Laser Focus World誌、2021年度イノベーターズ・アワードを発表

ジョン・ルイス

Laser Focus World誌は4年連続で、フォトニクス市場における独自性と革新性に優れた技術、製品、システムを表彰するInnovators Awards Programを実施した。

Laser Focus World誌のイノベーターズ・アワード・プログラムは、フォトニクス市場における独自性と革新性に優れた技術、製品、システムを表彰するものである。
 本誌審査員による公平な評価に基づき、銅賞(Bronze)、銀賞(Silver)、金賞(Gold)、プラチナ賞(Platinum)の4段階で、製品または技術、アプリケーション、研究開発で卓越した成果を示した企業または組織の受賞選考を行った。
 応募作品を、独自性、革新性、設計者/システムインテグレータ/ユーザーに与えるインパクト、新規市場のニーズを満たしているかどうか、新規技術の活用度、生産性への貢献度を基準に評価した。
 本稿では、2021年の受賞作品について、各受賞者自身の言葉で紹介してもらうことで、今日の最先端のフォトニクス製品及び応用事例の概観を示したいと思う。

プラチナ賞受賞者


テスト&計測
「NED-LMD」 光導波路テスター

 NED-LMD(米国特許番号10,257,509)と名付けられたこのニアアイ・ディスプレイ(Near-Eye Display:NED)光測定装置は、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)、ヘッドアップディスプレイ(Heads-Up Display:HUD)の完全な特性評価が可能である。このシステムは、人間の目をエミュレーションして、IEC(国際電気標準会議)やSID(Society of Information Display)によって策定されている最新規格に準拠することにより、ユーザーの満足度を定量化する。複数の指向方向における導波路の画質と彩色欠陥を適切に測定するために必要な、250pixels/degreeを超える画像解像度と、180°を超える対角デバイス視野角を備え、広いダイナミックレンジ(5〜1000万nit)と搭載されている分光放射計によって、正確な色測定を行う。ソフトウエアは、20を超える光学設計指標を提供し、各テスト対象デバイスに対して完全なテストレポートを出力する。
米国:ガンマ・サイエンティフィック社(Gamma Scientific)

ガンマ・サイエンティフィック社の「NEDLMD」光導波路テスター

金賞受賞者


レーザ&光源
「ORPHEUS-MIR」中赤外広帯域光パラメトリック増幅器(OPA)

 ORPHEUS-MIRは、中赤外域の部分的にしか活用されていない重要な領域を、分光法において利用可能にするものである。広帯域に波長可変なこの中赤外レーザ源は、最先端研究施設をターゲットとしており、単一のレーザ源で2500nm〜1万nmの波長チューニングレンジ内の広帯域幅パルスを提供する。このレーザ源は、イッテルビウム添加レーザを励起源として使用し、2チャンネルの光パラメトリック増幅器に非同一線上の差周波発生(Difference Frequency Generation:DFG)段が続く構造になっている。オプションの狭帯域バンド幅により15000nmまで波長が延長可能で、パルス幅は100fs未満、短期的にも長期的にも優れた安定性を備えており、その短いパルス幅、高い出力安定性、広い波長範囲によって、さまざまな超高速用途に対して非常に魅力的なデバイスとなっている。
リトアニア:ライト・コンバージョン社(Light Conversion)

ライト・コンバージョン社の「ORPHEUSMIR」中赤外広帯域光パラメトリック増幅器

レーザ&光源
「BeamRazor」シリーズの「LE02」モジュール

マルチチャンネルのパルスレーザダイオードアレイまたはVCSELアレイをレーザ源として使用し、これに一連のマイクロオプティクスを組み合わせることにより、ライダ(LiDAR)検出器のリニアアレイに整合する、単一の均質なライン状ビームを生成するBeamRazorは、車載グレードの信頼性、性能、コストの目標を満たすライダシステムの設計と製造の課題に対する、非常に革新的なソリューションである。150mの検出範囲を持つ高度に集束されたラインレーザビームは、最新GaN技術によって実現されている。
中国:フォーカスライト・テクノロジーズ社(Focuslight Technologies)

フォーカスライト・テクノロジーズ社の「BeamRazor」シリーズ「LE02」モジュール

レーザ&光源
「AFX-1000」

光ファイバ内のビームチューニングは、レーザ粉末床溶融結合法(LaserPowder-Bed Fusion:L-PBF)による積層造形の生産性を向上させるための、ファイバレーザの重要な進歩である。AFX-1000は、レーザのスポット径と強度プロファイルのリアルタイムな調整を可能にすることにより、L-PBFの製造速度を7倍以上にまで増加して、積層造形部品のコストを大幅に削減する。この進歩によってL-PBF装置は、レーザを利用する技術でしか達成できない材料の選択肢、部品の品質、空間分解能を維持しつつ、高速バインダージェット装置に匹敵する生産性を達成することができる。AFX-1000の能力は、複数の装置インテグレータと研究開発機関によって、実証及び定量化されている。
米国:エヌライト社(nLight)

エヌライト社の「AFX-1000」ファイバレーザ

産業レーザシステム
「CapStone」PCBレーザ加工システム

CapStoneシステムは、ガルバノメータを使用して各ビアに対して機械的にビームポジショニングを行う代わりに、音響光学ディフレクタ技術を活用して、作業面に対するビーム配置とビーム出力の動的制御を行う。ガルバノメータを使用するシステムの実質的に2倍の速度で、特にブラインドビアを対象とした高品質なビア穴あけを実現することにより、PCB製造における可撓性材料の加工に必要な全体的な時間を短縮する。個々のレーザパルスの配置と出力の動的制御により、欠陥を引き起こす熱影響部は最小限となり、歩留まりが向上する。多層材料では、さまざまな材料からなる個々の層に穴をあけてビアを形成する必要があるが、連続ビーム出力調整によって適切な出力が適用され、ワンパスで精密なビアを生成することができる。
米国:MKSインスツルメンツ社(MKS Instruments)

MKSインスツルメンツ社の「CapStone」PCBレーザ加工システム

テスト&計測
「UP-QED」
高密度レーザパワーディテクタ

UP-QEDシリーズのパワーディテクタは、独占的な拡散アブゾーバーを使用して、レーザの出力とエネルギーをより大きな体積内に再分配することにより、高繰り返し周波数で高集束の高エネルギーレーザに耐えることができ、高出力パルスレーザの用途に関連して高まる測定ニーズに対応する。損傷しきい値が高いため、表面強化システム、微細加工、リソグラフィ、半導体製造システムといった高強度レーザシステムの動作点を含む、レーザビームのパス内で直接使用することができる。測定可能な平均出力の範囲が数mW〜300Wと広く、ビームエキスパンダーや光サンプラーが不要であるため、レーザシステムの設計者やメーカーにとって使いやすく統合しやすい、パワーディテクタとなっている。
カナダ:ジェンテックエレクトロオプティクス社(Gentec-EO)

ジェンテックEO社の「UP-QED」高密度レーザパワーディテクタ

レーザ&光源
「PowerBoost」マルチジャンクションVCSEL

2層以上のp-nジャンクションを相互に積層しトンネル接合で分離した、マルチジャンクション技術を採用することにより、PowerBoost垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity SurfaceEmitting Laser:VCSEL)は、電力変換効率を最大60%まで高め、光出力も向上している。また、より高速な立ち上がり/立ち下がり時間により、短いパルス長が可能である。これは、ToF(Time of Flight)アプリケーションにおいてアイセーフティ機能を損なうことなく到達距離を延長するために、非常に重要である。この製品は、3Dカメラやモバイルデバイスの顔認証といった民生エレクトロニクス分野や、短距離ライダ、マシンビジョン、ロボティクスなどの産業分野に適している。比類ないその効率は、駆動電流の低減とドライバICの変調速度の改善を求める顧客にとって大きな利点となる。
米国:amsオスラム社(ams OSRAM)

amsオスラム社の「PowerBoost」マルチジャンクションVCSEL

レーザ&光源
「ダイナミックビームレーザ」

ダイナミックビームレーザは、溶接フィードレートと積層造形速度を大幅に向上させる可能性がある。電気光学効果を利用したコヒーレントビーム結合(Coherent Beam Combining:CBC)によって、溶接パラメータ、キーホールの安定性、溶接スパッタの優れた制御が実現されており、メーカーはより
複雑な形状を作成することができる。従来のスキャナ速度の制約を克服するために、周波数の変更によってビーム形状をナノ秒レベルで変更する手法が採用されている。これによって、より柔軟なビームステアリングが可能となり、eモビリティや航空宇宙の分野における新たな可能性が開かれる。最後に、焦点の変更による切断や穴あけにおけるフォーカスステアリングが可能で、熱影響部を縮小し、電力効率を高め、溶融池やレーザプロセス全体に対する優れた制御を提供する。
イスラエル:シヴァンアドバンストテクノロジーズ社(Civan Advanced Technologies)

シヴァンアドバンストテクノロジーズ社の「ダイナミックビームレーザ」

テスト&計測
「Kola Deep」分光計測システム

急峻なエッジに隣接する深いブロッキングの測定が可能なKola Deep分光計測システム(Spectral Measurement System:SMS)は、0.3°の円錐半頂角と直径2mmのスポット径によって、高精度アプリケーションにおける非常に正確な薄膜コーティング測定を行う。この独占的なシステムは、UV、可視域、近赤外域にわたってOD8以上までのブロッキング性能を評価する能力を備え、0°〜60°の任意の正確な入射角において、透過率90%からOD7以上までの範囲で、エッジ波長に対して0.2%よりも急峻なエッジを測定することができる。これは、ラマン分光法、次世代シーケンシング、空間生物学、蛍光イメージングなど、仕様定義が極めて重要となる用途において、重要な機能である。これらの用途では、透過率が高く、ブロッキングが深く、エッジが急峻で、スペクトルが複雑であることから、高性能な薄膜誘電光学フィルタコーティングが用いられるためである。
米国:IDEXヘルス&サイエンス社(IDEX Health & Science)

IDEXヘルス & サイエンス 社の「Kola Deep」分光計測システム

分光法
「Culpeo QCL-IR」液体分析器

これまで、溶液中のタンパク質やタンパク複合体の化学的識別は、赤外(IR)スペクトルの指紋領域において非常に困難だった。従来の分光器では検出能力に限界があり、サンプリング時間が長いため、科学者はこれまで、オフラインの手法によって検体の特性評価を行っていた。工場環境における中赤外測定をオフラインからオンラインに移すことができるという点が、この装置の貴重な性質である。CulpeoQCL-IR液体分析器は、FTIR手法に共通する検出能力の限界を克服し、UV手法では取得できなかった化学情報を提供し、検体の定性的及び定量的情報の両方を、フロー分離において迅速かつ非破壊的に取得する手段を科学者に与える。
米国:DRSデイライト・ソリューションズ社(DRS Daylight Solutions)

DRSデイライト・ソリューションズ社の「Culpeo QCL-IR」液体分析器

銀賞受賞者

位置決め、サポート、及びアクセサリ
「QuickPOZ」堅牢なプロトタイプ開発のための光学機械式マウント

QuickPOZは、プロトタイプの迅速な組み立てを可能にする、セルフポジショニング型の光学機械式マウントで、組み立てられたプロトタイプは、過酷な動作条件や輸送条件下においてもその構造が維持される。マウントは、±50μradのポインティング安定性を維持しつつ、陸上輸送車両にみられる振動環境に耐えるように設計されている。各マウントは、INO社の特殊なブレッドボード上の取り外し可能なリファレンスボールを使用して、高い位置再現性で配置される。これらのマウントには、ユーザーがすべての光学部品を、公称光学軸に対して同じブレッドボード上に取り付けられた任意のマウントの±0.050mm@2sigmaの範囲内に配置することを可能にする、特許申請中の技術が採用されている。マウントは、ブレッドボードに固定されると自動的に位置調整されるため、アライ
メント時間は最小限となる。
カナダ:INO社

INO社の「QuickPOZ」光学機械式マウント

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2022/03/008-016_ft_innovators.pdf