レーザ誘起電子雪崩崩壊を使い放射性物質を遠隔検出

米メリーランド大の物理学者は、放射性物質を遠隔検出する新しいレーザベースの方法を開発した(1)。物質近傍で電子アバランシェブレークダウン(雪崩崩壊)の誘起に赤外(IR)レーザビームを利用することに基づいており、その新技術は遮蔽された物質を遠隔から検出することができる。中赤外(3.9μm)レーザが空気中でアバランシェブレークダウンを誘起するが、これは放射能によって生まれる電離「シード」に感度がある。その方法は、放射性物質の近傍であることを必要とする現在の技術を改善する。
 極めて簡素なバージョンでは、結果はON/OFF検出感度である。研究者は、より高度なバージョンも開発している。これはアバランシェの時間的始まりのシフトを計測し、それを放射能源からの電離度に関連付ける。
 「従来の検出法は、放射能崩壊粒子のディテクタとの直接的相互作用に依存している」と、同大の物理学院生、ロバート・シュヴァルツ氏(Robert Schwartz)は言う。「これらの方法はすべて、距離とともに感度が低下する。我々の方法の利点は、本質的に遠隔プロセスであることだ。さらなる開発が進めば、サッカー場の距離から箱の中の放射性物質を検出することができるようになる」。
 放射性物質は、崩壊粒子を放出するので、その粒子が空気中の原子近傍から電子を剥ぎ取り、少数の自由電子が生まれ、これらは直ちに酸素分子に付着する。中赤外ビームこのエリアに集光することにより、シュヴァルツ氏とその同僚は、酸素分子からこれらの電子を容易に引き離し、アバランシェブレークダウンを起こす。これは比較的容易に検出される(図1)。

図1

図1 放射能の遠隔検出のためのレーザベースの計測装置は 、中赤外(mid-IR)レーザを使って空気中にアバランシェブレークダウンを誘起するが 、放射能が存在するときだけでなく 、プローブビームはブレークダウンを検出する 。設定では 、3.9μmパルスポンプレーザビームが 、1.45μmチャープパルスプローブレーザビーム(両方とも光パラメトリック増幅器で生成され 、したがって 、相互にパワーに比例している)とともに伝播し、ビームスプリッタ1を透過してプローブ光の一部を参照フォトディテクタ1に送る 。集光レンズ1により集光されるポンプ光で引き起こされ 、ポロニウム源からのイオン化放射がアバランシェ電離を起こす(黄色のスパーク)。ブレークダウン速度は 、放射能濃度に比例する 。プラズマ密度の増加が 、ブレークダウン後のチャーププローブ光を阻止し(このバージョンでは 、ブレークダウン速度は放射能濃度に比例する)、検出され 、分光計で計測される 。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/07/wn_remote-sensing.pdf