コード化ライトシートにより向上する蛍光立体イメージング

生物は3次元であるにもかかわらず、顕微鏡は2次元の平面を描写するのが本質である。Zスキャン、共焦点、2光子法では3D出力を得られるが、コストと複雑性も伴う。
 ライトシート蛍光顕微鏡(LightSheet Fluorescence Microscopy:LSFM)はイメージング対象物に垂直なオブジェクトの面を照射するが、ライトシートを走査するメカニズムが複雑になりやすく、照射強度が高いと標本が光退色しやすい。これらの問題に取り組んでいる香港大(University of Hong Kong)の研究チームが開発した
新しいアプローチが、コード化ライトシートアレイ顕微鏡(Coded Lightsheet Array Microscopy:CLAM)だ。

非干渉的な立体照射

通常のLSFMにおいてレーザ光源は、サンプルの厚さよりもかなり薄いライトシートを作るように条件として設定される。ライトシート内の蛍光体が励起され、シート外では暗いままである。顕微鏡の対物レンズは、ライトシート面に垂直な方向で光を集める。ライトシートはサンプルを走査し、各面でイメージを集めて3Dモデルを作成する。走査は、複数の異なる機械システムのうちの1つが実行するが、いずれも取得プロセスに膨大な時間を要する。複数の面を同時に照射しようとすると、別々のコヒーレントなライトシートからの干渉が原因であるスペックルによって制限される。
 新たなアプローチは、概念としては単純だ。1つの光源を多数の仮想光源に分割し、お互いに非干渉となるようにする。そして、それぞれの仮想光源が、1つのライトシートを作るよう条件を設定する。これはつまり、サンプル全体に擬似的に薄い均一なシートを作り、円筒レンズを通じてそれぞれに焦点を当てることだ。さらに、これらの各ライトシートごとに、判別可能な一意のコードを刻印する。この一連の薄いシートでサンプル全体を同時に照射すると、被写界深度全体が深度コード化された画像を1回の画像取得で復元する。
 コンセプトを思い描くのは簡単だが、簡単に実装することが課題だった。研究者たちは、できるだけ最もシンプルな光学システムである「合わせ鏡」から着想を得た。合わせ鏡は、比較的小さな傾きを持つ一対の平面鏡である。香港大のポスドクであるユファン・レン氏(Yuxuan Ren)は、有限の発散を持つレーザビームが鏡のペアに入射する方法について、「ペアとなる鏡の内側でジグザグになる」と説明した。最初の光線束のセグメントは「鏡の1つの入射角が正常になるまで反射し、同じ経路をたどってビームレットが逆反射される」(レン氏)。わずかに異なる角度を中心としたビームの別の部分は、通常の入射角になるまで、さらに2回反射する。この方法では、1つの入射ビームから1組のビームレットが生成され、隣接するビームレット間のパス長の差が十分に大きくなることで、お互いに非干渉であることを確認する。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2020/09/008-009_biown_advanced_imaging.pdf