革新的な光ファイバ応用を照らし出す

セアド・ドリック

最先端の生体医学への応用を可能にする細径のファイバベースの照射システムには、新型の光源が必要である。

細径の光ファイバによって、光遺伝学、二光子顕微鏡、硝子体網膜手術など最先端の生体医学への応用が可能となっている。しかしながら、これらの細径ファイバに十分な光を誘導することには、新型の光源を必要とする。効果的な光学設計と合わせて、レーザダイオードがこの役目を果たし得るものであり、生体医学や生命科学だけでなく、多くの他分野でも応用される。

従来の光ファイバ照射

 一般的な光ファイバ照射システムは、一次光源と二次光源(「一次光源と二次光源」を参照)、光ファイバレセプタクル、それらの間にある光学系、そしてパッシブまたはアクティブな冷却と電子回路を有する機械的筐体から構成される。
 光源の主な光学パラメータは、エミッタサイズ、角度強度分布、発光スペクトルプロファイルだ。他の重要なパラメータには、起動時間、直接変調が可能なこと、ウォールプラグ効率、寿命、目への安全性がある。
 巨大なエミッタでは、良いコリメーションを実現するために巨大なレンズが必要であり、狭いエリアへの照射や細径の光ファイバにおいては非効率だ。光源の進歩は、エミッタ面積サイズの縮小と角度強度分布の減少に直接関連するといわれている。歴史的には、ろうそく、エジソン電球、ナトリウムランプ、2〜3cmサイズのランプ(キセノンランプなど)、1mm四方サイズのLED、1×5μmサイズのレーザダイオードと存在した。エミッタサイズは光源の重要なパラメータであるにもかかわらず、しばしば製造者は公表しないか明記しないでいる。
 角度強度分布は、遠視野放射パターン、極性放射パターン、遠視野強度分布ともいわれている。ろうそくや電球のようなかつての光源は、無指向性の角度強度分布を示す。LEDやレーザダイオードが登場するまで、限定された遠視野放射パターンを持つものはなかった。より狭い角度強度分布拡散により、コリメーションや集束においてより多くの光を光学的に捕獲しやすくなった。一次光学シミュレーションでは、角度強度分布の半値全幅(FWHM)拡散を考慮するのに十分である。FWHMの角拡散は、レーザダイオード製造者が広く用いている。これと比較して、より複雑な形状を持つ他の一次光源の角度強度分布では、十分に使いこなすことがさらに難しい。
 白熱電球や他のランプは、スペクトルプロファイルやスペクトルパワー分布を大きく変え得る広帯域幅のスペクトルを持つ。LEDはピーク放射波長付近で約50nmの狭い帯域幅をもち、さらにレーザダイオードはわずか数nmの非常に狭い放射帯域幅を持つ。
 光学的に関連するレセプタクルのパラメータには、サイズ、受光角、反射性がある。レセプタクルの構成には、単心光ファイバ、光ファイババンドル、リキッドライトガイドがある。レセプタクルの直径は、シングルモード光ファイバが数ミクロン、マルチモードファイバが数百ミクロン、光ファイババンドルが数ミリメートル、リキッドライトガイドなら通常5mmだ。
 シングルモードファイバを例外として、受光角は通常60°以上である。反射防止コーティングのないレセプタクル表面の反射性は入射角とともに増加する。ただし、光がすべて伝搬されたときにおけるブリュースター角でのp偏光は除く。

光ファイバ系におけるトレードオフ

ラグランジェ不変量では、エミッタサイズとその角度強度拡散(エタンジェ)が光放射表面から光学系の画像表面まで一定であることを述べている。もし、光源が受容器より大きいエタンジェを有していれば、放射光の一部は必然的に損失となる。光学系の拡大によってエミッタサイズが縮小すれば角拡散が増加し、逆も然りである。残念ながら、従来の光源のエミッタサイズとエタンジェは、限られた開口数の細径光ファイバのものよりはるかに大きい(図1)。
 従来のランプと組み合わせた光ファイバの照射システムは非効率的で巨大であり、複雑な光学やフィルタを有し、径が大きい光ファイバや液体ライトガイドにのみ適している。細径の光ファイバにより効率良く光を誘導するには、より小さなエタンジェ、少なくともより小さいエミッタサイズを持つ新しい一次光源と二次光源が必要となる。
 径の大きい光ファイバの照射システムにおいて特定の色を持つLEDを使用することは、比較的小さなエミッタと調整のしやすさなどのおかげで従来の光源から向上が見られる。しかしながら、LEDはさほど明るくなく、細径の光ファイバへの誘導は効率が悪い。加えて、波長選択が限られている。
 蛍光の被覆層を持つ窒化ガリウムLEDは、スペクトル的により広い「白色」光の照射をもたらす。それにもかかわらず、単色LEDと同じ理由で細径ファイバへの誘導には適していない。
 レーザダイオードは比較的小さなエタンジェとエミッタ(厚さは1μm未満、長さは数ミクロンから数百ミクロン)をもち、波長板の「速軸」方向ではビーム広がりが最大70°、「遅軸」方向ではわずか12 °である。 青 色LEDの100〜1000倍の光出力をサポートする。コヒーレント光の明るい光源をもたらす細径ファイバに、レーザダイオード、レーザダイオードバーやアレイを誘導するためのさまざまな実用的ソリューションがある。難点は、スペックル、狭いスペクトル帯域幅、限られた波長選択だ。

図1

図1 光ファイバに光源を誘導する際、白熱電球では効率が悪く、Ce:YAG 結晶の輝点であれば効率が良い。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/09/D_042-045_bio_illumination-1.pdf