テラヘルツビジネスセミナーに見るTHzアプリケーションの展望

井上憲人

2020年12月9日に、「第12回テラヘルツビジネスセミナー 」(主催:テラヘルツテクノロジーフォーラム、テラヘルツシステム応用推進協議会、All about Photonics事務局)が東京ビッグサイトで開催された。

Beyond 5G、6GがTHz技術の大きな焦点

テラヘルツビジネスセミナーのプログラムは以下の通り。本稿では、各セッションの概要を簡単に紹介する。
1.テラヘルツ応用の概観と展望
2.Beyond5G(6G)ではどのような技術の実現が期待されているのか?〜テラヘルツ無線の可能性〜
3.テラヘルツ通信の長距離化とその応用
4.300GHz帯CMOSトランシーバと6Gに向けた超高速無線通信の展望
5.【アドバンテスト】産業利用に向けたテラヘルツ解析システムと事例紹介
6.テラヘルツ光による水中光音響波の発生〜水中の物質を非接触で観測・操作する技術を目指して〜
7.パッシブTHz近接場顕微技術による熱のナノスケール検出
8.【理研】テラヘルツウォークスルーボディースキャナーの開発
セッションの1 ~ 4までは、主に次世代ワイヤレス、Beyond 5G(6G)が取り上げられた。

セッション1

最初のセッションは、THzアプリケーションを網羅的に取り上げているが、大部分は「超高速無線通信」に焦点が当てられている。ただし、内容は「Beyond 5G/6G世界動向」、「日本政府の動向」(ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業)、「国内通信会社(NTT)の動向」など、いずれもウエブ検索で内容を知ることができる。
 この他、THz波を利用した「生体分子制御」。これは生体タンパク質(高分子):アクチンに焦点を当てた内容で、さらに「高強度テラヘルツ波照射の応用可能性」として、「可能性」について説明した内容だった。

セッション2

「Beyond 5G(6G)ではどのような技術の実現が期待されているのか? 」も国内外の研究開発動向の紹介、総務省の「Beyond 5G/6Gロードマップ」の紹介、「テクノロジービジョン」、「電波のサイバーフィジカルシステム」、「コンパクトRxモジュール」の紹介などだった。
 開発されたモジュールでは、Txモジュール、Mod/PA集積モジュール、コンパクトRxモジュールが簡単に紹介された。 Rxモジュールは、2016年に富士通、NICT、NTTがIEEE IMS2016に発表した内容を汲んでいる。
 NICTは、2020年9月に、独自の超伝導ホットエレクトロンボロメタミキサ(HEBM)構造、「高感度・広IF帯域ヘテロダイン受信機」を発表しているが、すでにニュースリリースが発表されているためか、こちらには言及がなかったようである。
 これ以外は、国内外のプロジェクト、共同研究などが紹介された。

セッション3

「テラヘルツ通信の長距離化とその応用」は、無線ニーズの現状分析「無線へのニーズの増大と有線との融合の必要性」、「ファイバ無線技術」に加えて、「THz伝送システム」が紹介された。
 THz伝送システムでは、基本的な技術検討と日欧提携研究の取り組みについての説明があった。

セッション4

これは広島大、NICT、パナソニックが、2017 International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)で発表した「シリコンCMOS集積回路を用いて300GHz帯単一チャネル、伝送速度105Gb/s、THz送信機の開発成功」をさらに進めて、「毎秒80ギガビットのデータ伝送を可能にするシリコンCMOS集積回路を用いた300ギガヘルツ帯ワンチップトランシーバの開発に成功」とした最新の研究成果を紹介したものである(International Solid-StateCircuits Conference (ISSCC)2019)。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/04/042-043_terahertz_event_focus.pdf