進歩した半導体レーザによる、効率と信頼性の向上

マティアス・シュレーダー、マルコ・コショレック、アンドレアス・ソス

非はんだ接合部と新しい冷却機構を備えた、パッシブ冷却の高出力半導体レーザは、ハードパルス動作と連続波動作において高い信頼性を示す。

高出力半導体レーザは、産業用レーザ技術の主力製品となっている。すべてのファイバレーザの中核をなし、ディスクレーザやその他の固体レーザの励起に用いられるほか、ダイレクトダイオードレーザとしての利用もますます増加している。
 半導体レーザの開発は、その産業ユーザーの優先順位に従って進行する。主要な性能指標は、ワットあたりコストで表される。半導体レーザはかなり長期間にわたり、商業量と品質の面で絶えず向上しているが、性能面でも新しい応用分野を開拓する重要な進歩があった。そして今でも、特に効率、ピーク出力、輝度、放射波長範囲において、進化し続けている。1kWで60%を超える変換効率や、1cmのバーから1.5kWを超える出力パワーなど、性能面での新たな記録が、学術研究によって達成されている(1)。パッシブ冷却バーから275W出力パワーのさらなる向上には、設計時の複雑な考察が必要である。最も重要な項目だけでも、材料、固体物理学、熱処理、光学系などが挙げられる。また、レーザシステムを最適化して出力パワーを上げることは可能だが、寿命、効率、ビーム品質といった他のパラメータの最適化と切り離して、それを達成することはできない。
 独イエナオプティック社(Jenoptik)は、数十年間に及ぶ研究に基づき、新しいモジュール型半導体レーザを開発した。パッシブ冷却が採用されており、ハードパルス動作(約1秒間隔でレーザのオン/オフを繰り返す周期動作)と連続波(Continuous Wave:CW)動作に適している。400Wを超える出力パワーで試験済みだが(図1)、60%という最大限の出力変換効率と最大限の寿命を確保するために、実際の動作出力レベルは275Wに設定されている。
 出力パワーは、他社の半導体レーザと比較すると2倍以上で、イエナオプティック社の従来の半導体レーザと比べても、40%以上向上している。この進歩は、冷却機構を変えたことに起因する(図2)。この新規設計では、ヒートシンクが実際の排出口よりも大きく、両側から冷却する構造が採用されている。熱伝導過程の数値シミュレーションにより、現実的な条件下での半導体レーザの温度分布が示されている。
 熱負荷が200W(275Wの光学出力パワーに相当)、冷却プレートの熱抵抗が室温で0.05K/Wという条件下で、イエナオプティック社の従来設計では最大で76℃まで温度が上昇したのに対し、新規設計の最大温度はわずか68℃だった。

図1

図1 新しい半導体レーザは、400W以上の出力が可能である。しかし、最大変換効率を達成するために、動作点は約275Wに設定されている。

図2

図2 イエナオプティック社の従来設計(a)と新規設計(b)の半導体レーザの数値解析結果をグラフィック表示したもの。消費電力は200W。従来設計の最大温度が 76℃だったのに対し、新規設計は68℃にとどまった。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/11/026_high-power.pdf