画像のガウシアンノイズを除去するためのフィルタリング手法

アユシュ・ドグラ、アプーラブ・モーリク・シャルマ、バウナ・ゴーヤル、スニール・アグラワル、レヌ・ヴィグ

ブロックマッチングと3Dフィルタリング、非線形平均フィルタリング、シアレット変換の各手法は、イメージのノイズ除去に有効である。

マシンビジョンアプリケーションにおいて、ノイズの多い画像は問題を生む。ノイズを除去するための空間フィルタリング手法は10年以上前から存在するが、平滑化でエッジが維持されない、アーチファクトでグラデーションが反転したりリンギングが生じたりする、シフトにばらつきがあるなどの問題が発生する。
 マシンビジョンやイメージングの処理において、最終的に成功につながる最初のステップは、豊富な情報を含む画像を取得することである。ごま塩ノイズ、インパルスノイズ、スペックルノイズなど、さまざまな種類のノイズが存在するが、デジタルイメージングで最もよく見られるのは、ガウシアンノイズである。デジタルイメージングにおいて、ガウシアンノイズは、低光量条件下での画像取得時のセンサの制約に起因して発生し、可視光センサによるシーンの細部の効率的な取得を難しくする要因となる(図1)。
 数学的には、ガウシアンノイズは、次の二変数のガウス円関数の式によって表すことができる。

数式

 ここで、σxとσyは標準偏差、μxとμyは平均である。標準偏差は平均からの分散を表す。複数の標準偏差値に対する関数値の分布をグラフに示すと、図2のようになる。σ(標準偏差)が大きくなると、関数の最大値が小さくなるだけでなく、平均または期待値とは異なる値の分布範囲も広くなる(4)。
 ブロックマッチングと3Dフィルタリング(BM3D)、非線形平均(Non Linear Means:NLM)フィルタリング、シアレット変換といった新しいフィルタリング手法は、これまでにノイズ除去に用いられていた手法よりも効果的であることが実証されている。空間フィルタリング手法は、画像の空間フィーチャに変更を加えるものである。空間フィルタリングカーネルにより、空間フィルタを簡単に実装することができる。ノイズのある画像に対して平滑化カーネルの畳み込みを行うと、ノイズが除去された画像が生成される。そうしたカーネルの属性に応じて、異なるノイズ除去結果を得ることができる。例えば、ガウスカーネルは、xとyに対して異なる空間値を式に代入することによって得られ(1)、σの値を制御することによって、平滑化レベルを制御することもできる。
 均一な画像平滑化は、プリミティブなフィルタによって生じる主な問題である。それによって、重要な細部が失われるためである(8)。ガウス式にレンジパラメータを導入すると、エッジと輪郭に対する平滑化処理が回避されて、この問題が解決される。しかし、バイラテラルフィルタ(9)と呼ばれるこのフィルタを適用すると、画像にアーチファクトが生じる。ガイデッドフィルタは、それよりも効果的な、エッジ保存の空間フィルタリング手法である。ガイダンス画像を使用するこのフィルタは、一貫したピクセル強度を持つ領域を効果的に平滑化しつつ、ガイダンス画像の助けを借りて重要な細部情報を維持する。このフィルタは、アーチファクトの除去に有効である(10)。アーチファクトを除去しつつ意味的に重要な情報を維持するのに効果的なもう1つのフィルタが、異方性拡散フィルタである。このフィルタは、必要なパラメータ変更を加えた偏微分二次方程式を使用して、平滑化を行う(7)。
 一方、変換は、正規直交フィルタバンクを使用して、画像を低周波数と高周波数のサブバンド画像に分解する。低周波情報には、均一ピクセル強度の領域が含まれ、高周波情報には、画像内に存在するすべてのエッジと輪郭が含まれる。変換は、画像内のエッジや輪郭を複数方向から抽出できるのであれば、情報の分離に有効であると考えられている。例えば、ウェーブレット変換は、水平、垂直、対角の3つの方向で高周波情報を抽出するのに対し、シアレット変換は、複数の方向で情報を抽出する。
 ガウシアンノイズは高周波数に影響を与える。高周波数(細部情報)のサブバンドにしきい値処理を適用すると、ノイズが除去される。画像を変換すると、画像は別のドメインに移されるため、結果として係数が得られる。元のピクセル強度を取得するために、それらの補正係数に逆変換が適用される。これは、その情報分離方法に基づき、ノイズ除去の全体像をより包括的に示す処理である(2)、(11)。
 NLMフィルタリング、加重最小二乗(Weighted Least Square:WLS)フィルタ、BM3Dフィルタリングは、より良い結果を達成するためのさらに高度な方法である。WLSフィルタリングでは、加重最小二乗エネルギー関数を最小化することによって出力を得るため、ノイズのある画像に対してフィルタリングが再帰的に適用される。このフィルタは、ハローアーチファクトの除去に対して高速かつ有効である(13)。

図 1

図 1 左側は、低光量シーンをとらえた画像である。これを拡大した右側の画像は、ガウシアンノイズの影響を示している。

図2

図2 このグラフは、平均を固定(μ=0)して、標準偏差(σ)の値を変えた場合の関数値の分布を示している(4)。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2020/07/014-017_ft_machine_vision.pdf