競合形態が多い自動運転車向けライダ

OSAレーザ会議(2018年11月5 ~ 8日・ボストン)の走行性におけるレーザ応用会議の後、自動運転車で使われるライダ(LiDAR:Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)では「基本設計概念については決定は出されていない」とスコット・デイビス氏(Scott Davis)は語った。同氏は、米アナログ・デバイセズ社(Analog Devices)自動車アプリケーション向け電気光学システム開発マネージャーを務める。ライダが、自動車自律走行にとって重要なデータを収集できることにはスピーカーは賛成したが、技術はまだ流動的である。
 近い将来の焦点は、ロボットタクシーの部分的テストである。米ウェイモ社(Waymo)は、ほとんどの車輌をアリゾナ(AZ)エリア、フェニックスに置いている。そこでは、数百人の人々が「アーリーライダー 」プログラムに参加している、とウェイモ社のライダシステムマネージャー 、サイモン・バーギース氏(Simon Verghese)は話している。試験は、お金を払ってくれる客で始まるが、ウェイモ社のアプローチは、ゆっくりと着実である。自動車は、非常に詳細に(図参照)地図に描かれたエリアの市街路を走る。これによって自動車のコンピュータ制御システムが、固定環境に基づいた広範なデータセットを利用できるようになっている。これは、一連のオンボードセンサによって変化する他の自動車、歩行者、交通信号、その他の対象物のリアルタイム観察を補完している。
 ライダの役割は、車輌、人間、野生動物や他の物体の精密3D位置の点群を記録すること。典型的な目標は、1秒に100万ポイントを収集することである。それを、オンボードカメラやマイクロ波レーダーからのデータとともに、人工知能(AI)システムが分析して、局所環境に存在するものを特定し、次の数秒でそれがどのように動くかを判断する。エンジニアは、それをするための最良の方法を見つけようとしている。

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図 カリフォルニア州チャンドラーの公道を走行するウェイモ社の完全自動運転クライスラー・パシフィカ(Chrysler Pacifica)。(提供:ウェイモ社)

905vs.1550nm

大きな問題の1つは、使用する波長である。これまで、主要ライダ光源は905nmダイオードレーザだった。これは、安価で、すぐに入手でき、シリコンフォトダイオードで簡単に検出できる。しかし、905nm光が網膜まで浸透するので、開放的な場所で使用されるパワーレベルは、アイセーフ基準によって制限されている。これにより、ライダの範囲は数十メートルに制限される。米アイメック社(IMEC)のシニア研究者、ウマル・ピラチャ氏(Umar Piracha)によると、1550nmでは最高ライダパルスパワーは、10倍高く、網膜にも届かない。長波長は、単位パワーあたりのフォトンが多く、1550nmでは905nmに比べて地上に届く太陽光も少ない。同氏は、両方の波長には十分な言い分があると言うが、デイビス氏は、最終的には1550nmが勝つと見ている。
 長波長の主要な特徴は長射程である。米ルミナー社(Luminar)の技術戦略ディレクター 、マシュー ・ウィード氏(Matthew Weed)によると、同社は入射光のわずか10%を反射する対象物で200m射程を目標にしている。その距離は、ハイウエイを走る自動車が、物あるいは人にぶつかる前に止まることができる距離で危険を認識するために必要である。「人は、他の自動車がどうするかを十分に予測するには5 ~ 7秒必要である」とウィード氏は言う。ルミナー社は、最初に高性能を達成できるように1550nmに焦点を合わせている。次に、長波長の問題である高コストを下げる。ダイオードレーザビームの限られた輝度を克服するために、同社はリニアアバランシュフォトダイオード(APD)をレシーバに使用する。

ライダタイプ

最も一般的な自動車ライダ設計は、車輌の屋根に回転スキャナを設置して、車輌周囲を完全360°水平視野をカバーすることであるが、垂直範囲が制約を受ける。最大128の個別レーザを搭載し、機械式レーザが30Hzで回転するスキャナは、数万ドルで売られているが、重要なことは実用性である。車輌の屋根に設置すると、一定の距離でライダは完全360°視野が得られるが、車輌近くが盲点になる。したがって車輌の側面や角に補完的ライダを設置する車輌が多い。
 固体スキャナは、回転する機械式ミラーの複雑さを回避できるが、距離が犠牲になる。アナログ・デバイセズ社は、液晶導波路スキャナを開発した。これは、ビームを水平25°、垂直5°でスキャンする。デイビス氏によると、その範囲は水平40°、垂直20°に拡張できる。そのようなスキャナをいくつか車輌周囲にマウントして、完全360°の範囲をカバーすることができる。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/05/010wn.pdf