1550nmライダで持ち上がった安全問題

1550nmは自動車用には、現行世代のシステムで使われている905nm波長よりも本質的に安全であるという広がった仮定について疑問が持ち上がっている。レーザの安全性ではよくあることだが、問題はそれほど単純ではない。場合によっては、1550nmの光のほうが眼の損傷の原因となったり、あるいは、公称値ではより短い波長でカットオフするはずのシリコンセンサで検出されることもある。
 905nm波長は、初期の自動車ライダ用に選択された。パルスダイオードレーザエミッタが直ぐに利用でき、相対的に安価であり、自律走行車に搭載された回転ライダに簡単に適合できるからであった。しかし、目は905nm光を網膜まで透過させるので、目の安全法はその波長での放出の制限を求めている、これは事実上、多くの自動車ライダの距離を100m程度に制限することになる。その範囲は、危険を見分け、街中を20 ~ 30mphで走る自動運転ロボタクシーを止めるには十分であるが、ハイウエイの自動運転車には十分とは考えられない。ライダのその制約と高コストが主因となり、米テスラモーターズ社(Tesla Motors)は同社のAutopilotシステムではライダを使わない。
 目の角膜、レンズ及び房水とガラス体液は、1400nmより長い波長を非常に強く吸収するので、本質的に光は網膜に届かない。また、網膜損傷しきい値は、可視光や近赤外より長い波長でははるかに高い、とレーザ安全コンサルタントであるケン・バラト氏(Ken Barat)は話している。従って、1550nm通信帯のライダは、905nmよりも安全にハイパワーを放出し、測定距離が長くなる。自動車にとってそれは明らかに魅力的ではあるが、1550nmがどんなパワーでも目に安全であるわけではない。1550nmで十分に高出力のレーザパルスは、角膜とレンズに損傷を与えるが、短波長の場合の網膜と比べるとしきい値は高い。角膜とレンズは、網膜ほど傷つきやすくなく、光は、網膜のようには目の中で合焦しないからである。
 自動車ライダのパイオニア、米ベロダイン・ライダー社(Velodyne Lidar)は、同社の905nmライダはClass 1に分類され、どんな条件でも目に損傷を与えることはないと言う。2ミリワットビームが連続的にスキャニングするからである。装置が人の目を掃引するのは約1ミリ秒である。ベロダイン社によると、長波長は大気中の水分で散乱が増えるので、1550nmライダは所定の距離に達するには、よりハイパワーを必要とする。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2020/04/008-009_wn_automotive_lidar.pdf