オンザフライの光学超解像をシンプルなワンステップで

トーマス・ヒューザー、マルセル・ミュラー、アンドレアス・マークヴィルト

電気光学変調器とコンシューマーレベルのグラフィックスカードを用いる新たなアプローチにより、超解像のイメージが瞬時に作成される。

超解像の光学顕微鏡は十分に性能が向上しており、今や商業的に実装されて多く利用されている。しかしながらほとんどの場合、これらのシステムを利用する人は、優れた光学解像度を得
るために代償を払う。すなわち、イメージング処理では通常、従来の顕微鏡イメージングよりも膨大な時間を要する。この欠点に対して近年取り組んでいるのが、独ビーレフェルト大(University of Bielefeld)の研究者らと独ライプニッツ・フォトニクス技術研究所(Leibniz Institute for Photonic Technologies)、独フリードリヒ・シラー大(Friedrich Schiller University)だ。このチームは、オンザフライで即時に超解像イメージを作成する新イメージングシステムを開発している(1)。
 これを実現するため、研究チームは超解像構造化照明顕微鏡法(SR-SIM)を用いた。SR-SIMは、2D実装において(3D実装もある)、約130nmの空間分解能を有する1つの最終イメージを作成するために9ソースの取得を必要とする(図1)。研究者らは自分たちのSR-SIM法をVIGOR(ビデオレートの即時GPU加速のオープンソース再構築)と呼んでいる。

図1

図1 ワンステップの手法は、空間分解能が130nmであるこのような画像を作成する。核(青)、ミトコンドリア(緑)、細胞骨格(マゼンタ)を強調させるために異なる蛍光色素で染色した骨肉腫の生きた細胞を示す。

パターン照射

9ソースのイメージそれぞれに対して、光学顕微鏡が解像できる限界において、周期性をもつ干渉パターンを用いる。このパターンは試料に照射され、事前に塗布した薬剤中の蛍光物質が励起する。空間を照明で満たすために、3つのイメージを異なる位相で、そして60度ずつずらした3つの異なる角度で照射する。パターンを発生させるために、変調可能で2値の光回折格子として空間光変調器(SLM)を用いる。パターンはアルゴン・クリプトン(ArKr)レーザからの直径12mmの平行レーザビームによって照射される(図2)。
 異なる蛍光色チャンネルに対応する3つのsCMOSカメラとつなげた開口数1.45の60倍油浸対物レンズにより、試料のイメージングが可能になる。このセットアップにより(図3)、チーム
は最大で毎秒63フレーム(fps)の超解像蛍光イメージを取得して描写できた。このスピードに到達するため、研究者はイメージ再構築アルゴリズムをカスタマイズし、コンシューマーレベルのグラフィックスカードでランできるようにした。データ転送も含めて再構築処理にかかる時間は、9の原画像から1つのSIMシーケンスに対して約20msだ。
 すべてのSR-SIMセットアップは、シンプルで直感的なオペレーションを可能とするグラフィカル・ユーザー・インタフェース1つを通じて制御できる。プラットフォームは、標準的な広視野蛍光セットアップと似たユーザーエクスペリエンスをもたらす。これは、自動的でリアルタイムなイメージ再構築と描写を統合した設計によるものだ。ユーザーは対象エリアを選択し、それにフォーカスを合わせ、超解像の多色イメージをビデオレート以上のスピードで取得でき、処理が起きている間に他の関係者と経験をシェアできる。

図2

図2 新しい高速な構造化照明顕微鏡法の光学レイアウトには空間光変調器(SLM、英フォース・ディメンジョン・ディスプレイ社(Forth Dimension Displays)のSXGA3DM)が含まれている。SLMは変調可能で2値の光回折格子として機能し、3つの干渉パターンを発生させる。3つの干渉パターン(4分の1波長板、“ピザ”偏光板、フーリエマスク)は異なる位相で3つの異なる角度で試料に照射される。これらのパターンは、アルゴン・クリプトン(ArKr)レーザ(米コヒレント社(Coherent)のInnova 70C)からの直径12mmの平行ビームによって照射される。

図3

図3 迅速なイメージ再構築の実現には、油浸対物レンズ(日オリンパス社(Olympus)のPlanApo 60x/1.45)とsCMOSカメラ(この場合は独PCOAG社)から開始する。これらが取得するデータは、再構築パイプラインを通って堅牢性のために環状バッファにキャッシュされる(後のオフライン分析のためにオプションでデータは保存できる)。研究者は、コンシューマー市場のグラフィクスカード(米エヌビディア社(Nvidia)のGTX 1060)を用いてイメージ再構築アルゴリズムをランさせ、最大63fpsのスピードを実現できた。VIGOR(ビデオレートの即時GPU加速のオープンソース再構築)プロジェクトの詳細はfairSIMプロジェクト(fairsim.org)を通じて自由に入手できる。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2020/04/036-038_bio_live_cell.pdf