オールファイバビーム品質調整力を持つファイバレーザ

ダーフ・A.V.クライナ、ロジャー・L.ファロー、ブライアン・ビクター

新開発のファイバレーザは、オールファイバ機構を利用してレーザ出力ファイバから直接ビーム特性をリアルタイム調整する。

レーザは、材料加工、製造、センシング、防衛、科学的アプリケーションに不可欠のツールになっている。この成功は、いくつかの領域でレーザの性能が向上したからである。平均パワーやピークパワー 、波長集束、時間的な多様性(パルス幅と周波数、精巧な波形)、効率、出力安定性、長期信頼性、保守要件、運用コストの改善である。
 ファイバレーザは、これらの進歩のいくつかを可能にする点で特に重要であり、現在、大量生産を必要とする産業、微細加工アプリケーションの多くで優位を占めている。その持ち前の効率と信頼性に加えて、ファイバレーザは、当然、加工ヘッドへのファイバデリバリが可能であり、レーザや工作機械のフリースペースオプティクスの負荷を最小化する。
 上のレーザ特性と対照的に、従来レーザのビーム空間特性は、相対的に最適化されておらず、柔軟ではない。アプリケーションによっては、回折限界ビーム品質(ガウシアン空間プロファイルに近いM2≈1)を必要とするものがある。一方、より低いビーム品質や異なるビーム形状(近視野空間プロファイル)、発散プロファイル、伝搬特性を必要とするものもある。

ビーム品質調整が必要とされる理由

例えば、金属切断(最大の産業アプリケーション)では、相対的に高ビーム品質のスモールビームが薄い材料では最高速度となるが、最大厚は、結果的に小切断カーフの制約を受けることになる。それが溶融物の放出を阻害するからである。より大きくて分散が大きなビーム(ビーム品質低下)により、厚板の切断が可能になるが、薄板にはスピードペナルティが付随する。溶接では、厚い接続の場合、高ビーム品質によって深い溶け込み「キーホール」溶接となり、生産性が最大化する。それに対して、より大きくて低ビーム品質のスポットは、薄い部品で滑らかできれいな溶接のための浅い伝導溶接となる。さらに、特殊なビーム形状は、ワークピースの熱溶着と温度勾配に影響を与える。ガウシアンビームと違い、フラットトップビームは、均一照射により加工の過不足を防ぎ、円環形、つまりドーナツ形状のビームは、アプリケーションによっては加工品質を改善することが知られている。
 ほとんどのレーザは、固定ビーム特性である。ビームは、屈折、反射、回折光学系により異なるフォーマットに変更可能である。固定ビームシステムのレーザベースの加工装置は、限られた範囲の加工、材料にしか対処できないので、妥協の性能、つまり制限的なジョッブミックスとなる。例えば、小ビームの金属切断装置は、厚板を切断することはできない、それに対して、大きなビームの加工装置は薄板の切断では、経済的ではない。
 ビーム特性の可変性は、プロセス最適化と装置の多様性を実現するには、極めて望ましい。一定レベルのビーム調整ができるさまざまなアプローチが開発されている。ズームレンズ、取替可能な回折光学素子、デフォーマブルミラー 、ビームコンバイナ、(ファイバデリバリレーザ用)ファイバとファイバのカプラや、電動オプティクスを持つスイッチなどである。これらのフリースペース光学アプローチには、いくつかの欠点がある。

・ミスアラインメント、汚染、環境条件(温度、振動)の影響を受けやすい。
・システムコストと複雑性の増大。
・光損失。
・ハイパワーアプリケーションでは熱レンズが、ビーム品質や焦点位置に、パワーに依存した変化を起こす。
・ズームレンズの場合、加工ヘッドのサイズと重量が増加する。

 フリースペースオプティクスに固有の問題に対処するために、ファイバベースのビームコンバイナを利用して、限定的なビームチューナビリティが実現されている。こうしたシステムでは、フィーディングファイバが一般に、センターコアおよび環円コアで構成されており、溶融ファイバコンバイナにより、これら2つのコアに異なるレーザが入力される。このアプローチは、フリースペースオプティクスを除去するという利点はあるが、他の欠点が出る。

・ビーム設定の1つを除いて、すべてにおいて全レーザ出力を利用できないので、大幅なコスト増を招く。すなわち、エンドユーザーは、そのプロセスで一般的に利用するよりも多くのレーザパワーを購入せざるを得ない。
・領域間でパワーを分割すると「融通が利かず」、異なるプロセス、材料に対応するために変更できず、したがって加工装置の多様性が制限される。
・利用できるビーム形状は限られている。例えば、このアプローチでは、1つの円環ビームサイズと形状しか利用できない。違う円環ビームを利用するには、ズームレンズ、もしくは他のオプティクスの追加が必要になり、ビーム統合技術の当初の利点を台無しにすることになる。

 ビーム調整のために利用できるオプションは、加工装置の複雑さ、コスト、性能、多様性、信頼性で大きな妥協を必要とするので、ほとんどのレーザベース加工装置は、依然として固定ビームを利用している。

オールファイバ可変ビーム品質

米エヌライト社(nLIGHT)は先頃、Coronaという新しいファイバレーザを発売した。これは、マルチキロワットレベルで素早くビーム品質を可変できる。このファイバレーザは、新しいオールファイバ技術を利用して、レーザ出力ファイバから直接に、幅広いビーム形状とサイズを供給する。いくつかのCorona対応金属切断装置を、大手の工作機械インテグレーターが発表している。Coronaファイバレーザは現在、出力3 ~ 4kWが利用可能であり、14kWまでが実証されている。
 Coronaファイバレーザは、オールファイバ機構によりビーム品質を調整できる。これには、以下のコンポーネントが含まれる。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/07/ft_high-power.pdf