レーザダイオード、産業用途とエンターテインメント分野のイノベーションを牽引

トーマス・ブランデス

青色レーザダイオードは進化し続けており、医療や舞台照明から製造や自動車に至るまでのさまざまな分野に新しい機会をもたらしている。

InGaN(窒化インジウムガリウム)活性媒体に基づく青色レーザダイオードは、ますます強力かつ効率的になっており、医療や舞台照明から製造や自動車に至るまでのさまざまな分野に新しい機会をもたらしている。数ワットの光出力が可能な青色レーザダイオードは、狭い角度、高い電力密度、卓越した輝度など、LEDに勝る多くのメリットを備え、それによって、光学部品やフォームファクタを小さく、照射範囲を長く、ファイバなどの導波路への結合効率を高くすることができる。また、車載分野における青色レーザダイオードの使用は、光出力、電気光変換効率、温度範囲、寿命の面で、照明製品の大幅な改良に貢献している。

青色レーザダイオードが産業分野に与える影響

高出力の赤外(IR)レーザダイオードは、製造業界や自動車業界において、特に材料加工に広く用いられている。しかし、産業製造における非常に重要な材料である銅や金などの物質は、青色領域における光吸収が、変換された緑色やIRと比べてかなり高い。このメリットを活かして、自動車用リチウムバッテリーの溶接や、太陽光パネルのような再生可能エネルギー用のストレージといった、青色レーザダイオードの新しい用途が実現されている。また、自動車業界で使われるバッテリーの増加は、家庭用バッテリーという二次市場を生み出す。
 IRレーザと青色レーザの波長を、銅の処理、切断、溶接で比較すると、同等の加工品質を得るために、IRレーザには、青色レーザの10〜15倍ほどの出力が必要である。IR波長のほうが金属の反射率が高いために、吸収率が低くなることから、より高い光出力が最初に必要になる。また、青色レーザを使用すれば、溶接形状の品質が大きく改善される。例えば、青色レーザは、極薄箔を作成可能で、滑らかな溶接シームを保証する。それは、製品品質の向上につながる。

注目を集める青色レーザダイオード

照明業界における非常に興味深い新しい進歩の1つは、高出力の青色レーザダイオードを赤色や緑色のレーザダイオードとともに使用して、広いカラートライアングルを実現すること、または、蛍光体と併用して、蛍光体変換の白色または有色の光を生成することである。そのようにして変換されたレーザは、LEDよりも輝度が高く、新しい種類のクリエイティブな照明を実現する。
 そうした応用分野の1つが、コンサート用のイベント照明である。以前は、コンサートといえば、音楽がすべてだった。照明は通常、リードボーカルのスポットライトをここに、ストロボ照明をあそこにと、後から追加されるものにすぎなかった。現在、レーザダイオードは、大きなスタジアムやイベントホールで行われる現代的なコンサートの中心になり得る存在となっている。特に、新しい高出力の青色レーザダイオード(図 1)は、ショー用レーザや舞台用スポットライトのメーカーに提供される選択肢の幅を広げ、以前不可能だったさまざまな効果の演出を
支えている。

図1

図1 青色レーザダイオードの波長範囲は、エンターテインメント照明の選択肢を拡大している。

用途に応じて提供されるさまざまな選択肢

独オスラム社(Osram)の青色レーザ技術は、次の3つの異なるカテゴリーに分類される。
・TO56及びTO90Can、波長:450nm、ハーメチックシールパッケージ、最大光出力:3.5W(製品名は図 2を参照のこと。5W出力を目指したさらに高出力のデバイスが、今後予定されている)
・COSA(ChipOnSubmountAssembly)、開口径:40μm、出力:4W。将来的には出力が25%高くなる予定。
・ベアレーザバー、光出力:50W、エミッタ:23個、フィルファクタ:7.5%、波長:445nm、変換効率:38%。さらに高出力の製品が今後予定されている。
 輝度に関しては、LEDと比べてレーザダイオードには、いくつかの主要なメリットがある。2Aの動作電流で、3Wの光出力を達成し、447nmの青色光を照射することができる。標準的な光学システムにおいて、レーザ光は、直径数μmの点に集光される。レーザは、青色光源としてそのまま使用するか、特殊な蛍光体と組み合わせて白色変換することができる。白色光源の輝度は、同等のLEDよりも何倍も高い。
 InGaNレーザは、接続端子を2つしか持たない、実証された堅牢なTO90パッケージで提供されている。このパッケージは耐熱性が高いため、レーザによって生成された熱は、コンポーネントから容易に放散される。改良されたこの放熱性は、高い性能と長い寿命のカギを握る要素であるため、不可欠な機能である。

図2

図2 オスラム社の青色レーザダイオード製品「56」と「90」

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/07/040-042_ft_laser_diodes.pdf