固体照明の最適化、光源から試料面へ

ジャスミン・シェーファー、イアン・ジョンソン、クラウディア・ジャフィ

ライトエンジンからの光子が顕微鏡の試料面に向かう途中で失われる場合、光路を追跡して障害点を探索しよう。

蛍光顕微鏡では、さまざまな固体技術を用いた高度なライトエンジンがますます使用されるようになっている。これらの光源の設計は、水銀やメタルハライドアークランプの大きな制限を克服し、これら初期の照明オプションをはるかに超える優れた性能を実現している。固体ライトエンジンは高いシグナルノイズ比(SNR)と分解能をもたらし、検出限界も低く、蛍光顕微鏡アプリケーションにおける感度と安定性、さらにはデータ品質、寿命、コスト削減も高まった。
 しかしながら、その性能の真価を実現するためには、照明器の出力が顕微鏡の試料面に伝搬される必要がある(1)、(2)。光源と顕微鏡の試料面を接続する光路を解析することで、装置の性能を最適化するだけでなく、照明に関するトラブルシューティングを行うためのフレームワークを得ることができる。

真実への光路

試料面において蛍光励起の欠損が発見された場合、その問題は光源に原因があると考えるのは適切であるように思える(そしてよくあることだ)。しかし、そのような帰属は一般的には不適切である。なぜなら、光路に沿って介在するすべてのコンポーネントが関与する可能性があるという事実があるためだ。すべての光学コンポーネントは、照明器の出力を顕微鏡に伝搬させ(図1)、システム全体のスループットに影響をもたらす。そのため、すべての光学コンポーネントによる寄与を用心深く検討しなければ、真に問題を解決することはできない。
 固体ライトエンジンから顕微鏡の試料面への光スループットの段階的な分析を表に示す。10倍対物レンズ(位置5A)を用いた試料面で測定された放射束は15〜50mW/mm2の照射量に対応しており、これは広視野蛍光顕微鏡に必要な範囲内(1〜100mW/mm2)である。
 蛍光顕微鏡アプリケーションでは、一定量の蛍光放射が発生するのに必要な放射束密度は、すべての波長において同じとは限らない。蛍光放射密度が、蛍光体による吸光に利用できる光子の数に依存するためであり、一定レベルの放射束密度に対して波長とともに増加する。他の要因が一定である限り、375nm励起光で特定の蛍光強度レベルを生成するために必要な放射束密度は2倍、すなわち750nm(2×375nm)となる。その結果、赤色スペクトル領域(635/22nm、表の右端の列を参照)では、より低い放射束レベルとなり、蛍光顕微鏡という状況下では想像よりも影響は少ない。
表1に示される放射束レベルは、従来の広視野蛍光顕微鏡では十分すぎるほどではあるが、改善する機会は存在する。そうした改善は、2つの主要な
アプリケーション要件に向けられている。第一に、SNRを損なうことなく、より短い時間でより多くの画像を取得するため、カメラの露出時間を短くすることと関連づけて光源からの放射束を上げることが求められている。第二に、広視野蛍光顕微鏡の空間分解能を上げるための多くの技術には、照明を空間的にフィルタリングすることが含まれる。空間的フィルタリングによる損失を補償するには、光源の出力を増加させるか、顕微鏡との結合を改善するか、またはその両方を行う必要がある。

図1

図1 倒立蛍光顕微鏡への固体ライトエンジンの組み合わせ。黄色で示された1〜5の位置は、表に記載されているスループット測定に使用される光路の場所と対応する。緑の線は、コリメータアダプタの入力から試料面への光路の方向を示す。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/06/020-021_bioft_bioimaging_illumination.pdf