2018年度出荷額 、生産額ともマイナス成長の見込み

井上 憲人

光産業技術振興協会(光協会)は、光産業動向調査委員会を設置して調査を実施し、2018年度の調査結果をまとめた。今回の調査結果の注目点は、2018年度光機器・装置、光部品、これらの合計ともマイナス成長と見込まれることである 。2ケタ成長が見込める分野としては 、レーザ・光加工分野のみとなっている。また、市場が 40GbEから100GbE/25GbEに移ったことから、大きな成長が期待されていた光伝送用部品は、価格低下や在庫積み増しの影響とも考えられるが、期待ほどの成長は見込めないようである。情報記録分野、入出力分野、太陽光発電分野は、前年度同様、下降トレンドとなっている。光協会の認識では、太陽光発電分野は、「下げ止まった 」ということらしいが、FITが下がり続け(2019年度から14円 /kWh、さらに7円 /kWhが目標)、「ポストFIT」が議論されるようになっている現状で 、はたして「下げ止まった」と言えるかは疑問である。以下では、出荷額に重点を置き見ていく。

調査の方法と概要

アンケート調査は、2018年10月に280社に対してアンケート調査票を発送し、2018年12月から2019年2月に回収することで実施。101社から回答を得た(回答率36%)。
 太陽光発電分野は太陽光発電協会(JPEA)、固体照明分野は日本照明工業会(JLMA)、ディスプレイ分野は電子情報技術産業協会(JEITA)、入出力分野はカメラ映像機器工業会(CIPA)及び富士キメラ総研の協力を得ている。
 まず、2017年度実績、2018年度見込み、2019年度予測の概要について光協会の説明を見ておこう。
 2017年度全出荷額(実績)は、14兆451億円、成長率+0.8%。2017年度国内生産額(実績)は7兆3895億円、成長率▲6.1% 。好調な分野は、レーザ・光加工、センシング・計測分野。背景には、半導体、自動車関連を中心とする堅調な設備投資がある。逆に、際立つマイナス成長は、太陽光発電分野。出荷額、生産額とも2ケタのマイナス成長。システムもモジュールも同じ傾向を示している。
 2018年度全出荷額(見込み)は13兆6348億円、成長率▲2.9% 。2018年度国内生産額(見込み)は7兆970億円、成長率▲4.0% 。出荷額、生産額ともマイナス成長。2018年度も、前年度に続き、レーザ・光加工、センシング・計測分野が好調分野となる見込み。一方、2016年度、2017年度と2ケタ下降が続いた太陽光発電分野については、「価格低下の影響が続くもののFeed in Tariff(FIT)制度変更に伴う大幅な減少傾向にようやく歯止めがかかり、全出荷・国内生産ともに微減の見込みである」とやや楽観的な見方をしている。FITの制度変更とは、これまで異常に高かった固定価格買取制度(FIT)の買取価格が2019年度から14円/kWhに下がることを指している。
 2019年度全出荷(予測)は横ばい、2019年度国内生産(予測)は横ばい。この横ばいには、太陽光発電分野も含まれており、光協会の分析では、「導入拡大に向けた取り組みにより需要の増加が期待されるものの価格低下により全出荷・国内生産ともに横ばいと予測」となっている。FITが大幅に下がっても、価格低下によって、投資回収ができると見ているかどうか、この点は不明。好調が続いているレーザ・光加工、センシング・計測分野は、数字は表示されていないが、引き続き増加傾向が予測されている。また、東京五輪の恩恵を受けると考えられるディスプレイ分野は、「全出荷はやや増加、国内生産は横ばい」と予測されている。

情報通信分野 、2017年度実績

前年の調査結果発表では、情報通信分野の2017年度見込みは、前年度実績比でさらに落ち込むと見られていた。表 1からわかるように、見込み通り、情報通信分野2017年度実績は、前年度よりもさらに落ち込んでいる。光伝送機器・装置では、幹線メトロ系は、前年度に続いて2ケタ減。それに対して、好調だったのはルータ/スイッチで、19.2%のプラス成長。光協会の分析は、以下の通り。
 国内主要キャリアのネットワークインフラへの投資抑制の影響が継続し、幹線・メトロ系は大幅な減少となった(全出荷▲24.1%、国内生産▲24.2%)。一方、加入者系は、入れ替え需要などからPONが増加し、全出荷・国内生産
ともに増加(全出荷+4.9%、国内生産+23.6%)。データセンター向けを中心にルータ/スイッチは堅調であったが(全出荷+19.2%、国内生産+3.8%)、光ファイバ増幅器はネットワークインフラへの投資抑制の影響から減少し(全出荷▲7.8%、国内生産▲12.1%)、光伝送機器・装置全体としてやや減少となった(全出荷▲7.4%、国内生産▲6.3%)。
 光伝送用部品については、光協会は次のように分析している。
 光伝送リンクは、ネットワークの高速化に伴い、出荷の約7割を占める100Gb/s以上が好調で全出荷はやや増加(+4.7%)であったが、海外生産への移行などにより国内生産は大幅な減少(▲23.9%)となった。
 発光・受光素子は、前年度に大幅に増加した反動で、在庫調整などの要因から全出荷・国内生産ともに▲20% ~▲30%程度の大幅減少となった。デジタルコヒーレント通信システムに必要な光変調器などの光回路部品も前年度の大幅な増加の反動で全出荷は3.2%の微増、国内生産は▲9.9%であった。
 これらの分析は、100Gb/s部品は好調だが、長距離・メトロは低迷と指摘している。情報通信分野で好調なのは、データセンター内、データセンター間(DCI)であるので、伝送距離は相対的に短い。表2の半導体レーザの実績はこのことを示している。一般に長波長(1.55μm)は、長距離向け、1.3μmは、80km程度までの伝送に使用される。表2では、2017年度の半導体レーザ1.3μmの比率は、55%、前年度も58%となっている。
 ただ、表2では、半導体レーザは、1.55μm、1.3μm問わず、軒並み2ケタのマイナス成長となっている。これは、価格低下が進んでいることを示しているものと考えられる。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/05/012-015_marketwatch.pdf