ハイパースペクトルイメージングシステムによる農産物の等級選別
非破壊的な品質管理システムにより、タバコのブレンド等級の違いを判別することができる。
従来、米国でブレンドされるタバコに使われるタバコの葉は、視覚的、物理的、感覚的特徴に基づいて手作業で検査しなければならず、それは、人的ミスが生じやすく、人件費のかかる処理である。主観を取り除いてこの選別処理の効率化を図るために、米アルトリア社(Altria)の科学者らは、同社のタバコ葉処理施設において、タバコのさまざまなブレンド等級を検証するためのハイパースペクトルイメージングシステムを開発した(図 1)。
収穫して乾燥させたタバコ葉は一般的に、フルキュアド、バーレー、オリエンタルの主に3種類に分類される。栽培地、天候、植物における葉の位置、色、手触りなどの外的要因に基づいて、さらに細かい等級に分類されるが、この処理はこれまで、手作業の検査によって行われていた。アルトリア社は、タバコ選別処理の効率化を図るために、タバコ葉のブレンド等級を検証するための新しいハイパースペクトルイメージングシステムを開発した。同社のシニアサイエンティストであるアムリタ・サフ氏(Amrita Sahu)とその同僚のヘンリー・ダンテ氏(Henry Dante)は、その取り組みが認められて、2016年のJack Nelson In no vator of the Year Awardを受賞している(図 2)。
「このシステムは、米国のバーレー、フルキュアド、オリエンタルという、タバコの3つの主な種類を区別することができる。また、同じ植物の茎の位置の違いも区別できる」とサフ氏は述べた。
このシステムの中で画像取得に使われているのは、米サーフェスオプティクス社(Surface Optics)製の可視近赤外(VNIR)ハイパースペクトルカメラで、中国レノボ社(Lenovo)製のPCとモニターで構成される「ThinkCentre M93p」に接続されている。プッシュブルーム方式のこのラインスキャンカメラは、400〜1000nmのスペクトル範囲、4.69nmの空間分解能、128のスペクトルチャンネルを備える。
120V/250Wのタングステンハロゲンランプ2個が、カメラの上の固定照明として筐体上部に配置されている。冷却ファンによって温度を調整し、両側に1つずつ取り付けられた2つのファンによって負圧レベルを維持することにより、カメラレンズに埃がたまらないようになっている。また、カメラを囲む金属製の覆いには十分に大きな開口部があり、レンズが出し入れしやすく、また、ケーブルの管理や取り外しのためにカメラの裏にアクセスできるようになっている。覆いには、センサの過熱を防いで、画像ノイズを抑える効果もある。
米L3ハリス・ジオスペーシャル社(L3Harris Geospatial)のプログラミング言語であるIDL(Interactive Data Language)で記述されたカスタムソフトウエアにより、カメラによって収集された画像が蓄積される。同社のソフトウエアのバージョン4.5とプログラミング言語IDLによって、画像解析が行われる。
アルトリア社のチームは、3年間のタバコ収穫シーズンを通して、ブレンド等級検証アルゴリズムのトレーニングに使用するデータを収集した。サンプルの画像を取得する前に、白色基準とする米ラブスフェア社(Labsphere)のスペクトラロン(Spectralon)標準反射板(白色)を撮影し、暗電流を記録する。その後、オペレータがタバコのサンプルを筐体内に配置し、520×696の空間サイズで撮影する。前処理として、画像全体をピクセル単位でスキャンし、飽和と陰影を除去する。飽和ピクセルは、各ピクセルの最大値が4096(12ビットセンサの最大値)に等しいかどうかを確認することによって判定する。陰影ピクセルのしきい値は500で、この値は、既知の陰影ピクセルの統計解析に基づいて定められている。
ダークノイズを除去した後、ソフトウエアはメディアンフィルタを適用し
て、特定帯域に存在するあらゆる種類の装置アーティファクトを除去する。続いて、3×3ピクセルブロックのすべてのスペクトルの平均をとり、そのスペクトルを新しい画像に割り当てることにより、元の1/9のサイズに画像を空間的に縮小する。これを行うのは、特性抽出時の演算負荷とノイズを低減するためである。各ピクセルに、次の補正比が乗じられる。
CRは補正比ベクトルで、hとwはそれぞれ高さと幅である。
各ピクセルベクトルの算術平均を計算し、標準リファレンスベクトル(SR)で除算する。SRは、処理の最初に撮影した白色基準の平均である。最後に、単位ベクトル正規化を適用して、各スペクトルの長さを1にする。
システムは画像解析ソフトウエアを使用して、サンプルがラベルどおりの等級に対応しているか、隣接する等級に対応しているか、あるいは、2つ以上離れた等級に対応しているかを表示する(図 3)。ラベルどおりでない場合は、分類異常として判定される。白色基準の撮影はプログラムの初期起動時に行われた後、セッション内で30分おきに行われる。
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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/04/038-040_ft_hyperspectral_imaging.pdf