている」とシ教授は話している。

図1

図1 高感度GaAsショトキーダイオードディテクタにより、非破壊、パッシブテラヘルツイメージングシステムが可能になる。これは、熱コントラストを利用し、30フィート離れて、隠された凶器を検出できる。損傷を与えるX線の高エネルギーはない。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2022/07/024-026_ft_addvanced_in_spectroscopy.pdf