新たな潮流! AIと光技術

川尻 多加志

日本光学会・光設計研究グループが第66回研究会を開催

光設計研究グループ代表の辰野響氏

AI(人工知能)は、データの爆発的増大に加え、コンピューティングとアルゴリズムの高度化によって第3次ブームを迎えている。そしてAI技術の進化やクラウドなど、AIを活用しやすい環境が拡がっている状況に伴い、これまで特定分野で先行していたAIの利活用が、幅広い産業分野や製品・サービスへと拡大しつつある。4月19日(金)、板橋区立グリーンホールにおいて、AIと光技術の関わりを探るというテーマで日本光学会・光設計研究グループ(代表:リコー・辰野響氏)の第66回研究会が開催された。そのタイトルは「人工知能-AI-活用による光設計の展開」。今回は、同研究グループが主催を務め、同じく日本光学会に属するAI Optics研究グループ(代表幹事:阪大・谷田純氏)が共催という形になった。

2つの研究グループ

光学設計の歴史は長く、一方で新しくかつ高度な光学機器や光学素子用の技術開発が常に進められている。将来の光産業においても、基幹的な役割を担うと期待されている。しかしながら、我が国では研究者や技術の交流が少なく、それが技術進歩の障害の1つになっているとも指摘されていた。
 このような状況の中、光設計研究グループは、光学設計およびその周辺の研究者の情報交換をはかり、光学設計分野の研究推進に寄与することを目的に平成5(1993)年7月、日本光学会の研究グループとして設立された。
 その適用領域には、回折光学、光記録、光通信、軟X線光学、光コンピューティング、光集積回路、補償光学、非結像光学、光学薄膜など、すべての光学分野が含められ、レンズ設計や光学設計、光学系の加工・測定・評価、光学設計ソフトなど、光学系・光学素子などの設計に関連する技術領域を網羅、研究会や国際会議の開催、学術講演会における発表支援や環境の整備、優れた研究・技術・発明を表彰する「光設計賞」の授与や会誌の発行などを行っている。
 一方、共催のAI Optics研究グループは、世界の先駆的な光学技術者がすでにAIを活用し始めている現状を踏まえ、AIへの対応は得手不得手を問わず、すべての研究者に求められ、AIを使いこなせないばかりに我が国が持つ光学分野での技術的な優位性を失ってはならないと、昨年の10月に設立されたものだ。
 同研究グループでは、光学技術者に必要なAI技術の情報共有や技術的サポートを提供するとともに、AI時代において世界最先端の光学研究者として活躍していくために必要な技術基盤を、参加メンバーが具備し得るための活動を行っていく。
 具体的には、最新AI技術の情報共有と議論の場として、シンポジウムや研究会の企画、Webマガジン等の情報発信、講習会の開催や掲示板等での技術サポート、オープンソース提供、異分野や他学会との交流などを行う。昨年11月には、筑波大でキックオフシンポジウムも開催した。

AIと光技術の最新状況

研究会は、光設計研究グループ代表の辰野氏による「開会の挨拶」でスタート。続く講演では、AIと光技術に関わる研究を推進する我が国のエキスパート達によって、その研究開発の最新状況が報告された。

高速ビジョンのアーキテクチュアと新展開:石川正俊氏(東大)

石川氏は、高速並列演算機能を内包した積層型高速ビジョンチップのアーキテクチュアを解説。2017年に開発した高速高感度CMOSイメージャと並列処理ハードウエアを一体化した積層型CMOSイメージャは、0.363Wという低消費電力で1,000fpsの撮像と画像処理が実行可能だという。講演では、知能ロボットやFA・検査、プロジェクションマッピング、ヒューマンインタフェース、バイオ・医療、自動車などの分野における応用事例を紹介。新たな設計思想「ダイナミクス整合」による知能システムが、現在の人工知能技術の限界を突破して、将来の実世界・実時間での高速処理を可能にする新しい知能システムの基盤技術になると述べた。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/05/042-043_event_focus.pdf