ステファン・トレーガー氏にインタビュー「イエナオプティック社は将来への発展の重要な局面を迎えている」

アンドレアス・ソス

ステファン・トレーガー氏

イエナオプティック社の社長兼最高経営責任者であるステファン・トレーガー氏は、2016年12月にイエナに本社を置くイエナオプティック社のトップに就任する前は、独ツァイス社(ZEISS)、米ダナハーグループのライカマイクロシステムズ社(Leica Microsystems)に勤務。(写真提供:フラウンホーファー IOF、ウォルター・オッペル氏)

独イエナオプティック社(Jenoptik)は2018年の収益予測を上方修正した。上方修正は今期2回目となり、同社の中核であるフォトニクスソリューションおよびメカトロニクスソリューション市場において、好調な業績を上げている。寄稿編集者のアンドレアス・ソスがイエナオプティック社のCEOステファン・トレーガー博士(Stefan Traeger)にイエナオプティックのストラテジー 2022と企業体制変更後の戦略についてインタビューした。

―イエナオプティック社にとってどんな年だったか。そして、2019年の見通しについてお話を伺いたい。

2018年は、当社にとって全体を通して強力な市場のおかげで、業績を伸ばしている。半導体業界の追い風も依然として吹き続いており、バイオフォトニクスやヘルスケア、ライフサイエンス分野の需要も急速に増加している。
 2019年のビジネスの見通しは、予測が少し困難だ。当社が行っている分析では、まだ下降の兆しは見えてない。当社のビジネスは好調で、顧客と話していて感じるのは、依然として楽観的な話が多いということだ。しかしながら、関税と保護貿易主義の議論が激化すると、実際に問題を目にすることになる恐れがある。我々は自由貿易を信じており、自由貿易に依存している。

―イエナオプティック社は、大幅な戦略変更を今年初めに発表した。この変更についてもう少し話を聞きたい。なぜこのような変更が必要だったのか。

当社は「光分野への注力(More Light)」という見出しで戦略をまとめている。この戦略は主に3つの要素で構成されている。会社全体のために「より焦点を当てる」、そして「さらなるイノベーション」、「国際化の推進」とい
う点を掲げている。
 今日イエナオプティック社は、比較的には多角経営の複合企業となっているが、この多角経営の複合企業から焦点を絞った技術グループに変わっていきたいと考えている。結局のところ当社のコア技術は光学とフォトニクスであり、この2つに焦点を置いていく。
 なぜこのような戦略を取っているのか。現在、当社は市場で数々の成功を収めている。しかし、過去を振り返ると、当社にとっていつも容易であったわけではない。この10年間に困難な課題に直面することもあった。当社が本当に生き延びられるかどうか明確でない時もあった。しかし、それは過去の話だ。当社の現在の財務基盤は強固だ。つまり、資金力がありもちろん事業の成長のための投資意欲も持っている。私に言わせれば、イエナオプティック社は今まさにこれまでにない正念場を迎えている。
 戦略の変更を行い、強力な地位を築いているということを考慮し、事業の成長に投資し、当社を次のレベルに引き上げたいと考えている。しかし、これまでと同様の厳格さで同時にすべてを成し遂げることができるとは思っていない。だからこそ、実際に当社の得意とする分野、要である光学とフォトニクス技術に焦点を置く必要がある。

―会社を2つの分野に分けた。1つは光学、もう1つは光学以外の分野。これについてもう少し説明してほしい。

ごく最近メカトロニクス事業において、VINCORIONという新しいブランドを立ち上げた。光学事業と主に国防と航空宇宙関係が顧客であるメカトロニクス事業間の相乗効果を見つける必要があった。この2つの事業には大きな違いがある。異なる市場で運営され、規則や規制も異なり、考え方にも違いがある。

―その事業売却を考えているか。

積極的に処分する計画はない。しかし、将来的にその考えをはっきりと除外するつもりはない。

―フォトニクス事業については、近い将来、どの市場に力を入れていきたいと考えているか。またどのように実行するのか。

 「光分野と光学分野」と呼んでいる当社のOEMビジネスのなかで、半導体の製造機器、バイオフォトニクス、工業、データ・通信環境関連の顧客をこれまで以上に重要視していこうと考えている。
 当社の新しい部署「光製品部」では、引き続き自動車分野に焦点を置いていく。しかし、将来、この事業に隣接する分野へも手を広げていきたいと考えている。そして、もちろん当社の「光分野と安全分野」に関する事業において、顧客と共に道路と地域社会の安全に重点的に取り組んでいく。

―使う共通の戦略はあるか。

光学とフォトニクスは、異なる業界で幅広く使われ、多くの異なるサブセグメントに分割されており、かなり広い分野に広がっている。私としては、技術の差別化によりプレミアム価格をもたらす部門に注力するのが当社にとって、一番良いのではないかと考えている。コモディティ化した製品というのは、当社の得意とするところではない。

―イエナまたはドイツの他の地域で活躍する貴社の有能なスタッフが手がける製品のなかで、際立つ製品を1つ例として挙げてほしい。イエナは光の科学が盛んなことで古くから知られているが、イエナオプティック社は確かドイツの各地また世界中にある 1ダース近い数の工場を買収し、非常に優秀な人材も獲得していることをここで述べておくべきだと思う。そして、この優秀な人材は、一般的な商品ではなく技術進歩の開発を進めていく上で際立つ人たちだ。

その通りだ。例えば、半導体産業への当社の貢献について考えてみてほしい。半導体の製造施設のためにイエナやドレスデンはもちろん、ドイツの他数カ所で開発し製造したセンサや機器は他社に負けない製品だ。私が知る限り、このレベルで必要とされる技術を備え付けている企業はほんの数社だ。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/05/044-046_business_forum.pdf