シリコンフォトニックベースPIC変調器、高密度データセンターインタコネクトに向け増強

ジャンイン ・チョウ

拡張性のあるシリコンフォトニックアーキテクチュアを利用するコスト効率の優れたスモールフォームファクタコヒーレント変調器は、高ボーレートデータセンターインタコネクト需要向けでは、InP、あるいはLiNbO3よりも集積レベルが高くなっている 。

分散型光通信アーキテクチュアとともにメガサイズデータセンターの急増が、チャネルあたり、またファイバあたり大容量のデータセンターインタコネクト(DCI)コヒーレント伝送システムの大きな需要を作り出している。
 DCIリンクは一般に100km以下をカバーし、64Gbaud/16QAM(直交振幅変調)を利用する波長あたり400Gbit/s、あるいは64Gbaud/64QAMを使い600Gbit/sで動作する。間もなく、90Gbaud/32QAMを使う800Gbit/s動作になる。
 これらの高速ネットワーク向けに利用されるコヒーレント変調器は複雑な入れ子型マッハツェンダ変調器(MZM)である。これらは、以下のプラットフォームの1つをベースにした光集積回路(PIC)を利用して作製されている。インジウムリン(InP)、リチウムナイオベート(LiNbO3)あるいはシリコンフォトニクス(SiPho)である。
 これらのプラットフォームのおのおのが、長所と短所を持っているが、InPとLiNbO3は、一般的に、変調性能が高い。しかし、ハイボリュームアプリケーション向けでは、SiPhoがコスト効率のよい、スモールフォームファクタコヒーレント変調器になる。量産、高歩留まり、高信頼の確立された大規模シリコンウエハプロセスを利用することで高収率の光・電気集積が得られるからである。

SiPhoベースPICの例

スモールフォームファクタ、高収率と信頼性の両方だけでなく、SiPhoは高集積化への簡単な経路である。コヒーレントレシーバとコヒーレント変調器を1つのコヒーレント光サブアセンブリ(COSA)に統合することで製造を拡大できる。
 米ネオフォトニクス社(NeoPhotonics)は、キャリア空乏MZMベースインフェーズ直交(IQ)変調器を開発した。これは、85Gbaud/16QAM、及び64Gbaud/ 64QAMを使用して600Gbit/sで動作する(1)。デバイスは、商用SiPho製造プロセスを使って製造された。また、消光比25dB、半波長電圧(Vπ、変調器を透過する光でπの位相変化を誘発するために必要な電圧)は4V、またオンチップ挿入損失7dBを実証している。
 慎重な半導体ドーピングとデバイス設計最適化により、高速電気光応答は、簡素な差動コプレーナ電極構造で達成されている。この性能レベルとチップサイズは、プラガブル400ZRモジュール(400GEthernet標準)とコンパクトな600Gラインカードに適している。

SiPho変調器の課題

シリコン光変調器設計には、InPまたはLiNbO3変調器よりも多くの制約がある。ほとんどの商用SiPho変調器は、キャリア空乏を利用して動作するので、関連のドーパントレベルは複雑な問題になっている。高キャリア濃度は、変調器(低いほうのVπ)の位相シフタ(PS)部分の効率を高めるが、同時に損失も増やす。さらに、ドーパントレベルは、シリーズ抵抗 ・ 容量に、従って帯域にも影響を及ぼす。
 InPやLiNbO3変調器にも適用されることであるが、PS長や電極に関連する無線周波数(RF)についての従来の設計制約に加えて、このような考察すべき事柄がある。帯域と損失のためにデバイス長を短くすると、Vπが悪化する。従って、SiPhoには、InPやLiNbO3変調器よりもバランスをとるトレードオフが多く存在する。
 キャリア空乏進行導波路マッハツェンダ変調器(TW-MZM)は、すべてシリコン材料であるので、商用利用には、最もコスト効率がよいが、高速、高性能SiPho変調器の設計には課題が存在する。性能に影響をおよぼす複数の重要要素に関連するからである。これには、p-n接合、PS、RF進行導波路や終端が含まれる。
 InP及びLiNbO3ベースの従来の変調器と比べると、SiPho変調器は、挿入損失が高い。自由キャリア吸収が強く、相対的に電気光学効果が低いからである。さらに、広帯域と高い変調効率は、光とRF伝搬波の位相整合、RF進行導波路とp-nドーピングと印加電圧に強く依存する端子間のインピーダンス整合が必要である。しかし、従来の分析的等価回路モデルは、キャリア空乏変調器の設計最適化には十分な正確さがない可能性がある。
 ネオフォトニクス社の変調器を設計するために、ハイブリッドモデルが開発された。これは画期的なセグメント法を利用するので、設計者は、電磁モデルと回路モデルを組み合わせて、SiPho進行導波路変調器の分散特性を正確に表示できる(2)。このモデルは、正確さだけでなく、p-n接合効果も含めて、効率的に波動伝搬をシミュレートできる。電気光帯域と変調効率を最大化するために、ドーピング、光学、RFパラメータの最適化により位相とインピーダンス整合が達成される。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2020/01/p22_ft_photonic_integrated_circuits.pdf