偽造薬を検出するイメージング技術

世界中で何百万人もの人々が、必要とする薬を手に入れることができない。このような健康上の懸念を悪化させているのが偽造医薬品であり、世界中でますます広がっている問題である。
 世界保健機関(WHO)によると、「低・中所得国にある医薬品のうち、10品目に1品目が不良品または偽造品と推定されている」という。全体では、少なくとも「世界の医薬品取引の10%、210億ドル相当が偽造医薬品に関連している」と推定されている。対処すべき懸念の一部は、不正な入手源からオンラインで簡単に購入できてしまうことと、本物と偽物の医薬品を区別することの難しさである。米ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(Bristol-Myers Squibb)のグローバル品質分析科学技術部門の法医学・革新技術グループの研究者によると、一部の偽造品は「正規のサプライチェーンに紛れ込んでいる」ことさえあるようだ。
 偽造医薬品による健康上の脅威を根絶する動きが世界で高まっている。今回、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の研究チームは、『European Pharmaceutical Review』誌に掲載された研究において、可視光・近赤外(VNIR)のハイパースペクトル画像とラマン分光法が複数の異なるタイプの偽造医薬品を効果的に同定、分類できることを実証した。
 錠剤などの医薬品はすべて、電磁スペクトルのVNIRスペクトル領域において固有の光吸収と反射を持っている。研究者は、次のように述べる。「この(VNIR)領域の詳細かつ特異的な指紋を、極めて高速に収集できるのはハイパースペクトル画像だけである。画像の各ピクセルに対するVNIR領域の反射スペクトル指紋によって、対象製品の品質を示すマップを作成できる。人間の目には同じように見えても、実際には全く異なるピクセルを正確に区別できる」。例えば、偽造医薬品は、見た目は本物のようでも、化学的には異なるものがある。ハイパースペクトル画像は、「品質を識別するために、医薬品の1つひとつのピクセルすべてに付加的な次元の情報」をもたらす。基本的には、そのスペクトル次元は、偽造医薬品と本物を区別するのに役立つ。
 本研究では、2錠の正規品と、2〜7錠の偽造品の反射率を測定し、キャリブレーション用データセットを作成した。44種類の錠剤でテストしたところ、このキャリブレーションモデルは、本物と偽造品を正しく識別した。
 また、ラマン分光法、特にフーリエ変換(FT)ラマン分光法も用いて、「高性能なスクリーニングツール」としての性能を実証した。この技術は、「単色光を用いた分子振動の基本モード」であるレーザ、すなわち今回の場合は医薬品という試料との相互作用からの光を研究するために使用できると、研究者は述べている。「散乱光を検出して、対象製品に関する情報を集めることができる」。
 本研究では、4種類の既知の偽造品を含む合計153錠を分析した。4種類の偽造品すべてから143のラマンスペクトルと、本物から10のスペクトルを収集した。このデータと他の分析を組み合わせることで、この技術が偽造品の分類にうまく利用できることを示した。
 最終的に、「あるブランド製品のさまざまなタイプの偽造品をラマン分光法で最初に検出したことを確認できれば、ラマン分光法の代わりにVNIRハイパースペクトル画像が、偽造医薬品を迅速に検出するためにうまく導入できる可能性がある」と、研究者は報告した。(Justine Murphy)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2022/05/008-009_biown_hyperspectral_imaging.pdf