光の成形:デジタルレーザの到来

ジャン-クリストフ・シャントルー、セヴェリーヌ・ベランジェ、ルイ・ダナルト、イーサン・フサイフェス、マシュー・ヴェインハード、ジェローム・ブーデリオネット、クリスチャン・ララト、エリック・ラリエ、アルノー・ブリニョン

さまざまな出力領域における光成形の可能性を秘めた、フルデジタルレーザという新しい時代への道すじを切り拓く、コヒーレントビーム結合の新しいアプローチを紹介する。

特定の実験または産業ニーズに合わせた配光調整は、光学エンジニアリングという学問分野が誕生したときから探求され続けている目的である。しかし、1960年にレーザが発明されて初め
て(1)、人類はコヒーレントな光をこの目的に利用できるようになった。
 最初のファイバレーザが発表されたのは、それからまもなくのことだったが(2)、市場に登場したのは1980年終盤になってからだった。それは、チャープパルス増幅(Chirped-Pulse Amplification:CPA)手法(3)が発表された時期と一致している。CPAは、出力分布を時間的に引き延ばすことによって、超短パルスを増幅する手法である。ピーク出力と平均出力をさらに高めるための概念として最近示されたのが、コヒーレントビーム結合(Coherent Beam Combining:CBC)である(4)〜(6)。これは、増幅プロセス全体で出力を複数のビームに分散してから、最後にコヒーレントに加算するという方法に基づいている。
 XCANは、仏エコール・ポリテクニーク(École Polytechnique)と仏タレス社が開発した、CBCフェムト秒ファイバレーザである。XCANは、ピーク出力と平均出力(100GW/1kW)の両方の領域で動作する、61のタイル型チャンネルに基づいている(7)。各チャンネルは、振幅と位相を独立して操作可能な、近接場の個別ピクセルとしてみなされる。高度にスケーラブルなタイル
型開口アーキテクチュアを採用したこのプロトタイプは、さまざまな出力領域における光成形の可能性を秘めた、フルデジタルレーザの新しい時代を切り拓く可能性がある。
 材料加工の最適化に特化した配光制御は、多種多様で特異な成形要件を持つ産業用途の重要な要求事項である(8)。XCANには、任意の形状の配光を生成できるアーキテクチュア方式が採用されているが、この実験の主要目的は、軌道角運動量(Orbital Angular Momen tum:OAM)を持つレーザビームを生成することである。そのようなビームは、らせん状の位相フロントを持つ
ため(9)、XCANの六角形のタイル配置は、そのような位相対称性の生成に完璧に適合しているように思われる。また、OAMビームには、光学操作(10)、量子光学(11)、イメージング(12)(天文学(13)や流体の特性評価(14)など)から、光通信や暗号化技術(15)、(16)に至るまでの幅広い用途がある。はるかに高い出力を必要とする用途の考察も重要である。例えば、自由電子レーザ(FreeElectron Laser:FEL)におけるマイクロバンチ不安定性の抑制(17)や、(避雷や、大気汚染物質の検出(19)、(20)を目
的とした)超高強度レーザビームの伝
播(18)などである。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/11/024-025_ft_high-energy_power_lasers.pdf