Laser Focus World誌2020イノベーターズ・アワード

ジョン・ルイス

3年連続でLaser Focus World誌は、イノベーターズ・アワードプログラムを実施した。これは、フォトニクス世界における類例のない、画期的な技術、製品及びシステムを称賛するセレモニーである。
 我々の審査員による公平な評価に基づいて、アワードは、ブロンズ、シルバー、ゴールド及びプラチナという4つの異なるレベルで、製品、技術、アプリケーションあるいは研究と開発において卓越性を実証している、企業や組織に与えられた。
 審査は、新規性や革新性、及び設計者、システムインテグレータあるいはユーザーへの影響に基づいて行われた。また、新しい市場ニーズを満たし、新技術を活用し、生産性を高めたかどうかも評価基準になった。
 3年目となるイノベーターズ・アワードプログラムを記念して、Laser Focus World誌は、全受賞者に対して、2020年10月12日にウエブキャストの式典を行った。本稿では、2020年受賞者グループが、フォトニクスとアプリケーションの最先端について、各社の言葉で製品を紹介する。

プラチナレベル受賞者

レーザ&光源
CARBIDE 80W、BiBurst 800μJレーザ

BiBurstと名付けられた先端レーザ技術は、増強された光と物質の相互作用により工程制御と製造スループットを改善している。脆性材料の穴開けや切断、深掘り、選択アブレーション、体積改質法、隠しマーキング、表面機能構造化、透明柔軟材の加工などのアプリケーションにおける優位性で、この可変GHz及びMHzバースト・イン・バースのバースト機能は、ハイテク製造産業に新たな製造能力をもたらす。例えば、コンシューマエレクトロニクス、集積フォトニクスチップ製造、ステント切断、表面機能化、将来のディスプレイ製造である。比類のない一連の可変パラメータにより、さまざまな機械加工で、工程最適化と柔軟性が可能になる。
リトアニア:ライトコンバージョン社

ライトコンバージョン社

ライトコンバージョン社 のCARBIDE BiBurstレーザ技術

OPTICS
MIRaGE:改良メタマテリアル向け
マルチスケール逆急速群論

MIRaGEは、自然分子がその光学的挙動と特性にどのように影響を与えるかについての分子分光学から発展した科学的知識を利用して、同等の特性を持つメタマテリアルを設計する。化学における分子が電磁気学におけるメタマテリアルと類似していること、振動の分子モードがメタマテリアルにおける、基本共振電流モードと類似していることを比較することで、対称性の原理と群論を電磁気学に変換できる。メタマテリアルの基盤として役立てることで、MIRaGEは、光学特性に関連する異常な電磁気挙動を容易に観察でき
るようになる。
米国:サンディア国立研究所

サンディア国立研究所

サンディア国立研究所のMIRaGEマルチスケール逆急速群論

ディテクタ&イメージング
MV.X埋込ビジョンハイパースペクトルイメージングシステム

従来のカメラと違い、この埋込ビジョンイメージングシステムは、イメージングデータを読み取り、処理するために独立したコンピュータを必要としない。その代わりに、IP67レートエンクロージャ内の小さいが強力なコンピュータと固体メモリがリアルタイムで分類し、GenICam準拠GigEインタフェースで結果を出力する。最新のマシンラーニング技術を使い、MV.Xは、VNIR(400〜1000nm)波長域でハイパースペクトルデータを取得する。それは、加工ラインに沿って見る製品を表している。また、アルゴリズムを使
って、食品、プラスチック、石、木材、織物、塗料・染料・顔料などをスペクトル的に分類し、製品を格安品から高級品まで格付けする。
米国:ヘッドウォール・フォトニクス社

ヘッドウォール・フォトニクス社

ヘッドウォール・フォトニクス社のMV.X埋込ビジョンハイパースペクトルイメージングシステム

ゴールドレベル受賞者

産業レーザシステム
DuraChill可搬再循環チラー

DuraChillの一連の流体と空気への再循環チラーは、画期的な特徴を持つ。エアフィルタの自己交換、フロントフィルタンク、紫外線流体衛生システムを備えており、より高信頼のチラーを実現している。OEMは、全システムに自信をもって組み込むことができる。DuraChillのチラー設計は、作業を簡素化し、場所をとらず、よりシームレスに組み込め、優れたパワー安定性、レーザの長寿命、より一貫したビームプロファイル、サービスコールの低減、平均故障間隔(MTBF)増となる。
米国:ポリサイエンス社

ポリサイエンス社

ポリサイエンス社のDuraChill可搬再循環チラー

ディテクタ&イメージング
ID Qube

スケーラブルID Qube Seriesプラットフォームは、モジュラー設計であり、科学及び産業アプリケーション向けに、複雑なシングルフォトンカウンティングを簡便にし、費用対効果を高める。プラットフォームは、研究者に幅広いディテクタを提供しており、これは、多目的時間相関シングルフォトンカウンティング(TCSPC)エレクトロニク
ス及びID900 Time Controllerと組み合わせて、フォトンカウンティング実験にコンパクトでコスト効果の優れたソリューションを提供する。また、マルチ並行ディテクタを必要とする実験にも拡張性のあるプラットフォームとなっている。
スイス:ID Quantique社

ID Quantique社

ID Quantique社のID Qube Seriesシングルフォトンカウンティングプラットフォーム

ディテクタ&イメージング
FWS-HSI

 ハイパースペクトルイメージング向けフレキシブル波長セレクタ(FWS-HSI)により顕微鏡ユーザーは、既存の顕微鏡を直ちにハイパースペクトルイメージング顕微鏡に変換できる。簡素でコンパクトな可変波長フィルタリングへのアプローチは、モノクロメータの波長チューニングと帯域調整機能を薄膜フィルタのイメージング機能を統合している。これは、照射と画像取得の両方に適している。FWS-HSIによりエンドユーザーは、市場にある既存の可変フィルタリング技術の多用途で効果的な代替を利用できるようになる。
米国:スペクトロライト社

スペクトロライト社

スペクトロライト社のフレキシブル波長セレクタ

レーザ&光源
産業グレード光パラメトリック増幅器I-OPA

この新しいコスト効率の高い、コンパクトで使いやすいチューナブルフェムト秒レーザシステムは、インテグレータが、新規アプリケーションで新たな市場に参入する可能性を作り出す。コンパクトでフレキシブルなモジュールの特徴は3つの波長可変範囲(320〜2600nm、650〜2500nmまたは1350〜10000nm)、<100fsまたは〜250fs出 力パルス幅、2MHz繰り返しレートまでのシングルショット、 40Wまでの励起 パワーである。そのようなレーザ光源に より、病院、生物学研究所で顕微診断マ ルチフォトンイメージングシステムなど の分野で広範囲の利用が可能になる。 材料加工、脆性材料切断、コンシューマエレクトロニクス製造など、堅牢なシ ステムを必要とする産業アプリケーションにも新たな可能性を拓く。
リトアニア:ライトコンバージョン社

ライトコンバージョン社

ライトコンバージョン社のI-OPA産業グレード光パラメトリック増幅器

産業レーザシステム
ハイパーディスクレーザアブレーションシステム

8kWハンドヘルド可搬レーザアプレーションシステムは、特許申請中のHyperDiscオプティックに依拠している。ここでは、ビームスキャナとしてリズリー(Risley)プリズムを使用しており、レーザ出力利用98%を可能にしている。フィールドサービス可能レーザ光源と迅速交換レンズ構成により、スポットサイズの変更が可能になり、置き替えとメンテナンスが簡素化される。市販のレーザ、真空システム、チラー 、制御システム、ロボット及びジェネレータを使い、そのユニットは左手または右手用に、またロボットマウントが容易にできる設計になっている。もしユニットが脱落、あるいは故障した場合、ファイバの迅速交換によりプラグ&プレイ置き替えができる。カート・ユニット統合により柔軟な輸送オプションが可能になっている。トレーラ、トラック、コンテナあるいはAGVがこれには含まれる。
米国:SurClean社

SurClean社

SurClean社のHyperDiscレーザアブレーションシステム

ディテクタ&イメージング
Owl 1280カメラ

他のSWIRカメラと違い、1280×1024 InGaAsセンサ搭載Owl 1280カメラは、可視光全域に広がるスペクトル範囲を持つ。その結果、高感度で全範囲0.4 〜 1.7μmとなり、イメージングすべき対象を広げられる。10×10μmピクセルピッチで、高解像度イメージングが可能になる。読出しノイズは40e-以下、イントラシーンダイナミックレンジは69dBと大きく、シーンの明るい部分と微光部分を同時にとらえることができる。カメラは10 〜 60Hzで機能し、オンボード自動利得制御(AGC)を搭載により、微光から明るい光まで最適コントラスト画像を可能にしている。カメラは、ファンなしで温度安定である。
アイルランド:ラプターフォトニクス社

ラプターフォトニクス社

ラプターフォトニクス社のOwl1280 SWIRカメラ

オプティクス
Ophir IRサーマルイメージング50〜1350mmロングレンジズームレンズ

コンパクトUAVに適した20インチ機上ジンバルに収まる高精度屈曲光学設計に基づき、50〜1350mm f/5.5ズームレンズは、重量やサイズが重視されるアプリケーション向けに設計された最先端の連続ズームレンズである。小ピクセルVGA 及び HD IRカメラに適した設計は、>25kmの検出範囲で回折限界に近い性能を可能にする。これにより、IR監視、国境警備、セキュリティシステム向けのイメージング検出範囲が拡大し、同時に遠隔からガス漏れ、消防活動をサポートする検出や火事の事前検出ができる。
イスラエル:Ophir Optronics Solutions社、MKSグループ

Ophir Optronics Solutions社

Ophir Optronics Solutions社のOphir IRサーマルイメージングロングレンジ 50〜1350mmズームレンズ

OPTICS
Nebular Technology

Nebular Technologyは、ハイパワー
レーザアプリケーション向けの伝統的な薄膜反射防止コーティングの代替となり、サブ波長表面構造を光学部品にエッチングすることで、その技術は従来のコーティングに対して幾多の利点を提供している。これには高いブロードバンド透過やニアバルクレーザ誘起損傷しきい値(LIDT)が含まれる。光学部品に追加の材料を堆積しないので、ナノ構造ARのLIDTは、コーティングしていない基板のAR表面にほぼ等しい。すなわち、ほとんどの従来型コーティングよりも極めて優れており、これは、連続波(CW)からフェムト秒パルスまでのすべてのパルス幅のハイパワーレーザアプリケーションにとって優位性を持っている。
米国:エドモンド・オプティクス社

エドモンド・オプティクス社

エドモンド・オプティクス社のNebular Technology

レーザ&光源
AI-1500

個別の青色ダイオードレーザの出力を統合し、多数のダイオードをまとめて配置する物理的パッケージに結集することで、1500W AI-1500は、標準スキャニングシステムに組込み可能な初の青色レーザとなる。用途は、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、及び金の溶接アプリケーション。そのレーザには2つの基本的な特徴がある。まず450nm付近の発振波長、
次に優れた独自開発設計アプローチによる高輝度である。標準150×150mmスキャナにシームレスに組み込むと、AI1500の11mm-mradビームパラメータ製品は、既存の高速自動加工で、銅溶接向け最適パワー密度となる。
米国:ヌブル社

ヌブル社

ヌブル社のAI-1500ブルーレーザ

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/04/008-015_ft_innovators_awards.pdf