自動車ライダを実用に近づけるモノリシック多チャネルレーザ

アン・ラッセル、ヨチェイ・ダンジガー

4チャネルレーザと超高速ドライバが 、ピークパワー 480Wを超える2nsパルスを出力。

今日のほぼすべての自律走行車の背後にある推進力は、特別なハイパワーレーザ駆動ライダ(光検知測距)システムである。ライダは、赤外レーザを特徴としており、周辺環境のリアルタイム、3D画像を作ることで自律走行車の
進路を決める。パルスレーザは、シングルピクセルセンサ、あるいは飛行時間法(TOF)カメラを使うハイパワーレーザフラッシュ照明と同調して3D画像生成に利用される。システムは、自律走行車から対象物へ、また車輌に戻るレーザ光の伝搬時間を計測する。
 レーザパワーの増加により、3Dマップはより多くの物体や背景を一層長い距離からとらえることができる。この点は、ライダメーカーにとって魅力的な特徴である。しかし、アイセーフティが一番の関心事であるので、極短パルスが重要である。高速パルス(1秒に100万回以上)でデータポイントが増加し信号品質が向上する。信号対雑音比(SNR)は平方根に比例する、その結果、高速の立上り立ち下がり時間が重要である。先頃、米オスラム社(Osram)と加GaNシステムズ社(GaN Sysems)は共同で、チャネルあたり120Wのライダレーザパワーを発売した。これは、4チャネルSMTパッケージで、ピークパワーは>480W、約2ns半値全幅(FWHM)パルス、<1ns立上り立ち下がり時間である(図1)。

図1

図1 この 905nm4チャネル表面実装レーザはピークパワー >480W

905nmモノリシック定間隔の理由

ライダの進化に伴い、2つの重要な主要波長が現れた。905nmと1550nmである。両方とも強みがある。905nmはCMOSあるいは他のシリコンディテクタで検出可能であり、その結果、コストと複雑さが大幅に低減される。シリ
コン光電増倍管(SiPMs)、また最終的に はInGaAsディテクタが、一般に1550nmのディテクタに使用されるが、自動車品質認定で必要とされる温度105℃が現在の大きな課題である。アイセーフティの懸念は、1550nmでは大幅に低減される。とはいえ、先頃CES2019(1)で見られたように、コンシューマー DLSR(Digital Single Lens Reflex)カメラのセンサダメージが観察された。これが起こったのは、一般的なキロワットレベルの光エネルギーを使っている時である。エネルギーレベルは、まだ低すぎる、というのは、もっと高いエネルギー密度に達するために必要とされるトリプルジャンクション構成は、そのワイドバンドギャップ結晶構造ではまだ実行されていないからである。自律運転環境(表1)(2)の一部である霧、雪、雨には、1550nmでは光パワーの高吸収も観察される。また、多チャネルレーザが非常に望ましい。個別に発振する8個のレーザを利用すると、分解能1%、つまり15cmステップとなる。それに対して、最小振幅とダイナミックレンジは、1ns TOF利用で、約18dBである。明らかに、ナノ秒パルスの905nm多チャネルハイパワーライダレーザの利用に大きな優位性がある。
 オスラム社の905nm表面実装チップは、4個の個別InGaAs/GaAs歪量子井戸レーザのモノリシックアレイ。これは個別にも、同時にも駆動でき、V溝で分離されているので、アレイ内で光クロストークは存在しない。同時駆動時には、4チャネル出力は、統合して1個のハイパワー 480Wレーザパルスのようになる(図2)。フォトダイオード応答R(λ)の定義は、入射光パワー(PLight)に対する光電流発生率(IDP)である。ここでは、入射パルス幅計測にInGaAsフォトディテクタ(Thorlabs DET08)を使用。所定波長で入射光パワーは、次のように定義されている。

数式

ジュールで計測した光パワー(パルスあたり光エネルギー量は、Ophir PD10-Cを用いて、~1.2μJ)および図2(FWHMで、~ 2ns)で以前に見た波形の利用により、ピークパワーは、以下の式で計算できる。

数式

パルスあたりのジュールは、パルス時間に対する合計出力電圧で除して、ピーク光エネルギーを得る。

数式

各レーザは、GaAs基板に成長された3シングルキャビティ(トリプルジャンクション)であり、4チャネル同時に160Aの電流が印可されるときに、チャネルあたり120Wとなる。レーザダイオードは、リードのないラミネートキャリア基板上にマウントされている。これはハイパワーパルス発振中に冷却を行う優れた熱管理のためである。封止材料は、成形エポキシ樹脂である。これは量産に適しており、壊れやすいレーザ端面を保護する頑丈な自動車品質認定に耐久性のあるプロテクションとなっている。表面実装パッケージは、基準面への制御されたダイ位置決めを利用して設置できる量産品である。
 4チャネルはモノリシックであるので、チャネル間隔とアライメントは、標準リソグラフィとマスキングプロセスを用いて、マイクロメートルレベルの位置決めでコントロールされている。レーザの設計は、立上り立ち下がり時間が<1nsとなっている。しかし、駆動 回路レイアウトとパッケージインダク タンスが、重要な役割を担うので、大きな課題となり得る。

図2

図2 GaNシステムによるハイパワーレーザドライバで 、オスラム社のレーザの全4チャネルからのピーク光出力は 、同時発振時480Wが可能である 。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/11/016_lasers_for_lidar.pdf