全偏光に焦点を合わせる広帯域色収差補正レンズ

光メタサーフェスレンズは、さまざまな形状のナノ構造サブ波長アレイでできており、真のフラットレンズ形成が可能である。これらはますます、屈折レンズ素子の実際的な置き換えになり、アプリケーションによっては、屈折レンズ系全体の置き換えにさえなりそうである。とはいえ、この種のメタレンズ設計には克服すべき障害がいくつかある。1つは狭帯域パフォーマンスを超えることの難しさ、もう1つは両偏光(つまり非偏光の光)に焦点を合わせるメタレンズの設計が難しいことである。一般用途のメタレンズは、これらの特性の両方を持つ必要がある。
 研究者は、円柱のような対称的ナノ構造が、偏光無依存メタレンズを開発するための重要な構成要素であると考えていた。このほど米ハーバード大工学・応用科学スクール(SEAS)の研究者が、偏光無依存メタレンズを開発した。
これは、収差なしで可視光全体に光を無彩色に集光できる非対称ナノフィンで構成されている(1)。このフラットレンズは、VR/ARヘッドセットから顕微鏡、リソグラフィ、センサ、ディスプレイまであらゆるものに使用できる。
 「このレンズを偏光無依存にすることによって、我々は、メタレンズの効率を前の反復から2倍にした」とSEAS研究助手、ウエイ・ティン・チェン氏(Wei Ting Chen)は言う。「これは、可視光にフォーカスした無彩色と偏光無依存の両方を実証する初めての論文である」と研究リーダー、フェデリコ・カパッソ氏(Federico Capasso)は話している。SEASの同氏のグループは、メタレンズでこれまで多くの進歩を達成している。ハンドヘルド分光計向けのメタ光学系、広角度、高効率多色メタレンズ、オンチップのメタサーフェス偏光計が含まれる。
 以前の研究で、カパッソ氏、チェン氏とそのチームは二酸化チタンナノフィンアレイが光波長を等しく集光し、色収差を除去することを実証した。しかし、そのレンズは円偏光の光しか集光できなかった。「つまり、我々は本質的に入射光の半分、右偏光を持たない光を捨てていた」とSEAS院生、アレクサンダー・ツ氏(Alexander Zhu)は話している。

図1

図1 これらのサブ波長異方性ナノ構造はメタレンズ表面に配置されており 、偏光に関係なく光を集光でき 、レンズの効率を 2倍にする。二酸化チタンナノフィンは 、「粒子群 」アルゴリズムを使って 、形状最適化された。(提供:ハーバード大SEASカパッソラボ)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/05/011_wn_metasurface.pdf