AIが切り開く科学研究のイメージングの新時代

コンスタンティン・カッペル

今日の光学顕微鏡に大変革をもたらすのは、お決まりの技術ではない。

顕微鏡法の歴史を通じて、徐々に現れていたイノベーションは、劇的な変化においてではなく、着実な向上においてである。技術の発達により生命科学者の研究が根本的にどう変わるかということを見る機会はあまりないが、科学研究のイメージングにおいてある程度の変化が起きているのは確かだ。ブレークスルーとなる発見の前兆だけでない進展が現在起きており、学術研究に対する考え方や取り組み方を永久に変えるかもしれない。この転換を触媒するものは人工知能(AI)だ。特にディープラーニングの性能により、大量の研究画像を包括的に処理し、人間のチームが必要とする時間をまったくかけずに人間を超えた精度をもつようになる(図 1)。
 接続して自発的に協働するスマートイメージング技術と組み合わせることで、AIは研究者最大のボトルネックのいくつかを取り除き、発生生物学やがん研究、神経科学、免疫学などの分野で指数関数的な進展を加速させるであろう新時代を先駆けている。

図1

図1 過去2年間だけで、機械学習は生命科学向けの応用において著しい進展を遂げている。この複雑なマトリックスは AI開発で用いられるツールであり、この進展を証明するものは、生物学の試料における19の細胞小器官を同定するために学習したアルゴリズムの予測精度の報告だ。1つの例を除き、ここにあるすべての対象物を予測でき、ほぼ100%の精度である。

次のフロンティア

わずか数年前、高性能の顕微鏡ですらほとんどは、優れた画像を作成できるツールとして切り離されており、それ自体で答えをもたらすことはできなかった。科学者にできることは、次元を追加するのみだった。しかし現在、多くの他分野と同様に、AIによって善できるインテリジェントなシステムを可能にする。正しいマッピングを理解できるようニューラルネットワークに” 学習” データを人間が提供する必要はまだあるが、一度学習すればアルゴリズムは独自に動作できる(図 2)。近い将来、情報を自動で収集または複雑な環境を自身でナビゲートする方法を機械が学習するにつれて、人間の監督はより簡単になるかもしれない。
 タスクを自動化できるところまで技術が成熟すれば、現在は退屈なタスクに時間を取られていると感じる研究者は劇的に解放されるだろう。ライカ社のPAULAは世界初のパーソナル自動化ラボアシスタントであり、サンプルの連続モニタリングから得られた画像を解析し、変化が生じたときに自動で応答できるデバイスとして開発されている。

図 2

図 2 図 1で示したような学習済みアルゴリズムによって生成された予測により、明確に同定されたクラスタが理想的に形成されるだろう。次元縮小法である t分布型確率的近傍埋め込み法(TSNE)を用いて検証されたこのプロットから明らかである。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/11/042_bio_high-resolution_imaging.pdf