より優れたバイオセンサを期待させる量子技術

バイオセンサは、疾患の診断、多剤耐性菌の同定、伝染病拡大の初期の検出、食品や飲料水中における低濃度の毒素や病原体の検出など、生物医学や公衆衛生上の幅広い問題に対処するツールとして最も期待されているものと考えられている。事実、これらの応用
事例のすべてが、現在の研究課題の目標である。
 しかし、これらの課題に取り組む科学者や工学者は、数多くの困難に直面している。例えば、医療診断の信頼性と効率性を向上するために開発されているバイオセンサは、血液やその他の体液に含まれる病原体の最小量も検出できる感受性が十分でなければならない。同時に、できるだけ早く治療を展開できるように、診断が困難な疾患をリアルタイムに同定できなければならない。
 これら両方の目標を達成することは、現在開発されている技術の範囲を超えているというのが、プロジェクト・バイオセンシング(Project Bio Sensing)の科学者の見解だ。このプロジェクトは、独フラウンホーファー研究機構(Fraunhofer)の2つの研究所と蘭ライデン大(Leiden University)の物理学研究所の共同研究であり、量子技術を採用することで近年のバイオセンサの限界を克服するために立ち上げられた。
 プロジェクト・バイオセンシングは、
DNA安定化金属量子クラスタ(QCDNA)とよばれる、蛍光の生物的ナノマテリアルの新しい分野に注目している。QC-DNAは「量子バイオセンサ」として機能する。最もシンプルな形状では、これらバイオセンサは、6 ~ 15個の金属原子の集団(金属クラスタ)を
包含する短いDNA配列から構成される。DNA配列の選択によって、どの疾患を検出できるかなど、センサの性質が決定される。特定の生体分子を付与することで、量子バイオセンサの基本的な構造を拡張でき、選択されたバイオマーカーを検出できる。金属クラスタの蛍光特性による報告が可能になる。すなわち、目標を検出すると、金属クラスタによる光が放射されて波長がシフトする。本技術の大きな利点は、低コスト製品であることだ。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/11/012_biown_biosensors.pdf