照明設計ソフトウエアで複雑形状を最適化

ジョン・ウォレス

照明設計ソフトウエアは、作り出す複雑なオプティクスや照明フィールドを多様な形でモデル化し、最適化する。

古典的な光学レンズ設計ソフトウエアは、長い年月に著しく能力が向上したが、光学エンジニアが結像系ではなく、非結像系(発光体など)の設計を必要とするとき、その仕事には専用照明光学設計ソフトウエアしか存在しない。そのようなソフトウエア(スタンドアロンアプリケーション、あるいはレンズ設計パッケージの1モジュール)は、ライトパイプ、レンズアレイ、ディフューザ、光源、標準オプティクス、これらすべての組合せの設計を対象としている、必要ならすべてが強い非対称構造に設計できる。また、必要ならカスタマイズされた照明強度や照明パターンも作れる。以下は、市販のさまざまなタイプの照明設計プログラムの例である。

専用アプリケーション

専用の照明設計アプリケーションの一例は、米シノプシス社(Synopsys)のLightToolsである。シノプシス光学ソリューショングループのアプリケーションエンジニアであるスチュアート・デイビッド氏(Stuart David)によると、LightToolsは、仮想プロトタイピング、シミュレーション、最適化、精密照明アプリケーションの写真のようにリアルなレンダリングをサポートしている(図1)。それは、光学的構成要素、例えば光源、レシーバ、ライトパイプ、リフレクタ、レンズ、ディフューザ、プリズム、回折素子、ビームスプリッタを機械的コンポーネントや構造と同じモデル、環境で直接的に示している」とデイビッド氏は話している。「そのソフトウエアは固体モデリング技術を組み込んでいて、光が光学素子、機械的構造を横切る際に、光の光線経路シミュレーションに必要な固有の精度をもっている」。
 アプリケーションに含まれるのは、バックライト付ディスプレイ、照明と照明器具、LEDベース光源、ライトパイプとライトガイド、拡張現実、混合現実、仮想現実(AR/MR/VR)、医療、自動車照明、ライダとリモートセンシングなどである。「LightToolsは最近、Tolerance Managerを発表した。これは、設計者が照明システムの製造性を予測し、製造コストを制御する際に役立つ」とデイビッド氏は指摘している。「その特徴は特に、精密製造を必要とする照明システムに有用である。例えば、LEDベースライトガイド、ライダ、自由形状照明コンポーネントである」。Tolerance Managerにより、設計プロセスの早期に、潜在的な問題領域を洞察することができ、また、すでに製造中のシステムの分析にも使うことができる。
 デイビッド氏によると、LightToolsは、他のシノプシス社のツール、Simpleware(図1)とともに使用して、新しい世代の照明ベースの技術の開発のためにシミュレーションデータを提供することもできる。これには先進的な生体医用診断や処置、AR向けウエアラブルなどが含まれる。
 「Simplewareソフトウエアは、3D画像データ(MRI、CT)可視化、分析向けのソリューションを提 供し、CAD、CAEおよび3Dプリンティングにエクスポートするモデル生成も行う」とシノプシス社のSimplewareグループ事業開発マネージャー 、ケリム・ジェンク氏(Kerim Genc)は説明している。「全体として、SimplewareとLightToolsにより、詳細な人体構造を使いシミュレーションで正確に再現されるように実世界の光学的状況が可能になる」。

図1

図1 これらの自由形状オプティクスは、LightTools(a)で設計された。そのソフトウエアは、照明向け自由形状オプティクスで使用される特注面の製作公差確定に役立つ。頭部モデルは、Synopsys Simplewareソフトウエアを使い、画像データから作成された(b)。Simplewareは、LightToolsとともに使い、生体応用向けの3D解剖学的モデルで詳細な光学状況を実行することができる。

統合パッケージ

イメージングオプティクス設計と同一パッケージにある照明設計例は、米Zemax社のOpticStudioにもある。同社の主席光学エンジニア、池田賢元氏によると、OpticStudioには連続モードと非連続モードの両方がある。連続モードでは、すべての光線伝搬が表面から生ずる。これらは、ローカル座標系を使って位置づけられる。それに対して非連続モードでは、光コンポーネントは、真の3次元物体としてモデル化される表面または固体体積のいずれかである。各物体は、独立したx、y、z座標で、独立に定義された方向により包括的に配置される。
 「特に照明設計では、そのソフトウエアの非連続モードは、連続的光線追跡の制約に代わる非常に柔軟な代替を提供し、多くの照明アプリケーションで必要とされる複雑なモデリングを実行するエンジニアにとっては有用である」(池田氏)。「例えば、電球フィラメント、LEDの放射域は、単純な点光源では十分にモデル化されない設計タイプである。直射日光や周囲の構造物から反射されるもの、その両方が、光源による全般的な照明に加わっている。これは、いわゆる’白色LED’を利用するとき特に複雑になる、その場合、青色の光がLED放射にあり、もっと赤いスペクトル成分が、周囲の非常に大きな蛍光再放射から来るからである。両方の成分は、さまざまな方向に反射、屈折、散乱する。均一な光を作るためにこれらのバランスを取るには、非連続光線を考慮しなければならない、特にアプリケーションの仕様が厳しい場合である」。
 池田氏によると、ライトパイプ伝搬は、このように特別に複雑である。オプティクス「表面」は、実際には非常に複雑な形状が混ざった円筒であり、光は外に出るまでに内部で何回も跳びはねる。「OpticStudioの非連続光線追求機能は、連続的光線追求と同じ制約を受けない。光線は任意の順番で光コンポーネントを通して伝搬できるので、全反射経路の説明がつく」と同氏は付け加えている。
 池田氏が示したOpticStudio設計の一例では、フライアイレンズは白色LEDのスペクトルと空間出力の均一化を意図したものだが、これは均一性ソリューション用に選択されている。
 次に、ソフトウエアの非連続分析ツールを使って、注意深く小型レンズアレイを設置し、レンズ処方を最適化する(図 2)。光学設計の結果は、Optic Studioのカラーディテクタで分析され、人の眼が照明パターンを見ているかのように結果が示される。そのディテクタは、人の眼の明順応反応を真似ているので、ブロードバンド光源に対するシステムの測光(人の眼)反応の知識を必要とする白色光照明システム設計には特に役立つ。結果として得られた照明は、色均一性があり、白色効果が出ており、また均一分布として最適照明になっている。

図 2

図 2 フライアイレンズの光学系は、OpticStudioを用いて設計した(上)。投射光の前(a)と後(b)の表現は、色と均一性の著しい改善を示している。(提供:Zemax社)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/11/032_pp_illumination_optical-design_software.pdf