次世代SWIRカメラを用いたシリコン検査

マーク・ドナヒー

短波赤外(shortwave infrared:SWIR)カメラは、シリコンが光を透過するスペクトル領域で動作するため、ウエハ裏面の検査が可能である。

半導体業界は、世界で最も大規模で重要な業界の1つに成長している。シリコンは、メモリチップ、コンピュータプロセッサ、トランジスタや、私たちのすべてに日常的に影響を与える、ほぼすべてのエレクトロニクス製品のビルディングブロックである。シリコンは非常に特殊な性質を備えている。最も顕著な点は、半導体であり、条件によって電気を通す場合と、絶縁体として機能する場合があることだ。シリコンは、ドーピング(添加)という処理によって電気特性を改変できるため、トランジスタに理想的な材料である。
 シリコン製造は、全工程に6〜8週間を要し、非常に特殊な半導体ファウンドリ(ファブ)で行われる。シリコン検査(図 1)は、パターンの位置合わせ、パターンの欠陥検査、エッジ位置の接合検査という点で、シリコンと半導体のメーカーにとって難しい問題になり得る。製造工程中には、異物や欠陥がウエハの上面、裏面、内部、またはウエハとウエハの間に現れる可能性がある。また、ウエハがますます薄くなるにつれて、裏面の欠陥の検出がますます重要になっている。これには、エアポケット、微小亀裂、フォトニック発光に起因するその他の微細形状が含まれる。欠陥は、最初のうちはチップの機能に影響を与えないが、最終的には、チップの信頼性に影響を与えることになる。信頼性は、クリティカルなデバイスにおいて重要な要素である。品質管理は、シリコンメーカーにとって何よりも重要である。

図1

図1 シリコンウエハ検査の様子。

カメラに基づく検査

シリコン表面検査には従来、CCDカメラとCMOSカメラが用いられてきた。これらのカメラに搭載されるシリコンセンサは、350〜1000nmの波長範囲に対応する。ディープデプレッションのデバイスは、シリコンのエレクトロルミネッセンスやフォトルミネッセンスによる最も短い発光波長を確認できるだけの高い量子効率(Quantum Efficiency:QE)を備え、シリコンのバンドギャップを上回るエネルギー遷移を伴う光子放射を観測することができる。しかし、そのようなデバイスには長い蓄積時間が必要で、バンド間発光が最も強くなる1100nmを超える領域のバンド間発光は観測できないため、オフラインの前面検査にしか使用することができない。

短波赤外(SWIR)への移行

シリコンには、1150nmを超える波長を透過するという興味深い性質がある。これにより、InGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)ベースのカメラは、ウエハ接合工程のモニタリングに対して非常に興味深い存在となっている。SWIRで観測すると、純粋なシリコンは室温において透明だが、高濃度でドーピングされたシリコンは、室温の上昇(200°C以上)とともにますます不透明になっていくためである。この性質に基づき、2次元焦点面アレイ(Focal Plane Array:FPA)のInGaAsカメラは、ウエハの欠陥、パーティクル(微小粒子)、ボイド(気泡)や、接合された2枚のウエハの間のその他の欠陥の検出に理想的である(図 2)。
 InGaAsベースのカメラは、900〜1700nmの範囲の光を検出することができる。化学的不純物、物理的欠陥、ディープトラップに関連するサブバンドギャップ発光や、その他の再結合中心は、観測できない。裏面解析(ウエハ前面からの光子放射を妨げる多層金属を使用する場合に必要)には、シリコン基板に光を貫通させる必要がある。
 InGaAsカメラはフィルタを使用することにより、ウエハが光を透過する領域のみに、検出波長範囲を制限することができるため、ウエハ検査やエッジ位置接合、ウエハ位置合わせマーク、微小亀裂、エッジ亀裂検査、光子放射、その他の微細形状のイメージングに理想的である。

図2

図2 ウエハ検査システムに組み込まれた、ラプターフォトニクス社の「Vis-SWIR」カメラ。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/07/020-021_ft_semiconductor_manufacturing.pdf