ALANコンソーシアムが推進する水中光無線

川尻多加志

最後のデジタルデバイド領域に挑戦。

音波など、限られた手段しか使えない海中を始めとする水中環境は「最後のデジタルデバイド領域」とも言われており、水中環境を生活圏の1つと考えた時、陸上や空間に準じた光無線技術の活用は必須となる。この水中環境をLocal Area Networkと位置付けて、水中光無線技術の研究開発を進めているのが、ALAN(Aqua Local Area Network)コンソーシアムだ。
 同コンソーシアムは、電子情報技術産業協会(JEITA)が、より広範な社会課題の解決に向け、あらゆる産業・業種の企業およびベンチャー企業との「共創」を推進することで新市場創出を促進するために創設した「JEITA共創プログラム」の第1弾として採択された。設立は昨年の6月、代表には2016 年第1回JEITA ベンチャー賞の受賞企業であるトリマティスの代表取締役・島田雄史氏が就いている。

研究開発コンセプトと活動方針

水中光無線技術の研究開発を進める上で、同コンソーシアムでは、すべてを光無線で行うのではなく、音波や有線技術等とのすみ分けによって、より柔軟性のあるネットワークを目指し、基礎レベルから青色を中心とした光無線技術の研究開発を行うとして、まずは水中ライダでの送受信技術のブラッシュアップから行う計画だ。
 そして、水中環境を次世代の新しい経済圏ととらえ、民需に特化した材料、デバイス、機器、システム、ネットワーク開発を推進、開発された技術によって世界をリードし、新たな市場創出や社会課題を解決するとしている。
 同コンソーシアムでは、材料、デバイス、機器、システム、ネットワーク(伝搬路を含む)などの技術・開発企業や研究機関、また水中通信、水中構造物調査、海底資源探査、水中セキュリティ、水中モニタリングなどの事業に関するユーザー企業との意見交換を通じて、水中環境における課題やニーズ等を整理・共有するとしており、水中光無線技術に関連したフォーラム等も開催して、国内外における動向等を発信する計画だ。

新しいビジネス創出を目指して

水中光技術の飛躍的進歩で創出される新ビジネスとしては、まずは海底地形図の作成や水中構造物の点検および海底ケーブル調査を容易にすることで日本のインフラ維持に貢献する海底地形・水中構造物調査が挙げられる。
 また、海沿岸施設や海岸線の監視の他、養殖施設で魚の成長管理を行ったり、水中ロボットからの映像を陸上で視聴する「VR水族館」の実現といった水中モニタリング、さらには、日本近海に賦存が期待されている海中エネルギー資源の探査効率を改善することでエネルギー・資源不足という課題を解決する海洋エネルギー調査なども有力なビジネスとされている。

ワーキンググループ

技術検討を行うワーキンググループ(WG)は、水中LiDAR、水中光無線通信、水中光無線給電、筐体・ロボティクス、水中プラットフォームの5つで構成されており、以下に示す活動を展開する計画だ。水中LiDAR WG:市場ニーズおよび用途からデバイス・機器の仕様化を行い、可視光波長を用いて距離50m、分解能1cm以下のレーザスキャニング技術を開発する(参加団体:トリマティス、浜松ホトニクス、産総研、名城大、千葉工大など)。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/11/046_event_focus.pdf