自動運転を加速させる光センシング技術

川尻 多加志

光波センシング技術研究会、第63回講演会を開催

注目を集める自動運転。自動車メ
ーカー間では、合従連衡の動きを絡めつつ、生き残りをかけた熾烈な研究開発競争が繰り広げられている。我が国の自動車産業は、貿易収支という面から見ても、日本経済を支える重要な基幹産業だ。自動運転技術の実用化で世界をリードできるかは、今後の国力をも左右する。このような状況の中、光センシング技術は自動運転におけるキーテクノロジーの1つと言われており、各方面から注目を集めているのが現状だ。
 6月11日(火)と12日(水)の両日、東京都新宿区の東京理科大・森戸記念館において「自動運転技術における光センシング」をテーマに、応用物理学会・光波センシング技術研究会(委員長:室蘭工業大教授・相津佳永氏)が第63回の講演会を開催した。講演会の参加者は一般参加も多く、合わせて約80名にも及び、自動運転と光センシング技術への関心の高さがうかがわれるものであった。

光波センシング技術研究会

光波センシング技術研究会(Lightwave Sensing Technology Professional Group: LST )は、1985年に設立された光ファイバセンサ研究会を母体として、1988年新たに発展的な形で設立された研究会だ。光応用計測技術や光センシング技術およびそれらを支える周辺技術の研究の発展を目指し、年2回(6月と12月)の講演会開催や春または秋の応用物理学会でのシンポジウム開催など、積極的に活動を行っている。
 同研究会の具体的な研究領域は、ファイバジャイロや構造物のヘルスモニタリングに代表される光ファイバセンサ技術、レーザ光の干渉・回折・偏光・散乱などを利用した精密計測技術や2次元/ 3次元計測技術、各種物質や材料の光学的評価技術、顕微鏡や光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を始めとする生体計測技術、超短光パルスを応用した測定技術、光源や光計測用デバイスなど、幅広い光応用計測技術が対象となっている。
 産業の高度化や生活の多様化、社会経済のグローバル化が急速に進む昨今、信頼できる情報を正確に取得して分析・対応するためには、高度なセンシング技術が重要になる。さらには、災害救助や交通輸送障害の復旧、それらの予知・予防と安全対策、産業の効率化と自動化、そして医療分野における早期診断や健康管理に至るまで、さまざまな状況においてAIやデータベース、IoT等の新たな進展と活用の動きが活発化している。
 同研究会では、高い精度を持つ光計測技術の役割はますます重要になっており、光波の持つ波長、位相、振幅、偏光、非線形性等の基本となる物理的性質に立ち返り、精度、確度、速度、スケールの限界に挑戦していくことが、さらなる発展の礎になると述べている。

自動運転と光センシング

自動運転技術は急速に進歩を遂げている。自動運転では、人間に代わって認知、判断、操作を行うことが求められており、認知にはライダやステレオカメラなど、さまざまな光センシング技術が用いられている。
 今回の講演会では、認知のための光センサ、センサで取得した情報処理技術、センサ間ネットワークなど、車両のみならず道路や信号などのインフラを含めた自動運転システムで使用される技術にスポットライトを当てて、8件の招待講演が行われた。
 また、一般講演論文では自動運転技術に関連する話題に限らず、MEMS­VCSELやブリルアン光相関領域解析法を用いた分布型光ファイバセンサ、光センシングを用いた水位計測、内面形状計測、生体計測、放射線計測など、16件のオリジナル論文が発表された。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/07/event_focus.pdf