材料加工用ダイレクト・ダイオードレーザシステムのパワーと効率

ジョン・ウォレス

レーザダイオードのすべて利点をダイレクト・ダイオードシステムに当てはめる:小型、長寿命、高い電力変換効率

時にはファイバレーザと同じグループに入れられることがあるが、いわゆるダイレクトダイオードレーザは、実際には、まったく違う種類である。ファイバレーザは、エンドポンプあるいはサイドポンプされる利得ファイバで構成されているが、ダイレクトダイオードレーザは、実際上、非利得光ファイバでできている。ファイバに結合された多数のレーザダイオードからの光で満たされているだけである。
 ハイパワー領域では、ファイバレーザとダイレクトダイオードレーサの両方とも材料加工に利用される。ハイパワーファイバレーザは、シングルモードかマルチモード出力のいずれかが可能であるが、ハイパワーダイレクトダイオードシステムは常にマルチモードである。多数のレーザダイオードからの光を結合するオブティクスのエタンデュが、大幅にシングルモード限界を超えるからである。しかし、ダイレクトダイオードメーカーは、継続して、その製品の輝度を向上させている。加えて、材料加工アプリケーションには、シングルモードビームを必要としないものが多い。全部とは言わないが、ほとんどのダイレクトダイオードレーザは、近赤外(NIR)発光である。
 この記事には、今日市場で入手できるダイレクトダイオード製品以上のものは含まれないが、市場にある代表的なサンプルはここに含まれる。

柔軟なビーム特性

1μm程度の近赤外では、シングルモードレーザビームは、ビームパラメータ積(BPP)が0.3mm・mradであり、これはダイレクトダイオードレーザでは達成できない。ダイレクトダイオードレーザのBPPは、数mm・mrad ~数十mm・mradの範囲だからである。例えば、独ツーシックス社(II-VI)は、パワーレベルが数Wからマルチキロワットまでのシステムでさまざまなダイレクトダイオードレーザ製品を製造しており、また多くの種類のシングルレーザダイオードエミッタとバーを製造している。これらは、同社のダイレクトダイオードレーザ製品に使用可能なものである。「低出力から中出力レベルのすべてのシステムは、ツーシックス社独自のシングルエミッタレーザダイオードをベースにしている」と同社ビジネス開発・技術マネージャー、ハロ・フリッチェ氏(Haro Fritsche)は言う。「マルチモード、ハイパワーシングルエミッタを垂直スタックし、偏波ビーム合成を利用することで、6 ~ 15mm・mrad程 度 のBPPは、 パワーレベル300Wまでの小型、伝導冷却アセンブリで実現される。ツーシックス社は、これらのアセンブリをファイバレーザ励起用に広範なファイバピグテールモジュールポートフォリオに統合している。これらのアセンブリは、取り外し可能なファイバを持つ、ターンキーダイレクトダイオードレーザシステムにも組み込まれている。例えば、当社のDirectLight900製品ラインであり、これはハイパワーが達成可能であり、材料加工アプリケーションに最適である」。
 同氏によると、DirectLight900では、ハイパワービームがレーザスタックの波長多重と偏波ビーム結合によって達成される。このアプローチにより、Direct Light900は、100Wか ら1000Wを 超える幅広いパワーレベルで、約6mm・mradのBPPが達成可能になる。すると、フラットトップビームプロファイルが、フリースペースあるいは、コアサイズ100μmまたは200μmのファイバでワークピースに提供できる。波長多重により、これらのシステムは、900 ~ 980nmの範囲の波長で出力する。
 さらなるパワー拡張のためにツーシックス社は、最近DirectLight900製品ラインをハイパワー、波長安定化バーベースモジュールで拡大した。特徴は、フラットトップビームプロファイル、5mm・mradのBPPであると、フリッチェ氏は説明している(図 1)。ベースモジュールは、25nm以下の帯域、1.5kW出力を達成する。これら基本モジュールは、高エネルギーレーザ励起とともに切断や溶接などのダイレクトアプリケーションに使用可能である。波長多重は、ビーム特性をまったく変えることなく、このプラットフォームのパワーレベルをマルチキロワットに拡大する。同氏によると、冷却システムと駆動エレクトロニクスは、これらの製品向けに間もなく入手可能になる。同社は、ハイパワーファイバオプティックケーブルおよびレーザ加工ヘッドなどのビームデリバリ製品も製造している。
 DirectProcess900 FlexShape光エンジンは、フリースペース長方形BPP6mm・mradであり、リモート制御可変ビームシェイパーを実装している。これにより、即時に0.2mmから50mm超まで、長さと幅が個別に調整できる長方形ビームプロファイルが生成できる。このため、その光エンジンは、フリッチェ氏によると、非常に均一なビーム強度プロファイルを維持しながら、長さと幅を調整できる長方形ビームを必要とするアプリケーションで卓越している。「そのシステムは、微小電子部品のハンダづけに最適である。そこでは、かなり長い作動範囲で、0.2 ~ 3mmの比較時小さなスポットサイズを調整する。これらの長い作動範囲は、そのレーザシステムの低BPPにより可能になっている。ワークピース面積は、フラットトップビームプロファイルにより均一に照射される。フレキシブルスポットサイズを利用することで、顧客は、FlexShapeオプションから、すべてのハンダづけ形状に1つのレーザシステムを利用することができる」とフリッチェ氏は説明している。
 800 ~ 1200Wのパワーレベルは、高さ2U、19インチのラックマウントアセンブリで提供される。「そのシステムのもう1つの重要な特徴は、10μs以下という非常に短い立ち上がり、立ち下がり時間である。同時に、ビームでは、極めて均一なパワー分布が維持されているので、このレーザシステムは、多くの熱処理アプリケーションに最適である」と同氏は話している。Direct Process900は、直線偏波も利用可能であり、これは、偏波結合を波長多重で置き換えることで達成される。レーザビーム偏波と切断方向との整合を維持することにより、切断品質とスピードは大幅に増加する。
 「DirectProcess900のようなダイレクトダイオードレーザシステムのもう1つの利点は、ファイバレーザなどの励起レーザシステムと比較すると、一般に900nm ~ 980nmの低い波長、広い帯域で動作可能であり、シリコンやアルミニウムなど、材料によっては吸収率向上が得られることである」とフリッチェ氏は説明している。

図1

図1 II‐VI Direct Process900 FlexShapeの6mm・mradフリースペース長方形BPPでレーザのスポットサイズは0.2mm達成が可能になる。(提供:ツーシックス社)

数十キロワット

ハイパワーダイレクトダイオードレーザシステムの中には、光出力が、ハイエンドファイバレーザに匹敵するものがある。ダイレクトダイオードシステムが、高効率レーザダイオードをベースにしているので、ファイバレーザよりもはるかに電力変換効率が高いからである。
 米レーザーテル社(Lasertel)は、個別材料加工アプリケーション向けに調整されたハイパワーダイレクトダイオードレーザシステムを製造している。同社販売ディレクター、ジョン・ゴーイングス氏(John Goings)によると、光出力は、100Wから50kW以上、またメガワット以上のパルスが可能である。これらのシステムでサポートするアプリケーションに含まれるのは、炭素繊維複合材接合、食品包装、クラッディング、半導体基板加熱である。
 「レーザーテル社のT6レーザダイオードアレイは、最大25kWピークパワー、または2kW平均パワーの構成で、波長760nmから1700nmまで提供可能である。特注コリメーティング、条件付けマイクロオプティクスを加えることで、光エネルギーは、ライン、長方形、その間の何であれ、アプリケーションに特化した作業範囲を加熱するように成形可能である」とゴーイングス氏は話している。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2020/01/p26_pp_direct-diode_lasers.pdf